スーデリクの地を目指して
固まった空気が続く中、法王ラゲルは軽く咳払いをした後ゆっくりと話始めた。
「単刀直入に言い過ぎたな、順を追って説明するとしよう」
「アラカンの町が帝国に攻め入られると、その北側にある我々とスーデリク両国にとってこれ以上ない脅威になりえる。そこで、予てからこの二国との間に同盟を結ぼうとする動きがあったのだ」
「しかし、国同士で同盟を結ぶのはそう簡単なものではない。そこで我らは、橋掛かりになる人物が必要だと感じたのだ。テロ組織『モレウベリア』の撃退、帝国の進行阻止などの武勲と言っていいほどの経歴がある君達ならその人物になりえると」
するとスルマは
「どちらの国にも属していない人間が必要だったのだろう?だがそのスーデリクとかいう国はそれで納得しているのか?」
「そもそも、橋掛かりとしての人物としてソウスケ君やスルマ君を選んだのは私じゃない。スーデリクのアレクサンドル王自らが君たちを名指ししたんだ、今や君達はアラカンを救った英雄。若きスーデリク王からしても蔑ろにできないのだ」
するとルドラスが割って入るが如くラゲルに質問をした。
「では、何故ここにアイテラガのノーレン卿の姿があるのでしょうか?」
するとノーレン辺境伯自らが、ルドラスの問いに答えた。
「それは単純明快だ、アイテラガの今後が左右されるというこの状況に私が不在では居られんだろう。だからこそ、かつての傍付きにここまで来てもらったのだ」
すると、ついこの間まで食堂でご飯を作っていた人と同一人物か疑う程に険しい表情をしたアガイがその場に立った。
「彼女はアガイ・ギカト。平民の出ですが、私があった中で一番の腕利きです。彼女をソウスケ様方に同行させてもらいたい」
ソウスケ達からすれば特段気にすることでも、重要だともあまり感じていなかったが、これはアイテラガのこれからを左右する大事な局面でノーレン辺境伯としてはそこに介入する手札を探していたのだ。
「別に構わない、アガイさんにはたくさん世話になったしな。その依頼引き受けるよ法王様。英雄なんて大層な人じゃないけどやれることはやってみようと思う」
ソウスケは快くその依頼を引き受けた。
すると・・・
ティーン、ティーンとチャペルの音が聖堂中に、国中に流れた。
「おや、もうこんな時間になってしまいましたかな。今日はこんなところにしておきましょう。ノーレン卿や、ソウスケ君たちには宿を用意してある。聖堂を出て右に曲がったところだ、今日はゆっくりして明日にでも移動すればよい」
そこでその話し合いは解散になり、ソウスケとスルマは同じ部屋でお互いのベットに座り込んだ。
「王国か、興味はあったがまさかここまで御膳立てされて行くことになるとはな」
「確かにな、それにしてもびっくりだったな」
「何がだ?」
「アガイさんが元騎士だったことだよ」
「俺は何となくわかっていたがな、食堂にいた頃から癖が戦いを経験している風に見えていた」
「まじか…すげえな須流真」
するとスルマは自身のポケットからスマホを取り出し、何かを眺めていた。
「何見てるんだ?」
「聖堂の中だ、聖堂の中にたくさんの絵が描いてあったのを写真にとっておいたんだ」
二人が写真の中の絵を見ると、その絵には空から降ってくる神とその神に立ち向かう5人の英雄の絵だった。絵に描かれている神はどこか悪そうな顔をしていて、立ち向かう5人の背には光り輝く数多の神からの祝福を受けている。
ソウスケもスルマもこの絵を見ていると、どこか懐かしく思えてくるところがあるのか数時間も余韻に浸るように絵を見続けた。
その日の明朝。
ソウスケとスルマが支度をし、大聖堂へと向かうとそこにはアガイが二人を待っていた。
「久しぶりだね、顔つきが随分変わったじゃないか」
二人の変化に気づいたアガイの顔は少し柔らかく映った。
「私達が向かうスーデリク王国はここから4日程かかる北方の国。寒さに警戒しないとイチコロだよ」
そう言うとアガイは二人にお手製のマフラーを渡すと、二人と共にスーデリク王国へと旅立つのであった。
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「は?あいつらがスーデリクに行くってか、ほっとけ俺達の邪魔はしねえだろ」
空高くに跳ぶ飛行船の中でオーリはソウスケ達の動向を知ったが、あまり関心はなかった。
「そうとも限らないでしょ、彼らは僕たちの邪魔をすでに何度かしている。であれば、対策の一つも必要だと思うけど?」
ウゲツがしながら飛行船を操縦しながらそう言い返すと
「じゃあウゲツ、お前が行けばいいだろ。ただしあいつらはまだ殺さなくていい、それは俺のお楽しみだからな」
ウゲツはオーリの言ったことを聞き流して飛行船の高度を少しづつ落とした。
「では僕はここから王国に向かいます、あの人の協力がてらね。ではセツ、後は頼むよ」
セツが操縦室に向かいながらうなずくと、ウゲツは目元だけを隠すマスクをつけ走り去った。




