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74話 無自覚な行動④

「あなたのおかげで何か……掴めた気がします」


「そうか。なら良かった。早く仲直りしてくれ」


「もちろんそうしたいのも山々ですが、まず行方知れずのままではどうにも……」


「モルゲンの裏ネットワークとも言えるシュチ氏にも声をかけたんだ。すぐ見つかる」


「そこはあんまり期待していませんが……明日、隊長さんに声をかけてみることにします。迷子の捜索も治安維持隊のお仕事ですよね?」


「そうだな。俺もついていってやる」


 と言って会話が途切れた。ありがとうございました、とでも言っておくべきだったのでしょうが、シュウのその最後の言葉は「俺はもう寝る」というようなニュアンスが含まれているように感じ、そして今日は朝から付き合ってもらい、また夜もこうして話を聞いてもらったということもあり、これ以上引き留めることはできず、喉に突っかかったまま出てくることはなかった。

 ただこのまま寝入ってしまうのはもったいないような気がして、


「……」


 私は無言のままシュウの背中に触れた。

 華奢な顔をしているというのに、その背中は男の人ということを再確認させるように硬く、やはり入眠する体制にあるのか、布団の外の冷たい外界とは対照的な、不安感を安らげてくれるような人肌がそこにはあった。


「……ん?」


 優しい言葉をかけてくれたこと、涙を拭ってくれたこと、などなどに弱っている私をどうにかさせようという魂胆はなくて、全てこのシュウという男の純粋な心の発露のように思える。

 ハンカチを差し出してくれた時に厨二病が出ていたのがその証です。強気は弱気の裏返り、ナイーブな内面を虚勢という鎧で隠している、リンにそう思ったようにシュウにも似たモノを感じた。この場合は、照れ隠しというのが妥当でしょう。シュウは不器用な優しさを隠すため、またそれを弱さだと勘違いしているのか、厨二病になりきっているのかもしれない。

 身体を(ねじ)らせ、シュウと体温が交換できるほどの距離にまで近づき、


「お、おい……。近くないか……?」


 「おい」から始まり、その口調は強そうに聞こえるものの、一瞬にして私の現状というのを(かんが)みたのか、言葉尻に至るにつれて段々と弱々しくなっていった。


「あの……すいません。もう少しだけこうしててもいいですか?」


「……ああ、今夜は少し肌寒いからな」


 そうじゃありません。


「私、言いたいことがあります」


「……なんだ」


 パーティーメンバーであっても恋愛してもいい、それはシュウが言った。そうやって責任を他人に押し付けるつもりなどさらさらありませんが選択に影響を与えたのは確かです。


「あのっ!──」


 その刹那、忘れかけていたアレが蘇ってきてしまった。


「……右腕がぁ!う、疼くっ……!うぅ、なぜこんな時に……」


 私は右手を抑えて身体を丸める。今まで1日に1回は発動していた私の疼きは、モルゲンに来てからというもの沙汰がなく、油断していたのです。

 ソレを見たシュウは口角が上がった左頬をちらりと見せると、


「ククク……チカ、お前が何を言わんとしているか、手に取るように分かる……分かるぞっ!つまりリンは魂を分けた片割れ、欠けることは神々が作り上げたこの自然律を破壊してしまうことと同義、今にもその竜の封印されし、右腕が滅せよ、と咆えているのだな?!そうなんだな?!そうなれば火急的速やかにヤツを探し出さねばならんな。よし、明日は朝早くから勤しむとしよう。チカも今日の疲れを明日に持ち越さないためにも早く寝るといい」


 と捲し立てるだけ捲し立てて、シュウはさっさと寝息を立て始めた。

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