墜とせない蛇の乙女と戦争の真意
法王国から出た三人はそのまま北上したところにある、リーヴァヴォンターの大川の前まで来ていた。
「これが王国と他国を割くリーヴァヴォンター大川。この大川を越えた先にあるのがスーデリク王国」
アガイがそう説明すると、川に建てられた巨大な橋を指さした。その橋はスーデリクと、ディジアー・アイテラガ・アフィニティを繋ぐボナパルト大橋。
ボナパルト大橋はただの橋としての側面だけではなく、その橋にはその橋を使って他国が攻めて来た場合に備え彼処に罠や兵器が点在している。
それだけでなくボナパルト大橋自体は王国領に当たるため、橋には王国兵もたくさん待機している。
ソウスケ達がその橋を渡っていると、その中間あたりで王国兵に止められ
「君達、ここから先は王国領だ。身分と名を表すものを提示してもらいたい。例えば国証明が入った冒険者証明書などだ」
冒険者証明書・冒険者カードは発行自体は簡単にできるため、あまり自身が冒険者だと証明すること以外には使えない。そのため、国に証明の刻印をもらった自身の身分・実名を証明書は世界的に見て一つのいわばパスポートのようなものなのだ。
しかしソウスケ達はそも、証明などしていなければこの世界に自身を証明できるものは何もない。言わばパスポートを失っている外国人状態なのだ。つまるところソウスケ達は今、ピンチなのである。
幸いアガイが法王国からの使いであることを兵士たちに伝えると、ソウスケの思いのほかあっさりと大橋を通り抜けた。
大橋を通り抜け、そこから続く道を進むと遠くの山々には雪が少しづつ降り積もっているのが見えた。
三人は雑談をすることもなく静かに道を歩んでいた。しかしその沈黙をソウスケは破った
「アガイさん、聞きたいことがある」
「なんだい?私が答えられることなんてたかが知れていると思うけれど」
「あんたは前、サリを殺しておけばって言ったよな」
「言ったね、それは今も変わらないけど。まだソウスケはアレを自分の解る範疇にいるとでもいいたいのかい?」
「ああ、あれは俺が悪かった。サリは悪くない」
「でも、アラカンに攻めて来たんだろう?それでは何も説明にはならないさ」
そう言われるとソウスケは俯いた。
その後再び沈黙が続いた。
それから2時間ほど道のりに合わせて坂を上たり下ったりしていると、彼方に巨大な龍のような影が見えた。
その目下には巨大な穴が開いていて、いかにも入口だといわんばかりに兵士が五人がかりで見張りをしている。
「着いたよ、ここがスーデリク王国の入口『アドミネ大洞窟』。ここを抜けたら私たちの目指すスーデリク王城のお膝元、『王都スビィバレ』が見えてくる」
アガイがそう説明すると、スルマもソウスケもきゃだいな山肌を見上げ息の白さが濃くなっていることに気づいた。
アガイが再び兵士に説明をして大洞窟の中へと入ると、そこに広がっていたのは洞窟内に広がる巨大な街だった。
スルマは驚いて
「洞窟内にこんな町が形成されているのか!?」
スルマはあたりを見渡し再び驚いた、何故ならば洞窟内がやけに明るいからだ。あたりの山肌には削れた緑や青に強く光る石があり、それが光源となってこの洞窟内を明るく照らしていた。
「驚いたかい?ここがアドミネ、大洞窟の名も持ってるけど本来は町の名前なのさ。今日はここで泊っていこう」
アガイが荷物を下ろしてふっと息をつくと、スルマは首を傾げた。
「このまま王都に向かうのではないのか?先ほどそう言ったばかりだろう」
確かにスルマの考えはあながち間違いではない。しかし、ここがアドミネ大洞窟の異名を持っているという意味をスルマはまだ知らない。
「もし、ここまま進んだらあと三日は碌に休めないよ。今日はこの周辺で泊れるからいいけど、ここから先はそんな場所あるかはわからないね」
スルマはその言葉の意味をそれなりに把握し、宿を探すことにした。
なぜここで泊ってしまうのか、それはさっきアガイが口にした三日と関連がある。
スーデリク王国はこの世界において、第二位の土地面積を千年前から維持し続けている。それは単純な土地の広さではなく、スーデリク王国はこの世界で一番山の土地を所有しており、その地下に広がるアドミネ大洞窟以外に王都に続く場所が塞がっているため王国としても最終防衛地であり他国としては最終関門になりえる巨大な防衛都市なのである。
その土地を千年維持し続けた難攻不落差も名が通っており、どんなに策を弄しても洞窟からからめ捕られることから「墜とせない蛇の乙女」として有名である。
