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異世界乱世  作者: Asuga
白金の章、滅色の節。崇高と欲望
37/39

絶景!アドミネ大洞窟 その一

 洞窟の入り口付近にあった町から少し離れると、人の気配がどんどんなくなっていき洞窟も少しづつ狭くなっていった。


 「本当にここから大きくなっていくのか?どう考えても尻すぼみだと思うが…」


 スルマは懐疑の眼差しながらそう言っても、アガイから帰ってくる返事は「あと少し」ただそれだけであった。


 洞窟も少しづつ薄暗く人が四人ほど通れる道になっても、大洞窟の名を冠するその実態をスルマもソウスケも掴めずにいた。


 やがて洞窟の岩肌が茶色く濁っていき、洞窟特有のぬかるんだ足場に蝙蝠の様な生き物の羽音などの音が響き渡った。辺りはすっかり暗く、わずかに人が動いているのだけを確認できるほどであった。


 すると、一キロ先にあふれ出した光の穴がこちらを覗くようにソウスケ達の体を映した。


 その光の穴に近づくたび、どんどんとその穴が大きなものに見えてきた辺りで再び岩肌に光った石が見えてくると、その先を映すあまりにも綺麗な世界にスルマとソウスケはここが彼らのいたところではないと再認識させるほどだった。


 一面を包む緑色のほのかな光と、現生する白く光った植物がグラデーションのような世界を作っており、国が二つはできるだろうと思えるほどソウスケ達にとって縦長で広く辺りに生ける魔物は伸び伸びと暮らしているように見える。


 洞窟は楕円を書くような形をしており、その楕円の外側を囲む形で盛り上がっている道がソウスケ達の今いる場所である。


 その楕円の中央には、ソウスケ達がいるところからも見えるほど大きな湖〈ヴェリタス湖〉が深い位置にあり、そこにいる人間軽く10人分はある巨大な竜のような魔物や、この国の名産であるザリガニのような形をした魔物〈エクルバス〉などが各々生活をしている。


 天井からは微かに日光が差し、洞窟内は本当にここが洞窟なのかと疑うくらいに明るかった。


 細くやせ細ったような木々は貴重なのだろうか、柵を設けて人が故意じゃなくても入れないようにしており、この国において自然がどれほど貴重であるのかを訴えているようにさえ見える。


 「どうだい、綺麗だろう?ここが本当の。アドミネ大洞窟。さっきから見えているこの石はサーケル鉱石って名で、日光を蓄積しそして光る。このサーケル鉱石が多分この国で二番目に重宝されている資源だね」

 

 アガイが緑色に光る石改め、サーケル鉱石の存在をソウスケ達に教えると壁から欠片を削って渡した。


 「これ勝手にとっていいやつ?」


 ソウスケは落とさないように、わずかに温かみを感じる鉱石を握りしめそう聞いた。


 「それ単体じゃ何もできないからね、重宝されているのにそこら中に在るのはもう既に足りすぎている状況でもあるからなんだよね。だから、スーデリクのお土産としてここから取っていくのも国が許可しているんだ」


 アガイはそう説明すると、開けている方へとどんどん足を進めていった。


 奥へ奥へと進めば進むほど、この洞窟は開けていき日光も少しずつ見えてくると地下に広がる〈ヴェリタス湖〉がいかに大きいのかが分かってきた。


 「あの湖大きいな、軽く町一個分はあるぞ…」


 ソウスケがそう形容のも無理はなく、実際にこの〈ヴェリタス湖〉はソウスケ達がかつて居たリーエレの街を上回る大きさなのである。


 「この辺の魔物は、外と比較してもに割と好戦的じゃないからさっさと進むよ!」


 「分かった…うん?あれは…」


 ソウスケが指さした方角にはここからでもかなり大きく見える階段と、その周りに町があるように見える不思議な空間だった。


 「あれは、ネザック階段街。かつてのスーデリクの王都だった場所だよ」


 「かつての王都…今は違うのか?」


 スルマはかつての王都という言葉を聞き逃しはしなかった。


 「かつてスーデリクができたときはあそこが王都だったんだけど、王城は山頂にあるから、山頂と王都の行き来が大変になって王都を山と山に囲まれた地に移したんだ」


 するとソウスケは


 「なんで王城は山頂にあるんだ?造りづらいし、行きにくいよな?」


 スルマもそうだそうだとソウスケを肯定すると、アガイから少しだけ驚く話をされた。


 「それは神話が関係しているんだよ。かつてこの国を守ったとされている『神龍ネザック』、この龍はこの国の国旗になるほどにスーデリクに浸透していて、その龍がかつての『英雄ユーゴー』に力を託して倒れた地を見守る形で設置されたのが今の〈クラージュズ城〉なのさ」


