追憶。見せかけの場所
この世界に来てから毎日のように同じ夢を見る。
父さんといつものようにゲームをして、いつものように母さんと学校であったことを話して、いつもみたいに姉さんに勉強を教えてもらって、「総助は馬鹿だな」って言われて、そんな夢を見る。
俺はきっと逃げたいんだ、あの世界に、あの町に、あの家に。
ふと辺りを見ると、総助は不思議なところにいた。
そこはまるでかつて自分が住んでいた、日本のある町の景色。
「ここは、どうしてここが...もしかして全部夢だったのか?」
総助は心なしか、安堵した顔をしていた。
「残念だがここはお前と私で作り出した空間だ、お前の思うあの町ではない」
話しかけてきたのは、30代くらいの男だった。スーツ姿に指輪が二つ掛かった、ネックレスをしている。
総助はやはりという顔をすると、
「お前は戦うことを選ぶか?誰かを傷つけるために。」
「違う。俺は別に誰かを傷つけたいわけじゃないんだ、でも守る力は欲しい」
そう総助が言うと、男は総助に近づいて胸ぐらをつかみ総助を睨んだ。
「甘いな、力とはどう変化させても最終的には誰かを傷つける」
「だから違うんだ、守りたい人がいるから力が欲しい。本当にただそれだけなんだ」
総助は必死に弁明した。しかし、
「それが甘いと言っている、お前はその守りたい人のために誰かを傷つける。違うか?力は誰かを傷つけるモノでしかない、だから我等は...だからこそ君達は...」
男は総助を放し、町の方に目をやった。
「いい...景色だな、我々が生まれ育った町だ。あそこには我々日常が確かにあった」
風は吹かない、町に住む人々の声も聞こえない。それが此処は、あの場所ではないことを示していた。
「角居総助、お前はには力がある。奴らがモロクショと言っているものに匹敵する力が、だがその力を間違えて扱えばお前に待ってるのは破滅だ。しかし、たとえ正しくその力をふるったとしても、お前には破滅が待っている。」
そう言うと、男は総助に手を伸ばした、そこには光る何かがあった。
「これは、なんだ?」
総助にはそれが美しくとても綺麗なものに見えた。
「これは人が求めた醜きもの、そしてお前達持つ力でもある。お前が望むならそれは具現化し、お前達を破滅の未来へと連れていくだろう。それでもお前はその力を使うか?」
男は今度は睨みつけるでもなく、逆に少し悲しい目をしていた。
「まだ俺は力ってのがよくわからない、みんなが笑顔ならいいと思ってる。でも俺の手は思ったより小さくて、気づかないうちに少しづつ命を零しているんだ。だから俺決めたんだ、目の前の人達だけでも笑顔にする、そのために戦う。そしてそのために力が欲しい、それじゃあダメかな?」
総助がそう言うと、男は今度は優しい目をしていた。
「まあ、いいだろう。18歳の子供に背負わせる荷物にしては、少し重すぎたのかもしれない。だが、お前はいい目をしている。あの頃私にもできなかった目だ」
俺はこの人が言いたいことが、少しわかったかもしれない。
「俺そろそろ行かなくちゃ、じゃあなおっさん」
そう総助が言うと男は少し笑って、
「龍虎だ、赤城龍虎。また此処で会おう角居総助」
「またな、龍虎。守りに行ってくる」
そう言って総助は消え、其処には龍虎だけが残った。
「本当に彼等にはひどいことをしたものだ。」
そう言葉を残し、龍虎も消えた。
風の吹かない、町の声もない、生きているように見せかけた空間もまた、消えるのであった...
このページを読んで町に行き、息を吸い、町の音を聞き、風を感じよう。すべてを感じたのなら、それは君はその空間で居られるってことなんだ。世界にいるかどうか確かめることが大事なんだ。




