邂逅「角居総助は生きたい。」
「まじかよ」
俺は少しビビりつつも、このオオカミの魔物に見つかった理由に心当たりがあった。この血まみれの服だ、奴らはこの服に付着した魔物の血の匂いにつられて出てきたんだ。
オオカミのような魔物は総助にとびかかろうと牙をむき出しにして構えていた、だが先に動いたのは総助の方だった。
「オラ、これでもくらえ」
総助は自分の服の上着で手をくるみ、そのまま殴った。
魔物が総助に吹き飛ばされ倒れこむと、総助は全速力で逃げた。
俺はそのままの勢いで山を下りた。幸い麓は近い、全力で逃げれば助かるはずだと、俺は信じ逃げた。
しかし、オオカミは圧倒的な速さで俺に近づき俺の足に噛みついた。
ここで死ぬ、自分のやらなきゃいけないことも、帰りたい場所に帰ることもなく、ただただここで死ぬ、でもここで死にたくはなかった、やりたいこともあった。
総助は何かを心に決め、足にかみついている魔物を振り払って立ち上がった。
「オオカミ、お前ら全員ぶっ斃してやる。俺はここで死にたくない、俺はまだ死にたくない。俺にはやらなきゃいけないことがまだある気がするんだ、だから俺はここで死なない。」
オオカミ型の魔物は総助が威嚇し返してきたことを感じ、互いに緊張が走る。
今度は先に仕掛けたのは魔物からだった。
魔物は総助を再び囲むように集まり、ゆっくりと囲いを縮める。
だが、総助は魔物が自分を再び囲もうとしていことに早々と気づき、その囲いを壊そうと魔物に飛び乗った。
「乗ったら少なくともお前は俺を噛めない」
総助はそう言って魔物の首を折り、その魔物は絶命した。魔物達は少し驚きつつも、総助が既に限界に達していることは臭いで分かっていた。総助を食い殺すのは、もう時間の問題だと。しかし、
「死んでるに悪いな、お前の死体使わせてもらうぜ」
総助は魔物の死体を振り回し、ほかの魔物を振り払う。
あれから何分経ったか分からない、俺は魔物を素手や死体や棒で何とか斃してを繰り返した。
正直限界だ、でもあの狼たちは一向に数を減らさないどころか、俺の戦いを見てそれに適応しようとしてる。でもまだだ、たとえ腕を失っても足を失ったとしても、死にたくない...生きたい。
総助は満身創痍で魔物の群れへと、特攻しようとしたその時だった。
『ショメベアルメユエン
メウィグピィゴンナチャツツアルメユエン
オルユエンルォスタノヲコベシンアルリグアルツツンビモラ
ツツウィウルベエルト』
と、魔物に向かって鋭い雫のような刃が魔物を斬りつけた。
魔物達は危険を察知し逃げていく、総助は何が起こったのか理解できずにきょとんとしていた。
「助かったのか?手も足もある、生きてる。」
「大丈夫ですか?」
声をかけてきたのはリーエレの町で道を尋ねてきたあの少年であった。少年は顔を隠してはなかった。
「あんたは!町で会ったあの...」
「僕はラスレ、さっきはありがとう。顔が見えてるから会った感じしないかい?」
ラスレの容姿は、耳にかからない程度に伸ばされた金髪に、翡翠色の目をしていた。
「なんで顔隠してるんだ?」
「いろいろあってね」
ラスレがそうはぐらかすと、総助は思い出したように言った。
「っていうか、君・・・じゃあなかったな、ラスレは特別な力みたいのがあるんだな?」
総助がそう聞くと
「特別な力?もしかしてモロクショのことかな?」
「もろ...なんだって?」
「モロクショっていうのは神の力を借りられる力のことさ。君は使えないの?」
「君じゃない総助だ、角居総助。俺はそう言う力は使えない。」
ラスレは意味深長な顔をした後こう言った。
「よろしくソウスケ、珍しいねモロクショを使えないなんて。町まで送っていくよ」
そういうとラスレは総助とともにリーエレの町に向かって歩くのだった。
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「起きろ、こんなとこで寝てたら風邪ひくぞ」
門番がそう言うと俺は目を覚ました。
「ここは?」
「リーエレの町の裏門だよ。さっきガキが来て、お前をここに置いて行ったんだ」
そうかラスレはもう行った後か…俺はギルドまでおぼつかない足で戻った。
「ようこそ冒険者ギルドへ」
ラクが少し嫌そうな顔で言う。
「約束のヒール草20本だ」
そう言って疲弊しきった顔でヒール草を渡した。
「報酬は300ラトになります。」
報酬を受け取った俺は、腹ごなしのため近くに会った食堂に行くことにした。
「いらしゃい!!」
そこにはふくよかな、まさしくおばちゃんといえる女性がいた。
俺はメニューを見ると、少し驚いた。
「最低でも100ラトくらいはするのか...」
でも腹が減っては何とやらということで、150ラトの鳥蒸し肉を頼んだ。
鳥の蒸し肉は今まで食べてきた食べ物の中で一番おいしく感じたなぜかはわからないが、とにかく生きてる。そう感じた
その後...
