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34話 気まぐれな幼児体型③

17話、21話を参照してください!

「我輩の名はシューツェン・イェーガー。この”魔界”の入り口の番人だ」


 シューツェン氏は門からバトラーのような服装を身に纏った全身を見せ、そう名乗りあげた。角だけが普通の人間と異なる部分であるらしい。顔をよく見ると……結構男前な感じです。テンユちゃんと似ているところと言えば、口元でしょうか。特に口角の上がり具合がそっくりです。笑えばもっと似ていそうです。

 というか魔界?!ここは魔界なんですか?!本当に存在するとは驚きです!シュウの3犬がテンユちゃんの親を見つけられなかったのもここにいたせいだったのでしょうか!

 ”魔界人のハーフ”だとか”いつの日か魔界を統べし者”と(うそぶ)いていた女の方をちらりと見ると、すぐに顔を反らした。まさか本気で魔界が存在するとは思っていなかったらしい。リンは自分の空想上のモノが本当に存在するということでさぞ驚いていることでしょう。

 でも──


「……うん?テンユちゃんのお父さんなんですよね?姓が……」


「……ああ、話せば長くなる。とりあえず城内へ案内しよう」


 やはりここはお城だったんですね。

 ということはこの先にいるのは”魔界”の”王”で”魔王”だったりするのでしょうか……怖くない人だといいですが……。



「おおっ!まさかこの地に人間が堕ちてくるとはのぅ!びっくりじゃ!びっくり!いつぶりかのぅ!」


 魔界の王たるその人は王様専用のような椅子から身を乗り出し、目を丸くしていた。大仰な肩書のために身構えていたので、その軽快な言葉遣いにはなんとも拍子抜けした。

 そして──


「こ、子供じゃないですか?!」


 女王様のごとく、ぴっちりとした黒くテカリのあるセクシーなボンテージ衣装に身を包んでいるものの、ソレとはまるで見合っていない幼児体型。胸元が大きく開いていたり、つるりとした素足が曝け出されていたり、子供のコスプレにしては破廉恥すぎます!


「子供とは失礼な!こう見えておぬしらの100倍以上は確実に生きておるのだぞ!」


「ひゃ、100倍?!1900歳くらいってこと?!」


「いーや、正確には覚えておらんが……2000歳は超えているかのぅ……」


「2000だと?!」


「ということはテンユちゃんも……」


 3人の視線が一斉にシューツェン氏の足にしがみついているテンユちゃんに向いた。


「ソレも含めて話をしよう。魔王様、お時間をいただいてもよろしいでしょうか?」


 シューツェン氏は右胸に手を当てながらバトラーよろしく丁寧にお辞儀をした。


「良きに計らうのじゃ!」


「感謝します」


 そうしてシューツェン氏は一息置くと、私たちに向けて話し始めた。


「まずこの場所の説明をしよう。この場所は魔界と言い、汝ら人間が住む世界とは隔絶された世界だ。我々魔界人と人間は種として同一の起源を持っているが、進化の過程で異なって今に至っている」


 なるほど。だから魔界人といっても普通の人間と容貌は似ているんですね。


「そちらの世界に魔族なる種族がいるだろう?ソレらはこの魔界から抜け出した我々の同胞だ。まあ人間との戦争に負けて迫害され、今は慎ましい生活を送っているようだが」


 確かシュウが魔界人のハーフは”例の事件”で全滅したとか言っていたような──なるほど、シュウもリンと同じように魔界人なんていないと思っていたからリンの言う魔界人を魔族と同義語と考えていた。しかし魔族とは魔界人の人間界での呼称であった、というわけですか。

 そしてその戦争もとい”例の事件”とやらの歴史を知っているシュウは、魔族は全滅したと思い込んでいた。だからあのように反応したのでしょう。

 リンはただの人間にしろ、シューツェン氏によると魔族というのはまだ存在しているようですね。私は会ったことがありませんが。


「そちらの世界から魔界に入る方法は現在ない……いや、()()()()のだ。汝らがこじ開ける前までは」


「す、すいません!」


「まあ色々あって封じられてしまったわけだが……。だから通常、魔界からそちらの世界へは一方通行で本当に覚悟を決めた者しか出て行くことはない。帰って来れなくなるわけだからな……ソレをテンユにもちゃんと教えていたはずだが……」


 シューツェン氏は自分の足元にいる娘を睨みつけた。

 そんな気配を感じ取ったのかテンユちゃんは父親の顔を全く見ようともせず、シューツェン氏の元を離れてシュウの足元へと収まった。


「魔界から魔の森へと通じる穴は1つだけ存在する。誰も怖がって普通は近づかないが」


「なんかテンユちゃん、蝶々を追いかけていたらしいのだよ」


「蝶々だと?」


「ごめんなさい!ごめんなさい!」


 テンユちゃんはシュウの足に顔を隠しながらそう言い放った。


「……まあ戻ってきてくれてなによりだ。汝らには礼をしなければいけない。どうもありがとう」


 先ほどとはまるで電話口でのよそ行き声のようにうってかわって、柔らかな声で言った。

 厳しい態度は子供への戒めのためですもんね!内心はテンユちゃんが帰ってきてくれて嬉しいに決まっているんです!


「いえいえそんな!私たちは冒険の途中でたまたまテンユちゃんを発見して、たまたまあの穴に入ってきてしまっただけですから!」


「テンユを親の元へ送り届けるという使命が達成できてなによりだ」


「そうだよ!それにテンユのおかげで楽しい冒険になったし!」


「そうか。改めて感謝する……ところであの穴に入る時、巨大な鹿に襲われなかったか?」


「襲われたよ!倒したけど!」


「倒した?!」


「そして食べた」


「食べた?!」


「き、貴様ら……っ!アレは穴への侵入をやめさせるように促し、その生物の生命を保護する、いわば”守護者”だ!ソレを倒したならともかく……た、食べただと?!」


 岩も鹿もやったのは私なんですが……やっぱり倒す、というか食べるのはマズかったですよね……いや、巨大鹿の丸焼きは絶品でしたが。

 くっ、私が唯一の常識人として奇人たちの珍行動の防波堤にならなければならなかったのに!

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