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19話 厨二病たちの協奏曲③

「さて、まずは”魔の森”へ向かおうと思うのだよ」


「……リンのアナザースカイじゃないか」


 王都を抜け出した私たちは、少し離れた草原に座り込んでいた。


「そんなことより……」


 私の言葉に2人は頭にハテナマークを浮かべた。

 自分たちのやったことはしっかり記憶していてほしい。

 この厨二病たちには常識ってモノがないのか!


「あんなことしちゃってどうするんですか!」


「あんなことっていっても……なあ?」


「仕方ないのさ、ヒューガ」


「どこが!」


 私たちが王都から出ようとした時、王女様がまだ外へ出ていない場合の対処のためか、すでに門には3人の衛兵が配備されていた。ソレを……。


「未必の故意ってやつだ」


「話し合うことだってできたでしょう!」


 シュウは衛兵を確認すると、固有スキルを使い、襲わせてしまった。

 ……まあ襲わせたと言っても、キャンキャンと吠えたり、足元に嚙みついたり、と邪魔をする程度でしたが。

 一方、リンちゃんは戸惑っている衛兵たちを蹴り飛ばし、踏みつけ、道なき道を進んでいってしまった。


「というかそこまでして外に出る必要ないですよ!そんなに賞金が欲しいですか?!」


「ボクが出たいと思ったから、ソレ以外に理由がいるかな」


「闇の盗賊団だけではなく、王都からも追われたらどうするんですか!」


 公務執行妨害罪とか反逆罪とか暴行罪とか何らかの罪に当てはまってしまうことなど容易に想像できる。


「チカ、人はな、追われれば追われるほど魅力が増すんだ」


「魅力とかそういう次元の話ではありませんよ!」


「まあまあ、シュウはボクのためにやってくれたんだし……」


「あなたもあなたですよ!」


 折角の異世界ライフもとい世界ふしぎ発見生活、そしてあと少ししかない貴重な10代ライフを牢屋で過ごすなんて耐えられません!

 私が懸案事項だらけになるのが目に見えている未来を考え、頭を抱えてうずくまっていると、シュウは立ち上がり、


「『地獄の使者(ケルベロス)』」


 そう唱えるとシュウの足元に、


「「「くぅーん」」」


 3匹の子犬が現れた。


「わー可愛いー」


 リンちゃんは3犬に近寄っていくと、膝に手を当て、前屈みになって犬たちに柔らかな視線を送っていた。

 何がとは言いませんが、(こぼ)れ落ちそうです!


「よしよし、今日は感謝するぞ、我が眷族たちよ。その功績を称え、(あがな)いにより伏した魔物たちで饗宴(きょうえん)をするといい」


 シュウはリンちゃんから返してもらった黒フードの横ポケットから何から採れたか不明な肉を取り出し、子犬たちへと分配した。


「アン、今日の先駆けっぷり見事だった。次にポン、お前が吠えたおかげで敵を退けることができた。そしてタン、お前の噛みつきは堕天(だてん)のごとき働きであったぞ!」


 肉を貪っている3匹を撫でながらそれぞれに声をかけている。

 厨二病ではあるものの、動物には優しいんですね、シュウ。

 私たちの視線に気づくと、我に返ったように、にやけた面からいつもの面に張り替え、


「こ、こほん。では俺の固有スキルを紹介しよう。まずはアン!」


「きゃん!」


 そう返事をすると、黒プードルのアンちゃんは私を鋭い眼光で睨みつけ、歯をギシギシと鳴らしていた。


「怖いんですけど!」


 私は太極拳の構えのごとく、片足立ちをしつつ、右手をアンちゃんから遠ざけるように、左手は前に突き出して反撃する構えをとっていたが……あの時のように襲ってくる気配はない。


「安心しろ、躾けた」


 この男は厨二病なんか辞めて、ブリーダーになった方がいいと思う。


「アンは魔力感知に優れている。モンスターの魔力を瞬時に察知したり、わずかな魔力の性質でさえ見分けることができる。続いてポン!」


「がるぅ!」


 白と黒の入り混じったブルドッグらしきポンちゃん。デフォルトで強面であるものの、アンちゃんほどのような敵意は感じられない。

 チラッとアンちゃんを見ると……まるで自白を強要させようとする昭和刑事(デカ)のごとく私を睨み続けていた。

 仲間だったら頼りがいがあるんだろうなぁ……いや、一応仲間なんですけどね。というか強面枠はポンちゃんに任せてあげてください。


「ポンは魔法の操作に優れている。基礎魔法は一通り使える」


 このナリで?!

 ぐぬぬ、私より魔法使いしてるじゃないか……。


「最後にタン!」


「ぐらっ!」


 ドーベルマン風の犬!すらっとしていてかっこいい!


「タンは物理攻撃に優れている。力が強い」


 この子だけは見た目通り、というかあっちの世界にいてもおかしくありませんね。

 これで3犬が出揃った。アン、ポン、タン……と。

 みんな優れた能力を持っていて、個性があっていい!しかし──


「キミたち小さいのにすごいんだなー」


 リンちゃんはしゃがみこんで3犬を撫でまわす。3犬は近づいていって足に毛皮を擦り付けている。

 ただアンちゃんは……声だけは「くぅーん」などと媚びるような甘えるような感じではあるが、リンちゃんからちょうど見えない視線は私を突き刺していた。


「……というかあなたのスキルは可愛すぎるんですよ!」


「可愛い?ククク……分かっていないようだな」


「はぁ?」


「クク……コイツらはまだ幼体。成体となり、悲哀への讃歌を奏でし時、3犬は真の姿を現すのだ!」


 またお決まりのポーズ。

 リンちゃんは「お前たち早く成長してボクを守ってくれだワンー」などと猫撫で声で言っている。

 私は、


「そうですか」


 と軽くあしらう他に呆れていることを示す方法は思いつかなかった。

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