15話 命運に誘われし邂逅①
ギルドに向けて歩いていると、人混みの足元で蠢いている黒い毛玉を発見した。
あれは……子犬?犬種はプードルでしょうか……?
「わんっ!」
ソイツは明らかに私のことを見ていた。犬へ恨みを買うようなことなどやった記憶はありません。というかこの世界で初めて犬を見たのですから……。
この人集りの中でなぜか私に向かって一目散に向かってきています。
「わわんっ!」
案の定と言うべきかその犬はいきなり私に飛び掛かってきた。周りの人もいきなり犬が現れたことで騒然としている。
咄嗟に右腕でガードしたものの、犬は私の腕に噛み付いて離れようとしない。腕を前後左右に振り回したことでなんとか離れてくれましたが、歯形がくっきりと浮かび上がっている。
地面に着地した犬はそのまま身を翻し、2度目の攻撃をしかけてきた──
「あ……あれ?」
と思ったら犬は跡形もなく消え去っていた。それも毛の1本も残さずに。
「……お嬢ちゃん大丈夫だったか?」
街の中年男性が駆け寄ってきてくれた。それを機に周りにいた人たちも私のところに来て、心配するような声をかけてくれた。
「ええ、血が出てちゃいましけどなんとか……」
寄ってきてくれた1人にお医者さんがいたため、手当てをしてもらった。
「これでよし。災難だったな、お嬢ちゃん」
「……ありがとうございます」
私の右腕には包帯が巻かれてしまった。うぅ……これはマズいです。何がマズいかというと……いえ、手当てしてくれたのは非常にありがたいのですが……。
腕に包帯なんて厨二病の典型じゃないですか!
しかもたまに疼くというオマケ付きで……。
色々寄り道をしてしまったものの、なんとかギルドに着いた。都会は誘惑が多いですよね。
というか惰性でギルドに来ましたが、一体何をすれば……?
今まで諸々の手続きはトウロさんとリロちゃんが肩代わりしていましたから……頼ってばっかだったのは私も同じでしたね。
とりあえず腰を下ろして休憩しましょう。
「ふぅ……」
ただギルドに向かうためにこんな疲れてしまうとは……。
というかあの犬は一体なんだったんでしょうか。
そうして体を休めるためにギルドの机に突っ伏していた時、私の腕の中に影が落ちた。顔を上げてみると、
「……」
そこにはポケットに手を突っ込んだ黒いフードの人がいた。まるで悪の組織の幹部のような身なりですが……。
「お前、その右腕……」
心配してくれているのでしょうか。その人はフードのせいで顔がよく見えないものの、私の右腕を凝視しているのは容易に想像できる。
というか初対面の人に”お前”だなんて言われる筋合いはありませんが……。
これは野良犬にやられて……と言おうとしたところ、先に黒フードが言葉を続けた。
「お前も”こっち側”の人間か?」
「はぁ?」
思わず開いていた口から言葉が漏れた。
その人がフードを外すと、
「我が名は、シュウ・シュボーカン。地獄の獣を使役せし者。そして闇に堕ちし混沌を身を以って体感せよ」
出てきたのは黒髪で華奢な顔立ちをした男だった。男は左手をフレミングの法則のような手にして顔に当て、右手で私を指差した。
というかこの男、もしかして……いや、もしかしなくても……。
男は姿勢を直すと、次はお前の自己紹介のターンだ、と言うがごとく顎で私を指した。
いきなりのことで戸惑っていますが、ここは自己紹介しておくべきなのでしょうか……。
キエンくんの時は前もって運命的な出会いがあったわけで、この場合はただのナンパ師や不審者としか……。
「私は……ヒューガ・チカと言います」




