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異世界乱世  作者: Asuga
白金の章、滅色の節。崇高と欲望
35/39

Cuisiner!! モレウベリア・ウゲツ

 戦いが始まるかと息を呑んだ途端ににとてつもない衝撃が走り、ウゲツの持つ二本の脇差のようなものがソウスケの首をあと50センチ入れば掻っ切れるほどまで近づきそこで留まった。


 否、アガイが持つ一本の細剣(レイピア)の剣先でウゲツの鎧を刺して止めていた。


 土埃が舞い、その中央からは武器と武器とがぶつかり合う音が響く


 「初撃を受けきるとは、なかなかやりますね!でも、僕も負けられないので」

 そうウゲツが言うと、その場から少し距離を置き自分の刺された胸の方を少しかいた。


 「こちとら何十年も騎士やってるからねぇ、お前みたいな小僧っ子にはやられないさ」

 アガイは細剣を構えウゲツに警戒している。


 「小僧っ子ね…僕もそれなりに武器を握って久しいんですけどね」


 ソウスケ達はアガイから距離を取りつつ、ウゲツを囲むようにしてそれぞれの武器を構えた。

 

 その中で先に動いたのはウゲツだった。


 「半月一刀(ハンゲツイットウ)!!」

 二本の脇差のうち一本が輝き真正面にいるアガイを、言葉通りしようとしたがそれはアガイ自らによって止められる。


 「細剣ってのはね、使い方次第で力もいらなくなる。だからこんな風にッ」

 細剣の持ち手でウゲツの脇差を一本殴ったかと思いきや、細剣の剣先はウゲツの手を刺していた。


 「さすがだね、やる~。でもね、僕からしたらただの小細工なんだよ!」

 

 ウゲツが力いっぱいに振り払うとアガイは体が浮くほど飛ばされた。


 「アガイさん!」

 ソウスケがアガイに気をとられたそのわずか一瞬にウゲツは目の前に迫っていた。


 「よそ見をするなんて舐められたもんですねえ!!」

 ソウスケを脇差で突き飛ばすと次にスルマの方をくるっと見た。 


 「今度は俺と言いたげだな」


 「まあね」


 ウゲツは人間にしては早すぎる速度で動きスルマを攪乱しようと試みるが、スルマにはそれは効かなかった。

 スルマはそれより早き者をすでに見ている、つまり人よりすこし早いだけのウゲツの姿を捕らえることは難しくなかった。


 スルマの火を纏った剣がウゲツの足を少しだけ掠ると、急にスルマから少し距離が離れたところで止まった。


 「どうだ?弱いモロクショでもこれくらいはできる」


 「さっきから地味なことばっかりしやがって、次の攻撃で仕留める!!」

 ウゲツは激昂を少しだけ露わにし、脇差をクロスして身を屈めた


 「笹搔・双電(ササガキ・ソウデン)

 ウゲツが脇差を空で切ると、荒い電機が空気中にバチバチと音を立てスルマ直撃した。


 スルマは直撃をしても倒れずに傷つきなお、ウゲツに向かって走っていった。


 スルマの〈メカニックブレイブ改〉とウゲツの脇差〈ウスミドリ〉がぶつかり鍔迫り合いをすると、スルマは少しずつ力で押し負けて行った。


 スルマの剣が押し負け、自分の剣が右肩にかかるところでスルマは押したまま左足を捻って体を逃がし、左足からその場に転げるとすぐさま立ち上がった。


 一方ウゲツは急に体を逃がしたことで体が前に行き過ぎ、体のバランスを崩した。


 スルマは剣を片手にウゲツに向かって走り出し、ウゲツは大きなため息を吐くとスルマの方を見ないで思いっきり向かってくるスルマを蹴り飛ばした。


 スルマは壁に叩きつけられ、グハッと重力によって地面に再び叩きつけられた。


 ウゲツはイラついた顔を露にし


 「ここまでしょうもない事ばっかなのはお前だけだよ、弱火で炙る様にじっくり痛ぶってやる」


 ウゲツがスルマの背に一撃入れようとしたその時、ウゲツは苦しんだ声を上げその場で膝まづいた。


 ウゲツの背中には鋭い細剣が突き刺さっており、ウゲツが血走った目で振り向くとそこにはアガイが以外にも余裕な表情を浮かべて立っていた。


 「ふざけるなよ、僕の楽しみを邪魔するなんて。ふざけるなー!」

 大きな声で叫ぶとさっきよりもう少しだけ早くウゲツはアガイに迫り、身体を細切れにしようとした


 しかし、アガイはウゲツの攻撃一撃一撃を加速が入る前の弱い力の時に止めウゲツを蹴り飛ばした。


 「さっきの攻撃も、振りかぶって下すのにわずかに時間があるのが分かったなら対処はできるさ」

 落ちている細剣を拾いふっと一息つき蹴った先を見た。


 「僕の技に気づいた?ハッ、何も気づいちゃいないさ。僕の真の力なんてねぇ」

 

