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17話 厨二病たちの協奏曲①

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「お邪魔します……」


 無一文ということが判明し、野宿することが確定していた私をシュウは宿に泊めてくれた……といってもソレは犬に噛まれたお詫びとしてなのですが。

 弟以外の男の人の部屋など入ったことなど当然ないので何か不思議な感覚です。入るだけではなく一緒の空間で寝るなんて……弟ですら嫌がられたのに……。

 夜、少しでも私の身体にイタズラでもしようものなら返り討ちにしてボコボコにして眠らせてあげましょう……恩人になんて言い草なんでしょうね、私は。


「適当にくつろいでくれ」


 部屋に入っていく時、シュウの知り合いらしき冒険者に「女っ気のなかったシュウに女が……」とか「いきなり部屋に連れ込むのか!」だとかからかわれて非常に恥ずかしかった。

 誰がこんな厨二病と……。


「あ、はい、ありがとうございます……」


 2つあったうちの右のベッドにシュウが座り込むのを確認し、私の寝床はこっちだろう、と左のベッドに腰を下ろし、その勢いで横になった。

 もしシュウと出会わなかったらこんなふかふかな寝床などではなく、かちかちの石畳の上であっただろうから感謝せざるを得ない。


「ところでヒューガ、お前は何をしにここに来た?」


「知見を広げるためですかね」


 私は横になったまま口を動かした。


「1人でか?」


「ええ」


「じゃあ俺と盟約を結べ」


「はぁ?」


 思わず起き上がってしまった。このまま寝てしまおうとさえ思っていたのに……。


「つまりパーティーの誘いだ。1人じゃ心細かろう?」


 確かに無一文な私はこれからクエストを受けなければならない。この世界に無知な私が1人でクエストを受けるというのも不安でした。

 それに何もお金も払わずにヒモのようにここに居座ることもできませんし……というかそもそも私はここら辺のことについて疎いですし……。


「分かりました。結びましょう、盟約。ただここら辺にいる間だけです」


「なぜだ?」


「私は既にあるパーティーに所属していますので、期間限定です」


 シュウは一瞬、悲しげな顔をした。やっと厨二病の仲間ができたと思ったら、パーティーに既に所属していた、同じような境遇かと思えば実は社会的であったというがっかりとした気持ちは……まあ分からなくもない。

 あ、いや、私は厨二病ではないので言葉の綾なのですが……。

 と、その刹那──


「右腕がっ……」


 この男の前で疼いてしまった。よりによってこの男の前で……。

 シュウはにやりと笑い、


「クク、やはりな」


「なんです……っ!」


「やはりお前の右腕には何かおぞましいナニカが宿っていてそれをアンが感知したのだろう!そうに違いない!疼くということはそういうことだ!」


 何を言っても信じてくれなかったのでこの日は寝ました。



 翌日。

 男女2人きりの空間で一夜を過ごしたのにも関わらず、何も起こることはなく、私の心配は杞憂に終わった。深夜に私がふと目を覚ましてしまった時、隣のベッドからはすぅすぅ、と寝息が聞こえるのみでした……私はなんて恥ずかしい女なんでしょう……。

 身支度をした後、とりあえず今日の自分自身の食費だけでも稼ごう、ということになり、私たちはギルドに向かっていたのですが──


「待て。何かいる」


 シュウは止まれ!と示すように私の前に手を添えた。

 宿は馬車の発着場があった近くであり、ギルドとは逆方向であった。そのため昨日のような道筋で進んでいたのですが、ある裏路地にてシュウは何かの気配を察知したらしかった。

 無視すればいいだろう、と思いますが、厨二病の(さが)、本能なのでしょう。

 シュウの陰から恐る恐る覗いてみると、


「……ボクのことが見えるのか?」


 そこには小さくうずくまっている女の子がいた。

 

「もしかしてお前……不可視的現存在の一種か?!」


「不可……なんですか、ソレ」


 シュウの言葉から少し間を置き、


「……そう!ボクは魔界人と人間のハーフ!いつの日か魔界を統べし者なのだよ!」


 その娘は立ち上がって腰に手を当て、誇るように言ってのけた。

 起立したことによって2つに分けて垂らされていた、その長くて派手なピンク髪がまるで鞭のようにしなりながら浮いた。

 端正な顔立ちとYシャツのボタンを3つか4つだけ留めてかろうじて抑え込んでいるたわわなソレはまさに男性を誘引させる甘やかな蜜である。

 ホットパンツから覗く色白でむっちりとした太ももは健康的なことを示し、腰には小さな宝石たちで飾り付けられた革製の鞘が携えられている……こんな身なりのくせに冒険者であるらしい。


「まさかお前が……」


 シュウは意味ありげにそんなことを呟いた。

 私にはこの娘とシュウが共鳴しているように感じていた。ソレを示すように2人は熱い視線をぶつけ合っている。不可なんちゃらというよく分からない厨二病的専門用語を理解しているようでしたし、自分を魔界人とのハーフと名乗っているし……。

 確かにここは異世界であり、魔界というモノが存在するかもしれませんが、外見に魔界人的特徴が見当たらない普通そうな人間に、突然あんなこと言われて信じれる人なんていくらなんでも──


「ククク、魔界人がこんなところにまだ存在していたとはな……”例の事件”で全滅したと思っていたが……」


 この男ぐらいなものでしょう。

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