13話 ヒューガの決心
ここから2章が始まります。伏線回収もします。
生誕祭も終わり、ピークのような暑さがどこかへ去っていき、少しは過ごしやすい気候になった頃、私はある決心をした。
「私、王都に行ってきます」
真剣だということを示すために、私は両手で強く机を叩き、その勢いのままで立ち上がった。
3人はいきなりの私の行動に驚き、まるで物体が水面に落ち、その箇所から伝播する波のように体をのけぞらせた。
「……ヒューガが行くなら俺らも行くぞ?なあ?」
「もちろんですとも!私たちピュートから出たことはありませんが……」
「なになに!どっか行くの?」
この空気の中言いにくいですが──
「いえ、私1人で王都に行ってきます」
3人はより驚いた様子を見せた。それもそのはずです。なんせパーティーメンバーが突然として離脱を宣言したのですから。
「ヒューガは俺たちの超火力枠だ。もしいなくなったら……」
このようにパーティーは私の隠しスキルに頼るようになってしまっていた。紅瞳竜の時も、モッコモッコの時も、(倒すことはできませんでしたが)ゴリラ的聖霊の時もです。
というのもどんな強敵でも私の右手に魔力が溜まってしまえば吹き飛ばすことができるからです。
しかしこのままではトウロさんたちひいては街の人々までもが技を磨くことを怠って弱体化してしまう。
「私たちに不満があるのなら言ってください!仲間でしょう?」
リロちゃんは両手を祈るように重ねて胸に当てると、不安そうな顔で私を見上げた。
「不満なんてとんでもない!これまでの毎日、本当に楽しかったです!」
家計を支えるために遊ぶ時間を削って放課後もバイトをし、どうせ高校卒業後は疎遠になるのだから、と友達を作らないことを納得させた私にとってこのパーティーで過ごす時間は青春が帰ってきたかのように感じた。
「じゃあなんで……」
「私はもっとこの世界の事を知りたいんです」
「……だから最先端のモノが集まる王都に……か」
これも1つの目的であって建前ではありません。あなたたちは私に頼りすぎです、と直接言うのは酷でしょう。
私の隠しスキル、これは紅瞳竜の一件以来弱まっている気がする。この謎についても解明していきたい。隠しスキルというくらいなので私には魔力放出の他にも何か素晴らしい能力があってもおかしくありませんし……希望的観測ですがね。また私の本来の魔力の性質や……今更意味のないことかもしれませんが、急に起こる疼きを止める術もこの世界に存在するかもしれない。
それに半年以上この世界で生きてきて、この世界には愛着が湧いてきた。自分の愛してるモノをより知ろうとしたいのは人間の本能であると思います。
恋愛においても好きな人の好きな食べ物や趣味、果ては居場所でさえも知りたくなると聞いたことがあります。私は恋愛というモノに触れてこなかったのでよく分かりませんが。
「でも1人で行く必要はないだろう」
トウロさんは半年間やってきた戦略が変わってしまうことを危惧しているようです。
「これは私の成長のためでもあるんです」
「成長?」
「皆さんと行けば、それはもう楽しいことが待っているでしょうし、私が苦手なコミュニケーションをトウロさんやキエンくんが率先してやってくれたり、リロちゃんが便利な魔法を使ってくれて快適な旅になるでしょう。でも……そうやってずっとやってもらってるだけじゃダメなんです!」
3人は頭に3点リーダーを浮かべた後、納得してしまったように視線を落とした。
リロちゃんは自分の腕をさすりながら、
「確かに私たちはヒューガに頼りっぱなしで……」
腕を組み、静かに何かを考えていたようなキエンくんもようやく頭の中がまとまったようで口を開くと、
「要するにヒューガはどこか遠いところに行っちゃうってことなのか?」
「あ、もう完全にこちらに帰ってこないというわけではないですよ?」
キエンくんは何を聞いていたのだろう。
「ただ勉強しに行くだけか?」
「まあ、そうなりますね」
「……寂しくなっちゃうな」
キエンくんはお気に入りのオモチャを失くしてしまった子犬のようなしょんぼりとした顔を見せた。
やめてください!そんな顔されたら母性本能がっ……ヨシヨシしたくなってしまう!
「決意は固いのか」
トウロさんの黒く透き通った目が私を貫いた。
「ええ、私は1度言ったことはやりきる女なので」
「そうか……俺たちもヒューガが帰ってくるまでに成長しないとな」
トウロさんは、はにかみながらも爽やかな笑顔を見せた。
「ヒューガに負けないように俺らでいっぱいクエスト受けようぜ!」
「私もヒューガのパーティーメンバーとして恥じぬように頑張ります!
「さよならは言わないぞ、ヒューガ。俺らはまたここで一緒にクエストを受けるんだ」
今生の別れではありませんが、彼らと過ごした半年間を思い出すと込み上げてくるものがありました。
「もちろんです!」
帰ってきた時に私の代わりに誰かが超火力枠に就任していたらどうしようと考えてしまい、余計に泣きそうになってしまった。




