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56話 束の間の休養①

 2週間ほど、体感的には魔の森での滞在より少し長い程度の時間をかけてモルゲンへと到着した。

 王都から離れれば離れるほど、街の景色は時代を遡っていくようになっていたのですが、ある地点を境に少しづつまた時代が進んでいくように感じました。そこでモルゲンへだんだんと近づいていることが分かって感動したものです。


「ここが俺の拠点とする街、革新都市モルゲンだ!」


「おー!おお……」


 門を抜けた先には、革新都市とは名ばかりのピュートと同じような雰囲気の街並みが広がっていた。いや王都から遠く離れているのにここまで栄えているのを称えるべきだろうか。

 "革新"要素どこですか?てっきり自動ドアとか新素材の建物とかがあると思っていたのですが……。


「ははっ!びっくりしただろう?」


「これのどこが革新なのだよ?!」


「まったくだ。ただの田舎街にしか見えん」


「外見はアレだが、魔法の技術だけは凄いぞ!」


 そうして街の景色を少し郷愁の念を抱いて眺めているうちに馬車は発着場に止められ、私たちはついにモルゲンの地を踏むこととなった。


「ハランさん、同乗させていただいてありがとうございました!キエンくんにあった時にはこのこと話させてもらいますね!」


「おう!」


 と元気な声で言いつつ、手を差し出してきた。


「……?」


 私はその手を一期一会の出会いを喜ぶ握手のためのモノだと思い、両手で包み込んだ。


「あ、いや……」


 ハランさんはしどろもどろになりつつ、小声で、


「その……お金……」


「あ、ああー!そうですよね!」


 乗せてもらうんですからそりゃあ無償なわけにはいきません。善意だけでは人を救うことはできませんからね!


「ご、ごめんな。息子の友達からお金なんて取りなくないんだが……ポーションは販売できないのに研究費だとか旅費とか色々お金がかかってなぁ。今はたまにモンスターの討伐をして小銭を稼いで食い繋いでるんだ」


「冒険者的なこともやっているのですね……分かりました!お礼をしないわけにはいかないと思っていましたので!」


 私には国王様からもらったこの旅費が──


「はいっ!」


 私がバッグをがさごそとしていると、横からリンが現れ、小さな袋をハランさんに手渡した。


「えっ、なんだこれ」


「ヒューガがもらったお金はもっと自分に必要な時に使うのだよ!」


「しかしこれはモルゲンへの旅費代にと国王様から渡されたモノですし……」


 ハランさんは一瞬呆然とし、袋の重みを再度確認して自我を取り戻したところで、


「こんなにいいのか?!」


 その中を横から覗くと金貨が十数枚入っていた。確かにここまで連れてきてくれたのはありがたいですが……いくらなんでもこれは過剰ですよ!やっぱり王女様だから金銭感覚がおかしいんでしょうか……。


「もっちろん!お礼だからね!」


「……そうか、ありがとう。本当にありがとう。でも流石に王都からモルゲンまでの旅費とこれは釣り合わない。だからこの街を案内させてくれ!」


「それは助かります!私たち4人全くモルゲンの勝手が分からなかったので!」


「そうだろうそうだろう!」


「では……いきなりで申し訳ないが、どこか疲労を癒すスポットはないだろうか。俺たち数日間動き詰めで……」


「疲労を癒すか……ならいいところがあるぜ!ついてきな!」


 私たちは上機嫌になって今にも空へ浮いていきそうなハランさんの背中を追った。

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