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53話 終焉のない旅路①

 モルゲンへの馬車の中にて。


「本当に!どうして戻ってきちゃったんですか?!」


 私たちは王女様であるリンがまたもや失踪してしまうことを責め立てていた。


「どうしてって……というか嬉しいんでしょ?ボクとまた一緒になれてさ」


 何にも言えない。こうして会う前まではあのとんでもない置き土産について、私はリンを思いっきり殴ってやろうと意気込んでいました。しかし再び会えてしまって、また一緒に旅ができるというのが嬉しくてそんな気にはなれなかった。


「普通にお父様に認めてもらったのだよ。あの後走ってすぐお父様のところへ戻って説得したのさ。だからまあ……遊学って感じかな」


「あんたのお父さんも結構適当な人ですよね……」


「寛容だといってくれたまえよ」


 リンは胸を逸らして誇らしげである。


「しかし本当に嬉しいぞ。また魂の同志たるリンと一緒に旅ができて」


「うん、ボクも嬉しいのだよ」


「おねえちゃんとまた冒険ができてうれしい!またいろんなお話聞かせて!」


「もちろんなのだよ!」


「なんかよく分かんないけど良かったな!」


 商人は御者席から振り向いて笑顔を見せた。


「ああ、すいません。こんな身内の話をしてしまっていて……」


「全然いいよ!仲間と冒険っていいなぁ……話聞いててそう思ったよ。それにしてもメンバーにちっちゃい子がいるのなんて変なパーティーだな」

 

 実年齢81歳のテンユちゃんを見ながらそう言う。


「俺にも子供がいてなぁ……その子みて久々に思い出したよ。今はお前たちと同じくらいの年齢だけどな!」


「”今は”ということは、もうお子さんとは会ってないんですか?」


「まあな!昔は一緒に旅をしていたんだけど……あいつが成長してきて飽きたらしくてな。だからある街に置いてきた」


「お、置いてきた?」


 不思議な親子関係ですね。子供なら普通、親と離れたくないと思うでしょうに。逆もまた然りですが。

 ん?というかなんか似た話をどこかで聞いたことあるような……。


「……すみません。そういえば、お名前を聞いていませんでしたね。教えていただいてもよろしいですか?」


「俺の名前?俺は──」


 その顔立ちと商人という職業。その2つから私は気づくべきだったのです。


「ハラン・バンジョーだ!」


 バンジョーという姓で旅商人をしていて、子供を旅先の街に置いてきた経験がある人はこの世の中に2人もいるとは思えません。

 この人が……会ったら叱責しようと思っていたキエンくんのお父さんですか……。

 ちゃんと顔を見てみるとすごい似ています。


「そんなことありますか?!」


「どうした!」


 一応確認として、


「もしかしてですけど、お子さんの名前ってキエンですか?」


「おー、よく知ってるな」


「いやもっと驚いてくださいよ!」


「確かに!なんで知ってるんだ?!」


 こういうとこもキエンくんらしい。あの天然なところはお父さん譲りなのですね。

 この親にしてこの子あり、といったところでしょうか。


「キエンくんとはパーティーメンバーなんですっ!」


「え、そうなの?!もしかして……」


 ハランさんは震える指でシュウを指差す。

 差された側のシュウも驚いた様子で自分を指差した。

 ブレーキを掛けて馬車を路端に止めると、


「キ、キエンーッ!会いたかったぞー!」


 あろうことかハランさんはシュウに抱きつき始めた。


「や、やめろーっ!違う!俺はあんたの息子じゃない!」


「そんな!長い間離れてたからってもう父親じゃないってか?!」


「そういう意味ではない!まず俺はキエンというヤツじゃない!」


 ハランさんはシュウの両肩を掴みながら身体を離し、全身をまじまじと眺める。


「……確かに。キエンはもっと俺似だったはずか」


 この人はキエンくん以上におとぼけさんらしい。


「じゃ、じゃあキエンはどこだ?!」


「キエンくんならあなたが置いていった街、ピュートで仲間と一緒にたくましく生きてますよ」


「ピュート?あー、聞いたことあるような……ないような?」


 自分の子供を置いていった街すら忘れてるんですか、この人。

 本当に叱責した方がいいのかもしれません。


「でも良かった。しっかり生きてるようで……ずっと心配してたんだ」


 その顔は到底演技などには見えず、本心に聞こえた。


「キエンはどんな様子でやってるんだ?」


 どの父親もやはり子供の様子が気になるものなんですね。


「言動が犬っぽくていちいち可愛らしくて……でもやる時はやる!って人ですかね。そしてすっごい炎の固有スキルを──」

 

 "炎"と言った瞬間、ハランさんの目の色が変わったのを私は見逃さなかった。


「おお!やっとアイツも使えるようになったのか!嬉しいぜ!で、どんな?!どんなどんな?!」


 ハランさんは荒い鼻息を立てながら私に詰め寄ってきた。

 ……この世界には変な人しかいないんですか。

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