47話 やんごとなきお転婆娘③
「んん?えぇ?」
「どう?態度は変わりそう?ボクの愛を受け止めてくれる?」
私ごときが王女様になんて一生会うことがないと思っていましたし、本当に軽い気持ちで、祭りの1つのイベントとして見ててくれたらいいな、くらいで思っていたので、そんなモノをリンが重く受け止めてしまっているというのがなんともいたたまれないというか……。
「……なんでそれだけで私のことを好きになれるんですか?リンは王女なんですから豪勢な誕生日会とか開かれるでしょう?ソレに比べたら私のなんて……」
私の言葉にリンは今までに見たことないような悲しげな顔をした。いつも天真爛漫な女がこうもしおらしくなっていると気味が良くない。
「ヒューガが想像しているのがどんなものか分からないけれど、そんな大層なモノはやってないのだよ」
「国王様の娘なのに?」
「お父様は政務のせいで多忙なんだ。それもよりにもよってボクの誕生日が近い時期は特に忙しい。だから誕生日でもボクは1人さ。まあ執事とかはそばにいてくれるんだけどさ……」
なるほど……リンが私を好きになった理由の大きな要因。それは愛に飢えていることだったのかもしれない。1人寂しく、毎年変わらない、同じような誕生日を送ろうとしたちょうど20回目の生誕祭。そこでいつもとは違った、素敵な光景が出現したとなったら気分も高揚するでしょうし、何もやることのない部屋で”私のために祝ってくれた人”に思いを馳せることでしょう。
生誕祭は国王様の人望や威厳、国の豊かさを示すモノなどではなく、折角の誕生日に1人きりのリンが寂しくないように、という国王様なりの心遣いなのでしょうね。
しかし誕生日に家族と過ごせないというのはなんとも……。
「そう……なんですか」
「同情するような顔しないでよ。折角の可愛い顔が台無しなのだよ?それにもう慣れっこさ」
「そんなこと慣れちゃダメですよ!ら、来年は……っ!」
言葉が詰まってしまった。リンは王女様であり、私のような庶民とは身分に大きく差がある。そんな人とこれからまた同行できる可能性は限りなく低く、私たちの旅はここで終わりになる可能性が高い。それに王女様を外へ連れ出し、危ない目にあわせてしまったということで、もうリンには会えなくなるかもしれない。
できるか分からない誕生日会の予定なんて考えるだけ虚しいというものでしょう。
「だーかーら!そんな悲しい顔しないでよ!また会えるよ、きっと。それにボクはいずれ王様になるんだから権力を恣意的に使って会うことだって可能さ!」
「そうかもしれませんが……」
会うといってもそれは”拝謁”という形であって一緒にまた冒険できるということではありません。
……こんな会話をしているだけでもどんどんと扉へ近づいてしまう。あの扉を開きたくないです。
私はあんなにリンのことを拒絶していたのに、急に別れるとなると胸がぎゅっと握りしめられているようになり、もうリンの暖かさを感じることができないということとリンが遠い存在になってしまうことに……自分でも不思議ですが寂しさを感じる。
「ボクはキミたちと会えて本当に良かった。たった数日ばかりの旅だったけれど、こんな無駄に大きいだけの王城に籠っているよりもずっと、ずーっと刺激的で今までの人生で1番楽しい時間だった!野営をしたり、モンスターと戦ったり、魔王様に会ったり!あの時、キミたちが路地裏からボクを見つけてくれたから色んな体験ができたのだよ!本当に感謝してもしきれないよ!」
「リン……今まであなたのことを拒絶してごめんなさい。正直私はあなたに引っ付かれて……恥ずかしかったですが、別に嫌ではありませんでした。愛されていると身体で感じるのはこんなに嬉しいものなのだと知ることができたからです」
「もっとお前と語り合いたかった。リンは俺の言葉を理解してくれる唯一の魂の同志だから……」
リンは私たちより少し前まで駆けていくと、返事の代わりのように鼻をすする音が聞こえた。
「……というか忘れていたが……テンユはどこへ?」
「ああ、テンユなら──」




