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悪役令嬢にそんな『力』はありません!  作者: 黒い猫
第二十四章 怪しい人影にて
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第1話


 そうして迎えた『星空会』当日――。


 ――あっという間に当日……っと。


 シュトレーンの事は気になるものの、そもそもまず自分が退学にならない様にしなければ……と対策も怠ってはいない。


 ――そもそも……。


 この行事で退学になるのは二年生が一番多いらしい。


 ――まぁ、一年生は初めての行事と言う事で対策を万全にするでしょうし、三年生は卒業間近だから尚気を引き締めるでしょうし……。


 それはよく分かる。


「……」


 生徒たちが集められた運動場には学年もクラスもバラバラ……ただ、仲の良い人たち何人かでグループが出来ているのがチラホラと見える。


――でも、やっぱり……。


 ただ、やはりどことなく緊張感が漂っている様に見えるのはやはり一年生だろう。でも、それはどうしても仕方のない話だ。


「!」


 そんな風に周りを見渡していると……。


「えぇ。そんな事ないですよ」


 甘ったるくて、語尾を少し伸ばした可愛らしい声が……前の方からから聞こえてきた。


 少し不安そうにしつつも可愛らしく笑う彼女はさながら物語ヒロインか。


 ――まぁ、そんな風に見えているとも言えるけど。


「いや、何が起こるか分からないからな」


 そして、そんな主人公。ソフィリアに優しく声をかけるのは……やはりリチャード王子だ。


「……」


 ――私は……あんな事。言われた事ないわね。


 聞こえてきた言葉にイリーナは思わず苦笑してしまう。


「ああ。俺たちが守ってやる」

「君みたいな脳まで筋肉の様な人間では課題を解くのに時間がかかり過ぎてしまいます。彼女の事は私と殿下にお任せしてあなたは自分の事に集中して下さい」


 かっこよく「守ってやる」と言っているところから即座に相手を落とすような言い方……さすがである。


 更に殿下だけでなく、サラリと自分も入れている辺り、あの将来宰相になるであろう男は相当な策士だ。


 ――あの強かさ……何事もなければさぞ将来有望な宰相になったでしょうに。


 ただもちろん、そんな彼のせいで小さい頃は大変な目にあったのだが……なんて思いつつ彼らの様子を見ていると……。


 ――あら。


 彼女たちの少し後ろにアリアとキュリオス王子の姿を見つけ「リチャード様たちはどうやらずっと彼女といるつもりの様ですわね」と声をかけた。


「!」


 突然声をかけた事により驚かせてしまったらしいが、アリアはすぐに「クッ、クローズ様。お、おはようございます」と挨拶をしてくれた。


 ――こういうところをちゃんとしているのがいいのよね。


 そんな事を考えながらイリーナはキュリオス王子とアリアに「ごきげんよう」と笑顔で挨拶を返す。


「……いいのかい? このままで」


 キュリオス王子はリチャード王子たちの様子を伺いながら尋ねると、イリーナはケロリとした様子で「ええ」と笑う。


「今更何を言っても無駄ですもの。むしろ、私が彼女や彼らに苦言を呈したところで逆に挙げ足を取られるのがオチ。下手をすればそれを口実にされかねない。そんな無駄な事になんの意味があるのでしょう」


 イリーナは思った事を口にしただけなのだが、アリアはどことなく感動している様に見えた。


「他の方たちも皆さん同意見の様ですし、コレが終わったら正式に申し入れを致します。あれでは改善の余地もないでしょう」


 そんな彼女の視線を感じながらイリーナはそう言いながら「あれ」と言った王子たちの様子をチラッと見る。


「……?」


 彼女たちに周囲の目はどう映っているのだろうか。いや、きっと何も見えてはいないのだろう。


「どうしたの?」

「どうかしたのかい?」


 そんな時、アリアは何かに気が付いた様だ。


「あ、いえ。あの、すみません。少しお花を摘みに……」


「え、ええ。もうすぐ始まるみたいだから早目に行ってらっしゃい」


 アリアの少し慌てた様子を少し不信に感じながらも彼女を送り出したのだが……。


「……」


 彼女の後ろ姿を見ながら、イリーナはフィーユの「シュトレーンと言う方が怪しい動きをしている様です」という言葉を思い出していた。

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