68話 誘惑の淫魔①
「あらぁ。可愛らしいお客さんだこと。一見さんよね?」
「そうだ」
「ごめんなさいねぇ。ウチ招待制だから──」
するとシュウは粗暴な筆記の載った紙切れをその人に渡した。
「おお。ハランちゃんからの招待、疑ってごめんなさいね。それで……今日は3人でって感じ?そちらの方は彼女さんかしら?珍しいわね」
ずっと呆然状態となっていた私はやっと自我を取り戻し、
「シュウ!こちらへ来てください!」
そう言って私は、首を傾げながら顎に手を当てて不思議そうにしている女の人を背にシュウを屋外へと引きずり出した。
「なんなんですかここは!」
「いやまあ……男のための情欲の園というかなんというか……」
「でしょう!あなたの趣味なんですか?!」
「ない。断じてない」
私は店の看板を見上げる。淡くも、夜の街では著しく存在感を放つピンク色の光。それはまるで誘蛾灯のように、またオアシスのように作用し、こうしてシュウと話している最中でも飢えた者たちがゆらゆらとした足取りで吸い込まれていく。
ずっとおかしいと思っていました。シュウにはリンの居場所に心当たりがあるというのに、頑なにそこへと赴こうはせず、日中はモルゲンをただふらふらと歩き回るのみで終了し、本来であればもっと街の散策を楽しめたはずですが私にはそんな余裕は微塵もなく、結局リンをどこにも発見できずに夕方になってしまった。
かと思えばシュウは何か確信したような顔をしつつ、ハランさんとテンユちゃんを宿へ帰し、ようやく本命の場所に行く覚悟ができたのか、私についてくるように命じ、粛々として歩を進め始めた。
到着したのがまさにここである。シュウが特段感情の揺さぶりも見せずにすたすたと入店していくので、逆に動揺する方が変なのかもしれない、と私は感情を隠して付き従った。
そして入ってみたらやはりと言うべきか、露出多め、扇状的な装いをした女性がそこには立っていたのでした。
「なんでこんなとこに来たんですか?!」
「リンの行きそうな場所と言えば……なぁ?」
「あなたの眼にリンはどんな淫乱娘に映っているんですか!リンは私のことが好きだから身体を求めているだけであって、身体を求めるのが第一の目的ではないのですよ!」
「随分リンに肩入れするんだな。やはり……リンからのアプローチを本気で嫌がっていたわけじゃなかったんだろう」
私は言い返す言葉を何も見つけることはできなかった。第三者のシュウでさえ、リンからの変態的言動を本気で嫌がっているようには見えなかったという。顔に?声色に?それとも仕草に?どこに出ていたのでしょうか、その本心は。
「……」
「まあ項垂れていても仕方がない。今やることは仲直りだろう?違うか?」
「違わない……です」
「それで、だ。まずはリンを発見すること。それには情報収集が必要だ」
「情報収集……」
そうして私たちは再度、そのお店へと入店していった。
「あら。お帰りなさい」
黒を基調としたワンピースに、白いレース付きエプロンを重ねた従者風衣装が頭の中をよぎる。まあ似て非なるものですね。




