渦中。崩落したアラカン
炎がアラカンの町中を包んでいる。そんな中、火と火の間を潜り抜けるソウスケの姿があった。
火の中から魔物ともまた違う、独特な雰囲気を持った化け物が飛び出してくると、ソウスケはとっさに盾を出し防いだ。
それは魔物なんて生易しいものではなく、もっと生々しくそれで痛々しい見た目をした巨大な獣…
その大型の四足歩行の化け物には口がなく、それでいて目もないように見えた。
「なんだこいつは?」
ソウスケもその姿に顔を強張らせた、なぜならばその化け物の顔にあたる部分や足にはどろりとした血がこびりついていたからだ。
ソウスケは呼吸を少しだけ整えた後、盾を槍に変え低く構えると、化け物の足元を狙って走り出した。
すると化け物はソウスケの狙いに気が付いたのか、近くにあった建物の残骸から人ひとりサイズの岩を二十ほど投げた。
ソウスケは岩を避けながらも少しずつと化け物に近づこうとしたが、ここで化け物はソウスケの予想外の行動に出る。
「はぁ?」
化け物はあっさりと逃げ去ると、大通りに続く道を右に曲がった。
ソウスケがそれに続くと、なんと十匹もの魔獣の群れに遭遇した。
すると、先ほどの魔獣が投げた残骸とほぼ同じサイズの残骸をソウスケの周りに一瞬にして並べた。
「!?もしかしてこいつら、知性がちゃんとあるのか?」
ソウスケがそう疑問を持つのに、あまり時間はかからなかった。化け物同士の連携や、残骸を無作為に投げその隙に本命の瓦礫を拾って隠し持ったり、逆に知性がないと思う方がおかしいくらいに化け物に明確な意思をソウスケは感じていた。
「閉じ込められた?こいつらは一体何を…」
いくら〈光〉の力を使おうとも、この瓦礫で出来た牢屋から出ることは叶わなかった。
外は未だに爆発音と、町中の叫び声がまるで音楽の大盛り上がりの節のように暗い空に響く。
そこに、かなり大柄な人影が何匹もの化け物を屠った。そのついでにソウスケの入っていた、瓦礫の牢を破壊した。
ソウスケが外に出るとそこにいたのは、オーリなんて比べ物にならないほどの大柄な体躯な男がいた。
「あんたは…どうして助けた?」
ソウスケがその男に槍を向けると大柄の男は、強面の表情を見せると
「その方が大事だと思ったからだ、それに俺は役割を果たせなかった存在。ならばせめて失う者は少ない方が、誰にとってもいいだろう?」
「ふざけんな!あんたがそもそもあんなことをしでかさなきゃ…」
ソウスケは怒りをあらわにして言うと
「俺達にも事情ってもんがある」
「じゃあ、奴らはなんだ?クルメが言ってたよ、第三者の…他国の人間が起こしたかもってな」
「それは俺は知らん、アフィニティの連中が来るなんて想像だにしていなかった」
町と二人の心が同じく燃え上がると、遠くから気味の悪い笑い声が聞こえた。
「皆さん!ここまでよくぞ生き残っていました。おめでとう!そしてありがとう!僕たちの、覇道の礎になってくれてさぁー」
人が終わる声をソウスケ達が耳にすると、
「話はここまでだ小僧、あのイカレ野郎を止めなきゃならん」
「まてよ、俺も行く。あんたなんかに任せておけねぇ」
互いに目に火花を灯すと
声が聞こえてきた噴水のあたりに向かった。
(どうしてこんなことに…)
町は復興なんて考えられないほどに燃え盛った。それはまるで一月頑張って、町のみんなで作って彩ったこの町をあざ笑い貶すようだった。
「おい、この町を先に壊すってことは俺たちモレウベリアに喧嘩する。てぇことでいいんだな?」
ぎらついた眼で先ほどの声の主を睨むと、火の海の中心にいるとは思えないほど薄着の白い髪をした男は気持ち悪い笑顔をした。
「喧嘩…違うよ?これは蹂躙さ!君たちは蹂躙されてくれる人、そして僕は蹂躙する人さ!」
ソウスケは頭に血が上り、男を指さした。
「蹂躙されてくれてるだぁ?冗談じゃない!今俺がお前をぶん殴って止めてやる!」
