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60話 闇に生きる者②

「魔族?魔界人?何の話だ?」


 事情が分かっていないハランさんは困惑。

 いや、隊長さんに角があることくらい疑問に持ちましょうよ……。


「ほぉー、魔界人ですか!初めて見ました!でもマルティアのように角は生えていないんですね?」


「ああ、正確に言うとですね、この子は魔界人と人間のハーフなんです」


「なんと!」


「というか隊長さん、魔族なのに魔界人を初めて見たとはどういう……」


「魔族は魔族ですけれど、私は生まれも育ちもこっちなのです。というか先祖が移住してきて住み着いたのでして、父も母もマルティア自身も魔界とは全く関係がないのです」


 なるほど。魔族はこっちにいる魔界人の呼び名であるものの、全員が全員魔界からやってきたというわけではなく、2世や3世ということもあるのですね。


「それでは切り替えてお仕事をいたしましょう。お2人から聞いた話によると、お風呂に入っていたところ、杖が何者かに盗まれてしまったと。そのヒューガ・チカさんはどちらの方ですか?」


「私です。あの杖は大事なモノなので絶対に見つけたいんです」


「おっと、あなたでしたか。分かりました。もちろん尽力するのです。では少しお話を聞かせてもらいます。まずは──」


 そうして隊長さんによる事情聴取が行われることとなった。

 こんな小柄な見た目に反して、聴取の質問は鋭く、私たちの気づかなかったことさえ指摘してもらったり、またメモをせずとも話の内容をよく覚えているので隊長さんはとても賢く優秀な方だと思いました。

 というか魔界人ではあるので、この方もとんでもなく長生きな方なのでは?!魔王様やテンユちゃん然り魔界人の女性はこぢんまりとしたスタイルになってしまうようですし……。 

 長く生きてきた経験がこの仕事の熟練度合いを示しているとしか思えなくなってきました。

 ただ年齢を聞いてしまうのは何か魔族について変な興味があると思われそうで憚られます。私は先ほど隊長さんの角に驚いたような仕草を見せてしまいましたし……。

 そんな私とは裏腹に、シュウはふと何か思いついたかのような顔をして、


「ところで隊長殿は何歳なんだ?」


「……気になりますか?」


「ああ。あの幼児に見えるテンユも81歳だし、魔界人は長寿らしいからな。そりゃあ気になるとも」


「うーんと……」


 隊長さんはそんな唸り声を上げたのち、


「女性に年齢を聞くのはナンセンスなのです。秘密ということで」


 隊長さんは人差し指を小さな唇に当てて、可愛らしく頭を傾いで見せた。

 もし私が聞いていたらなんて答えたのだろう。男性が"女性に年齢を聞くこと"がナンセンスだということは、まさしく年齢を言わないようにするための免罪符にしか聞こえなかった。


「とりあえずですね、マルティアは現場で魔力感知をしてみようと思うのです」


「魔力の痕跡を調べるというわけですか?」


「ええ。なんなら犯人さえ特定できてしまうかもしれません」


「ええ?!」


「魔族は魔力感知に優れていると聞いたことがあるが……」


 私はシュウからテンユちゃんへと視線を滑らせた。

 今までそんな様子は見せていなかったのでハーフの子には備わっていない能力のようですね。


「そうなのです。そしてマルティアはここらへんにいる犯罪者さんや危険人物さんの持っている個別の魔力を全て覚えています。といってもモルゲンの犯罪率は他の街と比べても低いですからね!覚える人数は少ないのですけど!」


「すごすぎます!隊長さん!」


「どうもなのです!」


 これだけ優秀な能力たちを持っていたら今まで怒られることもなかったのだろう。順風満帆、どんどんキャリアを積み上げていき、この街の治安維持隊の長に就任したというのが目に見える。しかし……いつからこの人は隊長なんだろうか。長生きならもっと上の役職になっていてもおかしくないですが……。

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