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異世界乱世  作者: Asuga
白金の章、滅色の節。崇高と欲望
36/39

強さに縋るものたち

 ウゲツとの戦いから一晩経ち、ソウスケは部屋から出るとそこには待っていたと言わんばかりにアガイが仁王立ちで立っていた。


 「おはよう、アガイさん」


 「おはようソウスケ、スルマはまだキツそうかい?」


 「随分よくはなったよ、それでさ…頼みがあるんだ」


 アガイはソウスケが考えていることなどお見通しだったのだろう、アガイは何も言わず細剣取り出しソウスケの方へと投げた。


 「稽古でも・・・だろう?それくらいいいさ、気持ちの整理くらいにはきっとなる」


 ソウスケは細剣を拾い上げ、アガイは自分の荷物からもう一本の細剣をアガイは


 「抜きな、その剣で私に勝てるくらいに強くなればきっとソウスケは心も強くなる」


 互いに細剣を構え、見合っているとしばらくの静寂が続き洞窟の天井から水が滴るポチャンッという音を合図に軽い稽古が始まった。


 ソウスケは真直ぐ突き進んでいたが、アガイは逆に一歩も動じず剣を水平に構えている。


 強いような、でもどこか軽い。そんな細剣同士のぶつかった音が洞窟内に響く


 「ソウスケ、今私たちが使っている細剣は主に突く剣だ。いつもの要領じゃうまくいかないさ」


 ソウスケは細剣を剣や刀などと同じく縦に構えて使っていたが、この細剣は剣身が細くアガイの言った通り突くことに特化した剣でありソウスケの今の扱い方では相手に攻撃を与えることはできない。


 「なら突いてやる!絶対当ててやる」


 ソウスケは慣れない突きにどこかぎこちなさを見せながらも、前進しアガイを目がけて突いた。


 しかし、アガイは一定の距離から円を描くようにしか移動しなくソウスケにとって戦いずらいのは言わずもながだろう。


 アガイが一歩入りソウスケの足元に一撃入れようとすると、ソウスケは一撃入れようとしたその剣に剣を突き立て押し付けた。


 「!?なるほどそう来たか、なら」


 アガイは剣を手首でくるりと器用に回転させると、ソウスケの喉元に剣を向けそこで手を止めた。


 「残念だったね、ソウスケにこの剣は早すぎたかな?」


 ソウスケは心の中で、こんなに扱いにくい武器を使っているのか、この人ただものじゃないッっとひとり呟いていた。


 アガイに剣を返そうとすると、彼女は


 「まだ持ってな、少なくてもこの国にいる間にその剣に慣れてもらうから」


 そう言ってソウスケに剣を再び渡した。


 ソウスケは剣を見つめ、この剣をどうやればうまく扱えるか?と小難しそうな顔で考えていると


 「無い頭で考えても何も浮かばんさ」


 と宿からスルマが現れソウスケに対しそう言うと


 「誰が無い頭だよ、俺だっていろんな事考えてるんだぞ!失礼だな」


 ふっとスルマは鼻で笑い、ソウスケそれを睨んでお互いにじゃれあうように取っ組み合った。


 するとソウスケは突然笑い出しその場で大の字になって寝た


 「その調子じゃ、大丈夫そうだな」


 スルマは少しだけ口角を上げると


 「言ったろう?大事無いとな」


 彼らはどこか、互い同士認め合っているようなそんな雰囲気だった。


 きっと初めて会った日とは変わっている、そんなことをソウスケは心中で思っていた。


 「二人とも!今日はできるだけ先に進みたいんだから、じゃれあってないで朝に詰めれるだけ腹に詰めていくよ」


 アガイが声をかけると、二人は


 「じゃれあってない!!」


 と口を揃えて、アガイの元まで駆け寄った


 朝食はメール粉で作られたパンに、スーデリクの名産であるエクルバスという名の甲殻類の蒸し料理、そして付け合わせなどの野菜である。


 このスーデリクは肉より、むしろメール粉や、野菜などの方が高い。金を持たないものには、食事のバランスの調整さえ与えられないのだ。


 ソウスケはパンを食べながら辺りを見渡すと、やはり申し訳なさに駆られた。


 「このメール粉も帝国産なのか?」


 スルマはソウスケが言いたいことに何となく察しがついたが、ここは自分が口を挿むべきではないと一歩身を引いた。


 「この世界のほとんどが帝国産か共和国産のものばかり、スーデリクは土地の問題で作物が育たない。となれば、他国を頼るしかないのは分かりきったことじゃなくて?」


 「そうか。じゃあ俺達も今、戦争に加担しているのかな?」


 「まあ、そうなるね」


 「昨日モレウベリアと戦ったろ、奴らはアガイさんの目にどう映った?」


 アガイは少し考えこむと


 「何というか、強さは確かに感じられるけどそれを超えない。なんというか、強さに縋ってそれ以外をなくしたような、悲壮感?みたいなものも感じられたね」


 むしろアガイには、ウゲツと名乗った男から強烈な憎しみなどが浮いて見えていた。

 

