40話 追憶の面接①
「やっと着いたのだよ!」
「ええ……行きより全然長く感じましたよ……」
魔の森の最深部から数日かけ、やっと要塞のような王都の門の前へとやってきた。
「しかし……これはなんとも……」
ぐっすりと眠るテンユちゃんを背負ったシュウは訝しげな顔を門へと向けた。
同調したくはありませんが、これには同調せざるを得ない。私も前に来た時とは違う王都の異様な雰囲気を感じ取ってしまっていた。
あんなに人々が集まって賑やかだったのに今は人々の喧騒など全く聞こえてこず、まるで勢いよく燃えていたのに雨に打たれたせいで煙が出ているだけの状態となった炭のようにやけに静かである。全く違う街に来てしまったような……。
そんな不安げな私たちに対してリンは故郷に帰還したことの喜びからか上機嫌だった。ソレを示すように、奏でていた鼻唄の音が王都に近づくほど大きくなっていたし、歩き方もどこかスキップのようで、軽快な足取りだった。今も私の横でにっこりと笑顔を浮かべ、首を振りながら鼻唄を奏でている。
やっぱりリンは空気の読めない女らしい。
しかし……こうして見ると、やはりスタイルと顔の良さは申し分ないので私の眼にはただの陽気な美人に映ってしまう。
リンの変態的行動の数々が私を現実に戻させるのですが。
「とりあえず入ってみましょうか……」
私たちが門をくぐろうとすると、
「待て」
と衛兵が脇からそれぞれ現れ、持っていた槍と槍でバツを作った。
「わ、私たちは決して怪しい者では──」
弁解など聞くに値しないとというように私の言葉を遮ると、
「現在、王都では厳重な警備体制が敷かれている。そのためこちらで貴殿らを検査をする」
続けてもう1人の衛兵が、
「まず貴殿らの持つ武器、その他ポーションや魔道具等を預からせてもらおう。渡さなくてもよいが、その分心証は悪くなる。賢い判断をするように」
そんなこと言われては渡さないわけにもいかないので、私は杖をリンはナイフを衛兵に手渡した。
リンがナイフを手渡した時、衛兵は「ん?これ……」などと言っていましたが、やはり巨大鹿を切り裂いたほどの異常な切れ味でしたし、武人には知られている有名な武器なのかもしれませんね。
「協力感謝する。それでは」
と言い、槍を指示棒代わりに使い、私たちを門の横にある衛兵室に案内した。
「こんなの私が来たときはなかったのに……」
私が誰かに聞こえるか聞こえないか分からないくらいの音量でそうつぶやくと、
「もしかすると……まだ王女が見つかっていないのかもしれない」
「はぁ?!大事件じゃないですか!」
「なんだ!」
「すいませんっ!なんでもないです!」
私の独り言に返答があったこととシュウの重大発言に思わず大きな声を出してしまったため、衛兵に睨まれた。
「どどどどういうことですか?!」
私はシュウにだけ聞こえるような小声で話しかけると、
「王都に活気がないこと、そしてこの大仰な警備。この2つだけで十分な理由になるだろう」
「確かに……王女様は次期国王なんですもんね……まさかその地位を羨まれて誘拐されたとか……」
「その可能性もあるだろうな、ただ……」
「ただ?」
「王女が失踪するのは別に珍しい話でもない」
「いやいやそれはそれでどうなんですか……」
「以前もよく失踪しては少しどこかをほっつき歩いて勝手に帰ってきていた……ただ今回は少し様子が違うようで……」
「まさかもう殺されてしまっているとか?!」
「さあな」
私たちは衛兵室の扉の前に到着し、促されるまま素直に整列すると、
「これから1人1人この中で身体検査と口頭による簡単な質疑を行う。では左の者から順番に入れ」
左から順にシュウ、私、リン。
シュウはまだいいですが、リンが常人とちゃんとした受け答えができるのかどうかというのは甚だ疑問です。
「ではいってくる」
シュウはそう言って衛兵の後ろに従い、衛兵室に入っていった。
またもう1人の衛兵は監視するためなのか、私たちの前に槍を地面に突き、仁王立ちをしている。
少しでも動いたら不審な行動と思われて、その槍でグサリ、なんてこともありそうなので大人しくしていましょう……。
リンと2人きりじゃないというのはありがたい。2人きりだと何をされるか分からない……いや分かりたくもない。私の脳裏には魔の森へ向かって1日目の夜、リンに危うく破瓜されそうだった時の光景がよぎった。
ちなみに王都に帰ってくるまでに過ごした夜はリンに襲われることがなかった。テンユちゃんが抑止力になっていたようですね。
リンはテンユちゃんの前ではお姉さんらしく振る舞っていますから。
「ねえねえ!シュウが何分で帰ってくるか賭けようよ!ボクはねー、10分!より遠かった方が近い方の命令を1つだけ聞くってことで!ふふっ、何をシてもらおうかなぁ……」
この女は本当に空気が読めませんね……。