 歩きながらそう説明していると、急に壁から湧いたように人がわらわらと現れた


 「何者だい?」


 アガイは自分で一歩前へ出ると、剣を構えて声を響かせそう言った


 「俺達は傭兵団、お前たちを俺達のやり方で歓迎してやるぜ。野郎ども!行くぞーッ」


 「二人とも来るよ!」


 アガイがそう掛け声すると、ソウスケとスルマはそれぞれの剣を構えた


 アガイが一番強そうなバンダナを巻いた、リーダーと思わしき人物と交戦に入るとそれ以外の10人ほどがソウスケ達の方へ武器を持って走り出してきた。


 その中で一番素早い男が、ソウスケの懐に真っ先に入り込み手先に持った小刀を刺そうとした。


 しかしソウスケもその動きを完全に目で追い、小刀が自分の懐を刺す手前でアガイから預かり受けた細剣の柄の部分で受け止めた。


 「早いな貴様、流石はアレクサンドル王の客人」


 素早い男はそう言うと、もう一方の手からさらに短いナイフのようなものを出し突き立てようとした。


 ソウスケもそれはさすがに想定していなかったが、右手の小刀を受け止めたまま細剣の剣先だけでナイフを弾くとさすがに素早い男も身を引きソウスケとの間に距離が生まれた。


 「想定外のやり手だな、お前もお仲間も」


 その付近では九人の相手を軽々受け止め、〈メカニックブレイブ改〉で掃い薙ぎ九人はあっさり吹き飛ばされてしまった。


 一方アガイはというと、円を描くような独特なステップでバンダナの男の攻撃を受けることなく自分がしたい攻撃を一方的に押し付けていた。


 「やるじゃないか、まさか俺様以外にここまで短距離での戦いに秀でたやつがいるなんて。最高だ、楽しいぞ!」


 バンダナの男がボルテージを上げると、持っていたボロボロの剣を捨て拳のみで接近した。


 アガイが細剣を如何に突き立てようも、止まることなくバンダナ男の拳は終ぞアガイの細剣を持つ右手にぶつかることとなった。


 「骨まで行かなかったか…やっぱりお前強いな?いいぞいいぞ、俺の心炎が燃え盛っていくぜぇ」


 アガイは剣を捨てることはなくとも、剣を持たない左腕でバンダナ男の右手を掴むと自身の渾身の頭突きを食らわし男は脳震盪でも起こしたかのようにふらついた。

 アガイと男の頭から血が流れ、互いにまだまだいけるよな?と問いかけるように、目には炎をたぎらせていた。


 そしてソウスケと、素早く動ごく男は何度も小刀と細剣同士でぶつかり合いは離れを繰り返していた。


 「やり手だといったが訂正だ、お前らかなり強い方じゃねか。リーダーがあんな燃えてんのは久しぶりだ」


 「お前はどうなんだ?」


 「最ッ高だね!ここまで楽しい戦いは、久しいぜ」


 ソウスケにとって楽しい戦いとは最も理解に及ばない感情であったが、ソウスケの中には今、確かな高揚が感じられた。

 その高揚に対して、ソウスケは忌み嫌う思いでその男と戦っていた。


 「俺は先手必勝のリュカだ。お前、名は?」

 リュカと男が名乗ると、ソウスケもその問いに答え


 「ソウスケだ、リュカあんたは倒させてもらう」


 ソウスケの中には、どこかこの男を倒したいという感情が体を動かしており、それをソウスケ自身は関知していなかった。


 リュカは、ナイフを投げて小刀で攻撃してくると思いきや、小刀までも天井極限まで体を軽くしてソウスケに近づいた。


 ソウスケも当然、棒立ちではない。ソウスケはナイフを〈光〉から作った盾で防ぎ、盾を天井に投げ向かってくるリュカを再び細剣で受け止めた。


 だがしかし、リュカは先ほどまでとは違い手刀でソウスケの持っていた細剣を叩き落とすとソウスケの顔の前で左手を大きく広げ、


 「火球(カキュウ)(レツ)


 と口にした。


 するとソウスケの顔が爆発し、さらに天井から降ってきた小刀をソウスケの足元に突き刺した。


 「ぐぅうッ」


 ソウスケは痛みをこらえながら、焦げ臭い煙の中、足を強く上げた。その足はリュカの顔面に直撃し、リュカはソウスケの眼前で鼻を抑え跪いた。


 「痛くねえのかよ、やっぱ楽しいなぁこういう戦いはよぉ!」


 まだまだ戦える。そうリュカが思ったのも束の間、リュカの頭上には先ほどソウスケが投げた盾が落ちてきていた。


 ガンッと鈍い音が低く響くと、リュカはその場で気を失った。


 ソウスケは息を切らしながら、その場で仰向けになった。

 

