46話 やんごとなきお転婆娘②
私たちを助けるべく勅命を出してくれた国王様のいる部屋。そこへと続く長い廊下を並んで歩いていた。奥にはまるで人間用とは思えない扉が佇んでいるのが見えるものの、まだまだ遠い道のりです。
「怖い思いさせちゃってごめんなのだよ。2人のことちゃんと弁解したつもりだったんだけど……ウチの家臣ってみんなボクに対して少し盲目的なんだよね。キミたちを処刑しようとしてたのも家臣の勝手な判断さ」
私は王都に入るときに詰問してきた面接官たちを思い出した。なるほど、そういう事情があってあんな怖い感じになっていたのですね。辻褄が合います。
……でもシュウの時は普通だったと言っていましたし、やっぱり私舐められていたんじゃ?!
というか家臣が盲目的ということなのでもし勅令を出してくれていなければ、リンが来たとしても私たちは首ちょんぱになっていたかもしれない。国王様には感謝してもしきれませんね。
「それで……シュウはなぜリンが王女だと気づいていたのですか?どう考えてもこんな頭のおかしい女が王女だと結びつくような手掛かりがないように思えますが……」
私はリンを挟んで右側にいるシュウの方を覗いた。
「気づいた、と言ってもなんとなくだ。それに俺自身、リンは王女ではないことを祈っていた。まあその祈りは届かなかったわけだが……リンが王女なのではないかと考え始めたきっかけはチカがピュート出身だと告白した時に様子がおかしかったことだ」
「あれですか。私は随分ピュートの篝火に思い入れがあるのだなぁ、と……。というかソレと王女がどう関係するので?」
「まあ最後まで聞くがいい。その日の夜……お前たちがまぐわって──」
「いません!」
「そ、そうか?」
「私たちは女同士ですし!」
「恥ずかしがり屋さんだなー、ヒューガは!あの夜、ボクたちは秘密なところをさわさわし合ったじゃないか!」
「偏向報道はやめてください!”し合った”のではなく、あくまであなたの一方的でしょう!」
このままリンを非難し続けても話は前に進まないので、私はシュウに目で続きを促した。
「あ、ああ、えーっと……それでだ、どれだけ思い入れがあろうとも身体を迫るほどではないだろうと思った。それも直近の篝火にしか参加していないヒューガに、だ。だから突然としてリンが身体を迫るようになった原因は他にあるのだと考えた」
「……つまり?」
「俺の推理によれば──」
「わ、わあああああ!」
シュウが推理を始めようと厨二病的ポーズを決めようとした時、リンは顔を紅潮させつつシュウに襲いかかって口を塞ぎ、大声で騒ぎ始めた。
「な、なんですか!今、私はシュウの話を聞いているんです!邪魔しないでください!」
シュウに襲いかかるリンを止めようと私も2人の攻防に混ざる。
この感じ……どこか懐かしい。そうだ!下の弟たちが喧嘩しているのを仲裁する時に似ています!そういう時はいつも拳で解決していましたが、流石にこの場合はいけませんね……。
「ほんっとデリカシーないよね、シュウ!乙女心ってのをもっと理解してくんないかなぁ!」
「んー!」
「どういうことですか!」
リンの手を力づくで引き離し、シュウの口元が少し自由になると、
「もう恋心はチカにバレてるからいいだろ!」
「よくないよ!」
「何の話ですか!」
「なぜリンがチカのことを好きになったのかということにも繋がる話だ」
ん?!リンが王女様だとなぜ私のことを好きになるんですか?!
「い、言わないでよー!」
リンの力が強くなるのが分かった。しかしここは私も負けられない。知りたいものは知りたいですから!
「リン!もういいでしょう!ここまできたら隠し事はなしにしましょう!」
「別に隠してるわけじゃ……」
「あなたが私を好きになった理由を聞けば、すこーしはあなたへの態度が変わるかもしれません」」
「えぇ?!ほんと?!」
「ほんとですとも!」
「んー、じゃあ分かった!シュウ、ごめんね。ケガはない?」
リンは掴みかかられて反り腰になってしまっていたシュウを両手で引き起こした。
「ああ、大丈夫だ」
「それでは続きを!」
「こほん。俺の推理によれば、王女の生誕20年の節目に打ち上げてもらった花火とヒューガの魔法放出、ソレが相当嬉しかったんじゃないか、と。それで逆算的にリンは王女なのではないかと思い始めた」
リンは顔の火照りを冷やすためか両手を頬に当てた。どうやらシュウの推理は当たっているらしい。