 「強さに縋って…か、俺達もそうなのかな?」


 ソウスケがそう切り出すと、


 「どこがだ角居、俺と奴らは違う。あいつらは強くなった自分に酔って力を行使しているだけにすぎん、俺は奴らと違う。俺は強さそれを求めるために・・・・・」


 「いや、今の俺達じゃない。これからの俺達だ」


 スルマはソウスケの言葉に共感はしなかった。


 できなかった。彼が強さを求めるのには理由があり、スルマは自分が目指す世界の為、自分はより強くなれると、何処までもいけると、そう自分に言い聞かせていたからである。


 だがソウスケは違った。


 ソウスケは強くなっている自分に、スルマに、どこか底知れない恐怖心があった。


 このまま戦い続ければ、何処に近づき、何を失うのか・・・・・それが怖かった。


 「違うね」


 そんな時、アガイはソウスケの考えを真っ向から否定した。


 「あんた達と、昨日のあいつは違う。だってあなた達は、生きようって意志が目に映っているもの。あいつには生きている意志や、希望、そんなものが微塵も感じられなかった。だから、あんた達とあいつは違う」


 アガイの言葉はソウスケの心を強く響かせた。


 どこに近づくのかなんてわからない。でも、生きようって意志があるのならきっとどこへでもなんだってできると、そう心に刻んだ。


 食事を終え、出かける準備を整えるとソウスケ達はこの大きな洞窟〈アドミネ大洞窟〉の奥へと進んで行くのであった。



~~~



 洞窟中央の〈ヴェリタス湖〉で、モレウベリアのオーリ、ルル、ウゲツの三人は伸び伸びと朝食をとっていた。


 「はぁ」

 

 ため息をそう漏らしたのは、この中で一番の新入りのルルであった。


 「どうしたよ、ルルガキ。寝不足か?」


 小馬鹿にした様にそう言ったのは、ルル1.5人分くらいある背のオーリであった。


 「自分が生きていた世界は狭かったなと、過去を振り返っていたんです。あとルルガキはやめてください」


 すっかり彼らと馴染んできたルルは、そんな会話を交わすと


 「あなた達に助けられてからというもの、この世界の真実だとたくさん嫌な世界を見せられて正直、心の整理ができてないんです」


 「ははは、バッカだな。見せたんじゃねえよ、()()()()()()()()


 オーリは少し遠くの方を見て、


 「俺達はな、強くなったんだ。その力を正しく扱うために、セツはモレウベリアを創った」


 その言葉には、誰かの意志が乗って係った様だった。


 「それだけじゃないけれどね」


 そこに、朝食を持ったウゲツ現れた


 「僕たちは変わりざる負えなかった。でも今は違う、僕達が残っている。変わりざる負えなかった世界の中、僕達だけが力を手に入れ変わらずにいられた。それは力に縋って見えるだろうけど、でも僕らは・・・・・」


 オーリがかったるい顔をすると


 「そう言うのはもっと和やかな時や静かな時にしやがれ、今俺は腹減ってんだ。あくしろ」


 ウゲツは心の中で、ブチコロシテやろうか馬鹿オーリと滾らせたが何とか自分を抑え朝食をオーリとルルに渡した。


 「チッ、携帯口糧みたいな風貌だなこりゃ」


 オーリが嫌そうにそう言うと、


 「あのな、持ち運びできるようにしてやったんだからおいしくなさそうに言う名はやめてくれ」


 オーリは、その携帯口糧のような風貌のものを吸って食べると


 「こりゃあ、鶏肉か?」


 「そうだよ、ルグレー産のいい品が手に入ったんだ。海上商会で見つけたとき、冷凍しておいたんだ」


 ウゲツは自身満々に言うと


 「昨日の今日でよくやるよ、セツの力こんなことに使いやがってさぁ」


 ルルは困った顔でウゲツに聞いた


 「共食いにならないんですか?」


 するとウゲツは何とも複雑そうな顔をした、その横ではオーリが馬鹿笑いをしており軽くウゲツに殴られた。


 オーリは笑いのツボにはまったようで、苦しそうに


 「こいつは大丈夫さ、そもそもウゲツは選ばれし()()だからな」


 ルルはまだ知らない、モレウベという名の国があった歴史を、そこに在った不思議な仕組みを・・・・・


 朝食を済ませ、軽くストレッチをすると


 「目指すは、『ネザックの勝利の遺跡』だッ。いくぞ」


 オーリが声を張ってそう言うと、彼らもまた歩み出したのであった。

ルルの身長は大体、135センチくらいを目安に書いているつもりです。

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