 戦ったという実感ッ、勝利という経験ッ、それがソウスケの中で確かに渦巻いた。


 だが、ソウスケがふと周りの音に気を巡らせると何か違和感があった。音だ、戦っている音がするのだ。それも人と人とではない、むしろ虫の羽音のような音が聞こえた。


「角居!魔物だ、魔物が急に群がってきたぞ!!」


 スルマが急を要するような声でそう言うとソウスケはハッとし、起き上がるとそこにいたのは巨大なカナブンのような見た目をした魔物だった。


 「なんだいこの魔物は?」


 アガイも知らないのか、薄気味わるそうに顔を引きずって居ると


 「こいつぁドローンっていう魔物だ。ここ十年で急に数を増やして、迷惑していたところだ。いい機会だ、お前らもこいつらを倒してくれ」


 アガイは嫌そうにしていると、早速一匹の〈ドローン〉をスルマが落とした。


 「でかいだけで、動きはノロい。簡単なことだ」


 スルマは、〈メカニックブレイブ改〉のエネルギーを引き出しドローンを足場として次々と落としていく。


 ソウスケも負けずと、地上から跳び落ちてきた〈ドローン〉を次々にとどめをを刺していった。


 だが、〈ドローン〉たちは際限なく現れてきてさすがにスルマも面倒に感じたのか地上にいるソウスケを呼び止めた。


 「角居!アレをやるぞ」


 スルマがやろうとしていることを、瞬時に理解しソウスケは跳んでスルマの剣の柄に左手を伸ばして


 「降臨だ、ヴェルスグラディウス!!」


 空中で再び、〈メカニックブレイブ改〉を〈ヴェルスグラディウス〉へと変化させた.....かに思えた。


 なんと剣は変化することなく、ソウスケ達は空でそのまま重力に従って落ち続けてしまった。


 「なんだと!?」


 「おいぃぃ、このままじゃ落ちる、マジでヤバイって」


 二人とも想定していない事態に焦っていると、


 「アルバキェソ」


 という落ち着いた声が聞こえたのと同時に、辺りにいた〈ドローン〉を一気に風が刃になり切り裂いた。


 ソウスケ達が地面に落ちるかと思われた瞬間にも


 「アルバベピィルォ」


 と再び優しい声が聞こえると、ソウスケ達は優しい風に包まれ落下を防いだ。


 「いったいこれは?」


 そうスルマが疑問の感情を口にすると、


 「助かりましたかな?」


 と赤髪がかすかに残る、中年の男性が先ほどの優しい声の主だったようだ。


 「アドルフ・ブランド・ドミニカ、まさかあんたがここにいるなんてね」


 とアガイが少し疲れたような声でそう言うと、


 「何を言いますか、アガイ殿はお変わりありませんなぁ」


 はっはっはと笑うアドルフは、ふと思い出したように頭を下げた。


 「すまない、こんなことになってしまって


 その謝罪は、ソウスケ達には全貌が計れたものではなかった。


 アドルフが言うには、この傭兵団はこの洞窟内でソウスケ達が迷わないために同行者としてスーデリクのアレクサンドル王自らが依頼したそうだ。その任務の書簡の最後に、王は純粋に書いたつもりだったのだろが「傭兵団の貴殿らには、貴殿らのやり方で使者の方々を歓迎してやってくれ」と添えて在り、ならば傭兵団のやり方でとウキウキでソウスケ達との戦いに赴いたそうだ。


 「私も、陛下も敵意などは一切なかったのですが、何がどう曲解したのかこんな状況に…」


 アドルフは本当に悪気があったのかわからないような、へへっという顔をしていた。


 「理由は分かったけど、どうするのコレ…十人も気絶してるし」


 ソウスケがそう指摘すると、


 「とりあえず一旦待ってもらっていいですかい?」


 とアドルフが一旦状況を整理し、傭兵団が一人でも起き上がるまではいったんストップをかけた。


 すると、バンダナの男はアガイやソウスケ達に対して


 「悪かった、マジで勘違いしてた。俺達そんなに頭良くなくってよ、ただアレクサンドルと昔から縁があるってだけだからさ」


 バンダナ男は地面に何度も頭をこすりつけて謝った、ソウスケが「もういいよ」と声をかけてもそれは止まることはなかった。


 後にそのバンダナ男の名前が、マチアスだというのを聞き出すまでかなり長い時間、地面に頭をこすりつけて「すまん、でもアレクサンドルを悪く思わないでくれ」という趣旨の謝罪を繰り返した。


 これから、ソウスケ達は王都まであとどのくらいかかるのか…それはソウスケ達ではもう計れなかった。


 どうなるソウスケ!どうなるスルマ!どうなるアガイ!


 彼等のアドミネ大洞窟の冒険はまだまだ続く?

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