そのことことからもわかる通りこの洞窟はかなり広く、このアドミネ大洞窟の広さは山を八つ分の広さがある。
さらに洞窟の地下には1000年以上蓄積されてきた巨大な湖があり、それも落とせないの名の通り難攻不落の理由の一つだ。
「洞窟内はそれなりに温かいんだな」
ソウスケがそう呟くと、アガイが少しだけ優しく
「ここは夏は涼しく、冬は暖かいのさ」
アガイが宿を見つけ、部屋を二つとると寝る前の腹ごしらえに出た。
「ここ、空いてるかい?」
アガイが席に指さして店員に聞くと、店員は頷きメニューを渡してそそくさと忙しそうに去っていった。
メニューには様々のものが載っていたが、どれも聞きなじみのないここならではの料理ばかりであった。
三人とも料理を眺めていると、店の周りがどうにもうるさかった。試しに耳を少しだけ澄ますと
「もうたくさんだ、戦争の準備ばっかりで俺達は別に戦いたくなんてないっつの」
「おい馬鹿、そいうもんは思ってても口に出すなよ」
「大体よぉ、あのアレクサンドル陛下がちと若すぎたんだよ。かつての陛下が『大地の神の怒り』で亡くならなければ、こんなにつらい生活になってなかったと思うとよぉ赤子も後悔するぜぇ」
ソウスケ達はその言葉を聞くと
「戦争の準備!?一体どういうことだ」
するとアガイは状況を既に知っているのか、この国の現在の状況を少し話した。
「この国は今から300年前から帝国と戦争を続けていてね、ずっと戦時中なのさ。そもそもスーデリクは寒い土地柄あまり農作物も育たない、だから貧困なものには食事すらないのさ。確か八年前までは国民全員が国からの配給便りだったけれど、その時起こった大地震で国にかなりのダメージが入って以降配給すらなくなったんだ」
そんなことを聞いてソウスケは少しだけ複雑そうな顔をした。
アガイはソウスケの顔を見ると、難しい顔をして
「戦争は嫌いかい?」
と聞いた。
「ああ、嫌いだね。誰かを傷つけるなんて御免だ。もし、争いたいのなら国のトップ同士でじゃんけんでもゲームでもすればいい。何も、何の罪もない人たちを殺すことなんて…」
「そう」
アガイはふーんと顔にし、メニューからアドミネ産の焼き魚とパンにビールを頼んだ
ソウスケ達は様々な思いでご飯を食した。食べれない人々もいる中、自分たちだけこんなに食べてもいいのか?と、半ば申し訳なさも交じっていただろう。
「やっぱり俺は戦争なんて嫌いだ、俺は絶対に戦争なんかに加担しないからな」
とアガイに釘刺すように言うと、アガイはため息交じりに
「じゃあソウスケ、あんたは私の店で食事を作り提供した、あなたは買い物をした、そして貴方は人を助けた。それは全部戦争に繋がっている」
ソウスケは少し驚いた表情をしたが、スルマは違った。スルマはアガイが言わんとしていることに、早々に気づいていた。
「つまりあんたは角居にこういいたいんだろう?料理するのに使った器具や食材は元をたどれば生産力の強い帝国製、人をたくさん助けたが、その中には兵士だって含まれてる。だからこの世界にいて、誰かとか関わりを持つことは、戦争に加担すると同義だと」
するとアガイは
「ええ、そうね。生きるってのはこの上なく不条理で理不尽なの、その真の意味…人と人とが争うその戦いの意味をあなたたちは探しなさい。そしてどこまでも進みなさい。誰も見たことのないところまで…ね」
真の意味、それに二人はまだ気づいていなかった。否これから見つけるのだ。その先を…
すると先ほどまで騒がしかった辺りがぴたりと音を消していたことに三人は気づいた。
ソウスケ達は少しだけ疑問に思い辺りを見回すと、そこには惨殺された男たちが転がっていた。
ソウスケ達は焦って武器を構え警戒した。すると上の方から声が響いたのが近ずいてくる気配があった。
「誰だ!!」
どすのきいた声でアガイが言うと
「はぁ~怖い怖い。僕が一体何をしたというんでしょう」
と青い装備を付けた紺色紙の仮面をつけた男・・・ウゲツがソウスケ達の目の前に現れた。
「ようやく見つけましたよ~あなたたちを王都にはいかせません。オーリやセツの指示でね」
それを聞いた途端、ソウスケはウゲツの方を睨んだ
「その目は戦うってことでいいのかな?それじゃあ遠慮はしないよ。僕のメインディッシュになってくれ!!」
そしてモレウベリアのウゲツとの戦いが始まる。
二日に一回更新に戻します。毎日投稿は時間がきつきつすぎです!




