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異世界乱世  作者: Asuga
白金の章、滅色の節。崇高と欲望
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壮麗。アドミネ大洞窟 その三

  夜が深くなると、このアドミネ大洞窟は昼間とは違う顔を見せる。

 

 洞窟内は昼間と遜色のないほどに明るく、しかし魔物達は昼にはいなかったものも多く見せる。


 魚のような形をしている魔物〈ツウナ〉や、人型のまさに魚人のような見た目をしている〈ツウナルド〉、それ以外にも人形の蜥蜴のような肌を持った〈リザードウルド〉などがアドミネの地を闊歩している。


 先程、洞窟内は明るいといったがそれにも当然訳がある。


 岩肌から覗くサーケル鉱石、この石は昼間に陽光を集め、その集めた光を放出しているのだ。サーケル鉱石のこの日の光を溜める力は各国でエネルギーとして多用されている。例えば、街灯などである。

 この石は陽光によってエネルギーを溜めることができる。つまりソーラーパネルのようなものなのだ。昼間にエネルギーを溜め込み、その後放出するこの石はこの世界の灯りとしてとても重宝されている。


 しかし、サーケル鉱石はこの石単体でも意味は持つが、基本的にはこのままでは使われることはない。それにも理由はあり、この石は加工をしなければ昼間にもエネルギーを放出してしまうのだ。

 モバイルバッテリーで例えるならば、充電中でも放電している状態で、それはとてもじゃないが街灯などでは使えない。


 だからこそこのアドミネ大洞窟は、昼も夜も明るく、ある意味自然のサーケル鉱石の住処なのだ。


 アドミネ大洞窟は昼間に見えていた階段街などはうっすらとはしてしまい、しかしながらも昼間とはまた違うところが見えている。

 それはサーケル鉱石が光ることで、日の光によって隠されていた新たな通りや、新たな魔物の住処など様々だ。


 ソウスケ達は夜にならなければ見えないであろう小道を通り、ひとまず〈ヴェリタス湖〉のある地下深くまで向かう…


 「なあ、なんでそのヴェリタス湖ってのに行かなくちゃならないんだ?俺達が目指すのは地上だぞ?」


 ソウスケの疑問は一見してみると正しく聞こえるが、実はそうではない。確かにソウスケ達の目的地は洞窟を抜け、上りに上った先にある。現在進行形で下っていては着けないではないか、と思うのも無理はない。


 しかし、アガイはソウスケの疑問に単純な答えを出した。


 「地上に行くにはヴェリタス湖まで降りてから、ネザック階段街を駆け上がらないと王都には着くことすらできないのさ」


 そうなのだ。


 このアドミネ大洞窟が「()とせない蛇の乙女(アドミネ)」と呼ばれる所以の一つがこの道筋なのだ。


 アドミネ大洞窟は王都に行くまでにいくつかの順序があり、第一に〈ボナパルト大橋〉を渡り、その先には〈アドミネ大洞窟〉の入口、それから洞窟内で〈ヴェリタス湖〉まで下り、さらに旧王都である〈巣ザック階段街〉という約四千段にも渡る階段を中心広がった町があり、そしてようやく王都に着いたかと思いきやまだ終わらない。それから、階段街と王都を結ぶ〈勝利の龍の小道〉という名の小洞窟を抜け、やっと王都にたどり着くことができるのだ。


 「じゃあ、さっさとヴェリタス湖を抜ければいいんだな?」


 ソウスケは簡単にそう言うが、アガイ達にしてみればさっさとなんて無理な話だった。


 何故か、その答えは単純でヴェリタス湖はとても広い。かつ、ソウスケ達は徒歩で行くしかないためヴェリタス湖の外周を回らなくてはならない。そして、昼間には活発に動くドローン達を避けなければならず。結果的に約一日半はヴェリタス湖外周でドローンを警戒しなければならず、だからこそさっさとこの地下湖を抜けることなど無理な話なのだ。


 ソウスケとその横でアガイからこのアドミネ大洞窟、強いてはこの国の解説を聞いたスルマはこの先に広がるであろう巨大な地下湖を強く警戒するのだった。


 それから一時間程雑談もちまちまとしていたのが収まった頃、洞窟の下り坂に終わりが見え始めた。


 先頭に立っていたマチアスが足を止め、振り返ると


 「ここから先はヴェリタス湖だ、地下湖の周辺では魔物達も活発だからくれぐれも注意してくれ!それから、日の出まであと6時間もない…だからこそ少し急ぎ足で向かうぞ」


 ソウスケ達は息を呑み、そこから広がるであろうヴェリタス湖へ足を進めた。


 下り坂を下りきると、高い視点から大きいかな?と、見ていた地下湖が明らかに大きく見え、そのあたりに原生する魔物達がここは人が住む場所ではないと伝えるように其処ら中で各々勝手に生活を謳歌していた。


 「すっげぇ、広い…」


 「魔物、あいつらは一体…..」


 ソウスケはヴェリタス湖の広さに感銘を受けていたが、スルマはそうではなく逆に魔物達を興味深そうに見ていた。


 ソウスケ達は再び息を呑み、湖の(ほと)りを突き進んでいるとスルマは何かを考えこむように少しずつソウスケ達の進む方向から逸れて行った。


 当然アガイ達はスルマの異変に気付き、スルマの名を呼んだ。しかし、スルマは何かに吸い込まれるように地下湖へと足を運んでいった。


 「ッ!!まさか!?」


 アガイ達はスルマの異変の正体に心当たりがあったようで、意地でもスルマを地下湖へ近づけないよう身体で動きを止めた。


 そして、一行の中に混ざるリュカがソウスケに地下湖の辺に向かって指さして


 「ソウスケ!あっちに向かって攻撃をするんだ、奴らは…ルミードルワは俺達を操る。見ないでやるんだ。見なければ、あの光だけを見なければスルマの様にはならない!!」


 〈ルミードルワ〉。体が太い魚型の魔物で、魔物の頭上に伸びた明かりがある。その光を眺めてしまうと人の意識を少しずつ奪い、最後は自分たちのテリトリーである水の中まで引き込み、四肢をもいで食べてしまうのだ。