ご飯を食べ終わって気づいた、宿の場所がわからないどころか残り150ラトで宿に泊まれるのか?
総助は急に不安になり店の前でたむろしていた。
「邪魔だ、そこに居てはごみを捨てられないだろう」
そこに現れたのは白いエプロンを着たスルマだった。
「ああ悪い、なあこの辺りに宿とかってないのか?」
そう総助が聞くと。
「知らん、自分で探そうともせず他人に協力を仰ぐことしかできない、貴様はその血まみれの服のように汚らしいやつなんだろうさ」
そう言ってスルマは去った。
「なんだよあいつ、感じ悪いな」
少しイラっとしたが、自分で探すことにした。
思いのほか早く宿は見つかったものの...
「宿は一泊226ラトだ」
76ラト足りない...どうしよう、結構ピンチやっぱ150じゃ無理か。。。
「ん?あんたもしかして昼間の?」
そう言われて思い出した、この人は昼間に助けた女性を逃がした人だ。
「あんときは嫁さん助けてくれてありがとうな、助けてもらったお礼だ今日はお代なしでいいぜ」
「本当ですか!?ありがとうございます」
「よし、じゃあここに名前を入れてくれるか?」
目の前に出された貸出用紙にスミイソウスケと書き、渡した。
「ソウスケっていうのか、俺はケイヤ、ここで宿をやってる。そうだ俺の嫁さんが洗濯屋をやっててな、お前さんの服洗濯していろいろ直してやるよ。」
「ケイヤさんありがとうございます。」
総助は半泣きになりながら感謝した。
それから1時間ほど経ち、ケイヤさんに貸してもらった服を着て今ベッドに横たわっている。
「さてっと、」
俺は今日だけで起こったことから気づいたことが三つある。
まず一つ目は、会話や読み書きなどは全く問題がないということ
二つ目は、俺がいたあの世界よりはるかに危険な世界であるということ
それから三つ目、これは推測だが俺と同じようにこの世界に連れてこられた人が後二人いるかもということ。
「そう考えるとまず同じ状況の人達に会うところからだよな」
と思ったが今生きるのに精いっぱいなので、まずは安定したバイトみたいなものを始めることにしよう。
よし、と明日やることを決め今日はゆっくり寝ることにした。
一方そのころ
「スルマ、あのお客さんにこのステーキ持って行って!」
「そんなでかい声を出す余裕があるなら、料理に集中するのがおすすめだ追加注文が入ったぞ!」
「ああもう忙しい、従業員もっと雇わないといけないかしら?」
ここデメテール食堂の夜は長い...
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ここはリーエレ町のギルド前、怪しい影が一つ。
「驚いたよ、まさか初日で彼とコンタクトできるとは...これからどう変わるかな?」
そう呟き、怪しい影は夜の闇に溶け込んで消えた。
ラスレの詠唱はこういってます。
『海の神よ
水を操りし神よ
今宵我にその力を貸したまえ
雫の剣』
追記1月2日若干の修正を入れました。