 脇差を逆手持ちに切り替えアガイの傍に雷が如く近づくと、


 「稲ず・・・」

 とウゲツが言いかけたところで、アガイの体の後ろから総助が現れウゲツを思いっきり右手で殴り飛ばした。


 「どぅああああああ」

 と地面に転がり落ちた。


 「まだ、やるか?」

 ソウスケが転がり落ちたウゲツにそう問いかけると、瞬時に起き上がり


 「興が覚める、献立を変更します。また、近いうちにでも会いましょう。次会うときはメインディッシュになってきてくださいね、僕の為に」


 そう言って瞬く間にウゲツは去っていった。


 取り残されたソウスケはふと思い出したように、スルマに駆け寄った。


 「無事か!?須流真」


 「無事、とは言えないが大事はない。平気だ」


 ソウスケに助け起こされると、スルマはそのままソウスケに肩を貸したまま部屋に戻っていったがアガイはその場に残っていた。


 アガイはほっと安堵のため息をついて腹部を触った


 「意外といいのもらっちゃったな」


 そして同時刻・・・


 「クソ、ダメージを負いすぎた。このままでは不味い」

 ウゲツが痛みに苦しみながらも洞窟の奥へ奥へと歩む。


 彼はモレウベリアの中でも戦闘力だけで言えば一番低い、そして回復能力を持ってるとはいえ自分が疲弊していればその力さえ使えない。


 つまりウゲツにとって、詰みが少しづつ近づいていた。


 ウゲツの腕の装甲が崩れると、そこには鳥の羽毛のような手が露になった。


 「まだだ、僕は死なない。セツの為に、オーリの馬鹿の為に、彼女の為に…まだ止まれない」

 

 しかしウゲツの思いも虚しく、洞窟内にいる巨大なカナブンのような見た目の魔物が何匹もウゲツを囲むように現れた。


 するとウゲツは助け求めるような声で、


 「君らはドローンの末裔か?助けてくれ、僕を少しだけ遠くに運んでくれるだけでいい、頼むッ」

 

 苦しそうな声でその魔物に助けを求めようも、魔物は何も言わず巨大な羽音だけ鳴らしウゲツに近づいた。


 ウゲツの鼓動は少しづづ早まり、恐怖心だけが大きくなっていった。


 そんな時、飛んでいる魔物さえ気づかない速度で羽をむしった影があった。


 「これで飛べませんね」


 すると洞窟の奥から、「よくやった」とだけ言って現れたオーリの姿があった。


 「よう、ウゲツ。ひでぇ顔してんな、こいつらは俺とルルのガキに任せておけ」


 するとオーリは圧倒的な力で魔物を吹き飛ばし、ルルは飛ばされた魔物の急所だけ確実に貫いて残った体をポイッと捨てた。


 「こいつらは、長く籠もりすぎた。いや、この世界のやつら全員が統べ駆らず築き上げたものを捨て去った。あんなことの後だ、当然だな」


 「もう、僕たちが居た頃とは何もかも違うのか」


 「まあな、休もうぜ。ウゲツににしてはよくやったな」


 「オーリにしては役に立つもんだね」


 互いにいやらしく笑った後、枯れた声で笑い合った。


 このアドミネ大洞窟の中でモレウベリアが三人もそろった。


 「誰にやられたよ、やっぱスルマか?それともアイテラガのアガイとかいうやつか?」


 「一番最悪だったのは、あの馬鹿そうなやつだよ。僕を全力で殴って、まだやるか?だそうですよ」


 「あの一番が?面白れぇ、次会ったらぶっ飛ばしてやるよ。仇討ちってやつだな」


 「僕はまだ死んでねえよ」


 オーリは一人で笑っていると、ルルが素朴な疑問を呈した。


 「その一番ってなんです?おそらくソウスケ…君のことだと思うんですが」


 「最初に喰った奴だからさ、()()を」


 「?」

 ルルも、ウゲツも、オーリの言ったことにいまいちピンと来ていなかった。

 

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