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22話 迷える子羊①

読んでくださりありがとうございます。

「ここが魔の森ですか……」


 あっちの世界で言えば松の木でしょうか。逆さにした小さい木のような実がいくつも()っている。

 それに木々が密集して()えていて黒く見える、というか真っ暗だ。今はまだ日も落ちていないのに……。

 奥まで見通すことができない。”魔の森”と言われるのも納得です。


「ねえ、あの……」


「ククク……感じる……邪悪なる波動を……」


 シュウはお決まりのポーズ。


「こんなところに王女様がいるとでも?」


「……いや、まあ……というか、ねえ!」


「なんでしょう」


「外してよ、コレ!」


 リンちゃんの腕には土の塊が手錠のごとくつけられている。


「あなたが悪いのを自覚してください!」


 昨日の夜。一昨日の二の舞は踏むまいとして私はリンちゃんを基礎魔法の実験台にした。

 大地の属性をもつリロちゃんに初めて教えてもらった魔法です。リロちゃんは自身の身長ほどの土塊を出していましたが、私は両手いっぱい程度。こんなものいつ役に立つんだ……と思っていましたが、まさかこんなところで使うことになるとは。


「はい……これからは許可があった日にだけにするのだよ……」


「一生許可なんて出しませんよ!」


 私が魔法を解除すると、リンちゃんの腕の土がぽろぽろと崩れ、地面に落ちていった。


「リン!ふっかーつ!」


 するとリンちゃんはなぜか両手を頬に当て、腰をくねらせ、


「キミがそういうプレイがお望みだというのなら頑張るのだよ……ボクはどちらかというとSなのだけど……」


 この娘は手錠だけじゃ足りないようです。土塊は猿轡の代わりになるでしょうか。


「というかこの旅の目的は王女様を探すんでしたよね」


「そうなの?」


「そうでしょう!」


「ボクとヒューガのハネムーンじゃ?」


 シュウがきまずそうな顔してるからやめなさい。

 私がリンちゃんを真顔で見つめると少しトーンを下げた声で、


「……あとボクの護衛もね」


「闇の盗賊団〈漆黒の翼〉から狙われてるんでしたね。しかしここまで来る必要ないでしょう」


「そ、そうかなー」


「それはいいとして……こんな場所まで王女がわざわざ赴いてくるわけないじゃないですか!絶対いないですよ!50000%いませんよ!もしいたらただの頭のおかしい娘ですよ!」


「ま、いいだろう。王女様だってそのうち見つかるはずだ」


 一国の姫かつ次期国王がそんな今なくても困らない遺失物みたいに……。


「早速入ろうじゃないか!」


「え、まじで入っちゃうんですか?懐中電灯とか……」


「あるわけないだろう。行くぞ」


 2人は私のことなど関係なし、とずかずか進んでいく。

 いや、オバケとか出たらどうするんですか……?



「もう戻りましょうよ……というかどこ向かってんですか……」


「どこへ向かうか……愚問だな。俺たちが向かうのは光という救いのない暗黒の世界」


「そして主たる悪魔と契約を結び、この身体に血の紋章を刻むのだよ!」


 また電波なことを……。

 そんなことを思っていると、


うぇーんうぇーん


 と、どこからか女児の泣き声らしき音が聞こえてきた。こんな人気のない森で?!怖すぎます!

 もしかしたら人間の泣き声を真似し、ソレを心配して近づいてきたところをぱくっと捕食してしまうモンスターだったり……。

 シュウとリンちゃんも気づいたらしく、周りを見渡した。しかしこの森のせいか、色んなところから音が響いていてどこから発しているのか見当がつかない。


「おーい、どこにいるか分からないけどキミ、大丈夫かなー?」


 泣き声が止んだ。


「キミ、人間ー?」


「に、にんげんですぅー」


 いや、私たちを捕食しようとしてるモンスターでもそう答えるだろう。


「人間だって!迷子なのだよ、きっと。助けなきゃ!」


 素直すぎるでしょう!

 助けようとも場所が分からないままではなんとも……。


「手分けして探すのだよ!」


「私たちが迷子になってしまいますよ!」


「じゃあどうしたら……」


 モンスターだったら困りますし、人間であるなら早く助けてあげたい。でもどちらか分からない以上リスクが……。


「ククク……この俺の出番のようだな」

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