 ソウスケは焦って目を瞑り、地下湖の辺に一歩一歩ゆっくりと迫ると自身の持つ細剣を音のする方へと刺した。


 しかし、ソウスケの視界は塞がれている為、思うように攻撃はできず手こずっているとソウスケを横腹から突き飛ばすナニカの影があった。


 そこでソウスケ一行は瞑っていた目を開き、そのナニカを目ではっきりと確認した。


 すると、傭兵団の一人がそのナニカを見て声を上げた


 「あッ、あれはッ!あれはリザードウルドだッ!リザードウルド達がルミードルワたちを使って俺達に攻撃を仕掛けてきたんだッ!!」


 〈リザードウルド〉。人型の蜥蜴のような見た目をしており、自分以外であれば同族ですら食べてしまうほどの食いしん坊。魔物の中で一際知能が高く、個体によっては仲間と連携する頭脳派な一部もある。また、連携をする〈リザードウルド〉ほど厄介なものはなく。この世界の過去に実際に在った歴史では、〈征服魔王〉の名を冠した〈ユニークリザードウルド・ケブラー〉という極めて高い知能を持った者が人間でいう国家を築いたこともあるそうだ。

 

 それだけ知能がほかの魔物と比べて高いリザードウルド達は今回群れてやってきており、〈ルミードルワ〉達の意識を奪う力を利用してソウスケ達を罠に嵌めようとしていたのだった。


 ソウスケは5体のリザードウルドが迫って来ると、地面に落ちた細剣を拾った。


 「キャシャッ」


 リザードウルドの一体が別の個体に指示を出すと、その個体はきっと人から奪ったであろう鉄製の剣と盾と胸には鎧を身に着けていた。


 ソウスケは魔物の大ぶりな攻撃を河岸で避けると、細剣で胸を一突きした。


 それを見た指示役のリザードウルドは、残りの武器を持たない三体に命令し、ソウスケの方へと向かわせた。


 ソウスケは突いた剣を引き抜き、向かってくる一体を蹴るともう一体を手で押し込み、最後の一体には細剣の剣先で腕を裂くように切った。


 リザードウルド達の悲鳴が洞窟内に響く


 ソウスケは心のどこかで僅かにも魔物を憐れんだその時、ソウスケの心は既に警戒を解いてしまっていたのだろう、なんとソウスケはルミードルワの光を直視してしまい心此処に在らずな目でその場に立ちこんでしまった。


 それに真っ先に気づいたのは、先程ソウスケと戦って体の動きを見ていたリュカだった。


 リュカはまず、ソウスケの手から剣を奪いそれから自身の持ち前のスピードで目が光を認識する前にルミードルワを剣で刺し殺した。


 ルミードルワは目から口からと剣に刺されると、浮力のままに湖に浮かび上がった。


 ルミードルワが死にゆくと、今だッと言わんばかりにアガイとマチアスはスルマの体を放してリザードウルド達を指示していた個体を捕らえようと動いた。


 しかし指示をしていたリザードウルドも、当然馬鹿ではないのだ。指示役は二人からひらりひらりと逃げると、自分の荷物からまきびしのようなものを地面に撒いた。


 指示役はそこで自分が逃げ切れると確信していたのだろうが、現実はそうはいかなかった。


 指示役はソ、ウスケ達の方をまるで高みの見物をするかのような余裕なそぶりで振り向いた。しかし指示役の眼にはソウスケ達は見えず、目の前にたたずむマチアスただ一人を映した。


 「よう、逃げ切れるとでも思ったかよ?残念だったな、お前に逃げ道はない何処にもな」


 マチアスは足を広げ、バンダナを腕に巻き付けると


 「力が溜まる感覚、これこそ俺のモロクショ。()()()ォ!!」


 赤く綺麗に光ったと思えば、少しだけ怪しげな光が拳を包み指示役のリザードウルドの腹から顔にかけて砕くように殴り上げた。


 リザードウルドの体は黒く塵となっていき、そう長くはかからない内に貫いたマチアスの腕だけが残った。


 皆が終わったと一息つくかと思いきや、マチアスに対し我先にとリュカの怒号が洞窟内に響いた。


 「マチアスッ!あれほど夜にモロクショを使うなっていたっだろう、確かに俺達は頭はめでたいが守らなきゃいけない範疇ってものがあるだろッ」


 リュカはこれまでとは違い、真剣に、マチアスを正すようにそう言った。


 「俺は昔からそれなりにやってきている、それでも一度も不調がねんだから気にすんなよ」


 マチアスがリュカをそう突き放すと、お互いに…否、この場の全員が少し険悪な雰囲気となってしまったのだ。


 そんな中、ソウスケとスルマは死にゆくリザードウルドと、ルミードルワを眺めてあることに気づいたのだった。


 「なあ、なんでリザードウルド達の肉体は塵になってしまうんだ?」


 ソウスケのこの疑問は、隣で死体となったままのルミードルワと比較して生まれたものだった…

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