54話 終焉のない旅路②
「『龍爆焔』という手から龍の形の炎を放出するスキルです」
「おぉ!流石!俺の息子だな!」
「はぁ」
ハランさんは燃え盛る炎をイメージしているのか両掌を上に向け、わきわきとさせながら、
「ふっふっふ!なんでこんなにテンションが上がっているかというと……何を隠そう俺は炎属性の魔法が大好きなんだ!いや大好きという言葉じゃ軽すぎる。言うなれば狂信者だな」
「そうなんですか……」
私は急な熱量に少々引いてしまっていた。
「見てほしいモノがある!」
荷台の端っこに置いてあった箱から何やら取り出すと、私に差し出してきた。
「ん?これは……」
何のラベルも張られていないポーション、蓋には手彫り感満載のデフォルメされた炎のような模様……私はこれを見たことがあった。というか持っていた。なんなら使っていたし、助けられたりもしてしまった。
「これはどんな魔法も炎属性に変換してしまう俺の傑作の最高のポーションだ!俺は商人としてこういうのを作っている!だって炎の魔法以外この世にいらないだろ?炎の魔法さえあればこの世界は廻るんだから!」
そう、このポーションは魔の森の巨大鹿を倒すときに〈爆発力こそ正義〉を使った渾身の魔力放出が効かず、ダメ元で再度放つときに使用し、大爆炎を発生させてしまったモノに酷似していました。
まさかキエンくんのお父さんが作っていたとは……世間は狭いですね。
「これ使ったことがあります……」
「まじでか?!」
「あっ!もしかして巨大鹿の討伐する時に2回目に飲んだポーション?」
「そうです!確か……」
バッグの中を漁り、
「これですよね?」
カラになっていた瓶をハランさんに見せた。
「うおおー!お、俺のポーションの使用者が……っ!」
「その節はどうも助かりました。おかげででっかい鹿を倒すことができました。本当に凄い威力でした!」
そう言いつつ、感謝を示すためにお辞儀をした。
すると、
「ポーション!俺のポーションがっ!」
ハランさんは大粒の涙を流し始めた。
そしてカラの瓶を私から奪い去ると、ソレをまるで何十年ぶりかに再会した親友であるかのように、自分の胸に押しこみ、抱きしめた。
この人は情緒不安定なんですか?!
「え、ええ?どこが涙腺に触れたんですか?!」
「いやぁ……俺のポーションが使われたのが嬉しくてなぁ……」
「そ、そうですか……」
商品として売られているというなら誰かに使われることなど必然だと思いますが……この人は随分自分のポーションに愛着があるようですね。
「そういえばラベルなしのポーションをどうやって店頭に並べたんですか?お店のおじさんびっくりしてましたよ?」
「あー、俺が勝手に置いてるだけだよ」
さらりと言ってのけるので危うく「そうですか」と聞き流しそうになった。危ない危ない。というかこの人、危ない人では?!
「えーっと……それはどういう……?」
「俺のポーションね、なーんか認可されないんだよね。きっと行政局は俺の強力な威力のポーションを恐れているんだ!もし本当に発売できるようになったら他のポーションが売れなくなるからな!」
すごい自信家ですね、この人。
「俺のポーションでもっと冒険者の生存率が高まることを願ってるんだ!やっぱり炎の魔法が1番強くて、すごいんだからな!」
一応、根底には善意があるようで……。
いやいや!でも普通に犯罪じゃないですか?!認可されないからって勝手に店頭に並べちゃうのはダメでしょう!そもそもどうやって店に侵入したのかなども気になりますし……。
というか──
「……すみません。とりあえずモルゲンに向かいませんか?」
「……まあそれもそうだな」
他3人もやっと言い出してくれたと安堵した顔を見せた。
ハランさんとの談笑が無限に続くことになってしまいそうでした。
まだまだ長い旅路です。これからも話す機会は大いにありますし、ここで話題を全て消費しきるには惜しい。