「じゃああ、やろうか?僕はアフィニティ帝国先兵のアビア。みんな僕のかわいいペットを恐れてね?」
「気持ちの悪い顔しやがって、俺の邪魔をするなら逝ってもらうぜ」
大柄の男は小さな黒い棒状のものを空で振ると、二つの鎌が出てきた。
アビアは興味深そうに鎌を見て
「それがモレウベの技術…僕も欲しいけど、まずは殺さなきゃ」
大柄の男は舌打ちをして
「俺はモレウベリアのカゲト、帝国だろうなんだろうが吹き飛ばしてくれるわ!」
ソウスケは再び戦いに身を置く、何故このような状況になったか、それは今からおよそ3時間前に起こった事件が原因である。
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「さすがにすごい盛り上がりだな」
ソウスケは宿から街を見下ろすと、色鮮な街や笑顔の人々を見て幸せそうな顔をした。
「ソウスケ、早く行こうよ」
ラスレがニコニコしながら言うと、ソウスケはラスレと共に町に出た。
町の賑わいはここひと月の比ではなく、町の人々は今日という今日を心待ちにしていた。
ソウスケとラスレは町の中心で人だかりができているのを見つけると、その中にクルメやスルマ、そしてスクヨを見つけた。
「みんなここに居たのか、何を見てるんだ?」
スクヨは上の方を向いて指さした。
そこにはこの国の貴族達が、建国記念日を祝した言葉を述べていた。
「ありがとうございます、ノーレン様。それでは最後にこの国の公爵である、ダリオン・テンハイト。アイテラガ様、お願いします。」
ダリオンが重そうな腰をぐっと上げると、頭を輝かせ中心に立つと
「999年間、私たちアイテラガの国は他国に小さな国と評価をされてきた。だが、今ではアフィニティ帝国の帝都アクイラの人口100万を抑え、アイテラガのアラカンがこの世界で二番目の人口の町となった。これは私たちアイテラガの地に生ける民にとって、非常に栄誉なことである」
町の声がダリオンに賛同すると、ダリオンは続けて
「私はこの公国という名を捨て、アイテラガ王国として次なる共和国の首都の人口150万を追い越し、共に世界一の町としようではないか!」
会場が大いに盛り上がると、観客の中から一つの声が響いた。
「待ってください父上、公国の名を捨てるなどそんなことは許されません」
「アイムか…お前は勘当したはずだ、なぜそのようなことを急に…」
ここからアイムとダリオンとの言い合いが始まるかと思われた、しかしその時ダリオンの腹を貫く二つの鎌がアイムや町の者達の目に映った。
ダリオンはその場に倒れこむと、その後ろに大柄で爬虫類のような肌と目をした年を食った男が立っていた。
「父上?」
アイムもその場にいた誰も一瞬の出来事に困惑を隠せず、誰かの悲鳴が響くまで何も考えられなかった。。
「よし、これで任務一つ達成だな」
その男が去ろうとした時、その男を狙ったかのようにソウスケのよく知った顔の獣人がその男の腹を爪で突き刺した。
「サリ?」
忘れるはずがなかった、忘れられなかったその顔がソウスケ目の前に映った。
「うぎゃああああああああああ!」
サリは黒い靄を体から放ち、その後ろからぞろぞろとざっと百人のサリと同じ状態の獣人がこちらに牙を向けながら走ってきていた。
「殺しつくせぇ!」
どこからかそう声が聞こえると、誰かが火を放ちたちまち炎が立ち込めた。
ドカーンと何かが爆発を起こすと、ソウスケ達はそれぞれちりじりとなってしまったのだ。
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そして現在、ソウスケと〈モレウベリア〉のカゲトは帝国先兵のアビアと相対していた。
「俺は角居総助、みんなを守る。だからお前をぶっ飛ばす!」
ソウスケははっきりと開いた眼で、アビアをじっと見つめた。




