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異世界乱世  作者: Asuga
暗雲の章、緧の節。失った者達、失う者達
24/39

新たな決意、新たな戦場

 アイテラガ公国を西に抜けていった大海のさらに奥、クレイと名付けられたその地に一つの飛行船が止まっており、その傍からもくもくと煙が上がっていた。

 

 「あなたたちは一体何なんですか?」

 そう言ってオーリとウゲツの方を睨んでいたのは、彼らに連れていかれたルルであった。


 「説明できることは何もねえ」

 オーリは冷たくあしらうと、ウゲツも「面倒事はごめんだ」といわんばかりにそっぽを向いた。


 「あなたたちは敵なの?それとも…」

 ルル自身にあまりはっきりとした記憶がないものの、体の傷が塞がっていることからまだ彼らを敵と断定はしていなく見定めている段階だった。


 「俺達は、モレウベリア。安心してほしい、君の仲間だ」

 ルルの後ろからそう優しい声が聞こえると、彼女は何かに気づいたかのように後ろを見た。


 しかし、そこには飛行船しかなく人の姿など見当たらなかった。ルルは気のせいか?と自分を疑いかけたその時、飛行船の後ろから何か大きなものを背負って現れたセツの姿があった。


 セツの運んできた大きな荷物にオーリとウゲツは二ヤリと口元緩めたが、ルルはその大きな荷物に目線が行くことなど無く、ただセツの姿を見て何やら過去を思い返すような表情をした。


 「あなたは・・・セツ?」

 ルルがそう名を呼ぶと、セツは仮面の下から溢れん穏やかな顔でルルをまっすぐ見つめた。


 「そうだ、俺はセツ。もう一度言おう、君の仲間だ…と」


 「そのガキは知り合いか?」

 オーリはセツの傍に行き、つかれた声交じりにそう聞いた。


 「過去に一度だけ、奴隷商でな…」


 オーリは何か思い出したようにルルを見ると


 「もしかして、9年か10年かは忘れたがそのくらい前にお前が『奴隷商で顔見知りを救いたい』とか言って、仕方がないから一緒に行ってみたら既にそいつらは売れたとかほざいて俺たちが肩透かしくらったことがそう言えばあったな~」


 セツは軽く頷いて、ルルの方を真っすぐ見ると


 「あの時は救えず、すまなかった。そのせいでたくさんの苦労を掛けたろう…恨むなら好きなだけ恨んでくれ」


 ルルは暗い顔をすると、嫌になるような思い出がすぐ蘇った。


 奴隷商に売りつけられていた時の劣悪な環境を、または貴族に実験台として薬漬けにされた地獄のような生活を

 それでもルルは、あの場でセツたちに買われなかったことを恨んでなどいなかった。


 「いいんです。あそこでセツさんに買われなかったからこそ出会えた人もいますから」

 ルルには大事な人がいる。薬の影響なのか顔ははっきりと憶えてはいなかったが、その人との楽しい記憶だけは忘れないでいた。


 感傷にルルが浸っていると、その雰囲気をぶち壊すように大声が飛んで来た。


 「早く飯食えってんだ、せっかく僕が作ったんだ残さずそして温かいうちに!」

 

 「オーケイウゲツ。ほらセツとそこのガキ、一緒に食うぞ」

 半ば強引にルルの手を引いて、椅子代わりの大きな石に座らせると


 「命に感謝を、ただいま命をいただきます」

 ウゲツとセツは両手を掌で合わせ、目をつぶり一秒ほど祈った。


 その傍でルルは、彼らの行いに困惑していた。


 「変な習慣だろ?俺も長らく一緒にいるが、あれだけは理解できなくってよ」

 オーリはルルの傍でそう呟くと


 「きっと命を奪った動物に感謝しているんだと思いますよ、そのおかげで私たちは生きているんですから」

 彼ら全員で囲った中心にある鍋を見て、ルルはそう言った。


 すると、


 「そうだよ、命には感謝をそれが何より大事なのさ」

 ウゲツは先ほど大声を飛ばしたとは思えないほどやさしい声で言った。


 「命に感謝したところで何になる、今更俺達が命に感謝が言える立場かよ」

 

 「それは違うオーリ。確かに俺達はたくさんの人の命を奪ってきた、だがその命を軽んじたことなど俺はない」

 セツは真面目にそう言うと、オーリは黙り込んで仮面を雑に外してスープを皿によそい、ごくごくと飲んだ。


 セツもウゲツもオーリにつずいて仮面を外すと、ルルは驚いた。


 「セツさん…その顔は?」


 「まあ、そういうことだ。気になるならモレウベという、過去に存在した国を調べてみればいい」


 

 食事も終わり、セツとオーリが食器などの片づけをしていると、仮面を外したままのウゲツが少し離れて海を見ていたルルに近づき話しかけた。


 「やあ、ルルちゃんは僕たちのことをどう思う?」

 ウゲツは砂浜で座ると、立って海を見ていたルルの顔を覗くように見上げた。


 「正直怖いです。だってあなたたちは…人殺しですよ?」


 「まあね、事情があるとはいえ、本来なら許されてはいけない。間違っていたとしても、それで誰かを救えるのなら…」


 海風が吹いても心地よくなさそうにウゲツは風を感じた。


 「二人とも、飛行船に一度戻ってきてくれ。話し合いがある」

 セツはそう言うだけ言ったら、さっさと飛行船に戻ってしまった。

 

 「戻らなきゃだね、大変だ~」

 立ち上がりその場で伸びてふうっと一息つくと、ウゲツは飛行船に戻った。その後ろにルルは、すたすたと続いた。


 「作戦会議の前に一つだけ聞きたい。ルル、君もモレウベリアの一員となって、この世界の蝕む巨悪を共に倒さないか?」


 先ほどのウゲツとの会話や、彼らの命に対する考え、何よりセツの存在が決め手となり、ルルはこのモレウベリアの一員となることを決意した。


 だが、

 「でも一つ条件がある。私にもこの世界のことを教えてほしい」

 ルルなりにも考えがあり、これもその一つであった。


 その条件は全員が承諾した。


 「ああ、当然だ。お前には知ってもらう必要がある」


 ルルは知りたかった。どうして自分たちエルマベ族はこんなにもひどい扱いを受けるのか、どうしてセツ達がこの道を選んだのかを…


 「ちょっと待て、今連絡が入った。おそらくおっ(ぱじ)まったぜ」

 オーリが、ポケットから時計のようなものを取り出すとセツに見せた。


 「アイテラガはどう変わるのやらってとこですね~」

 ウゲツは髪をかき上げながらそう言うと、何が起きたのかさっぱりだったルルを見て説明しようとした。


 「アイテラガに僕たちの仲間の一人を送り込んで騒ぎを立てるんだよ、わざわざ今日に…ね」

 怪しくウゲツは微笑んでいた、しかしセツとオーリはそうでもなく、


 「ウゲツ、大至急アラカンに向かうぞ。緊急事態だ!」

 セツは焦りを見せながらそう言うと、


 「何があった?」

 

 「早くいけってんだよウゲツ、一秒でも急げ。アラカンの町に複数の〈黒の瘴気〉も持った奴らが出てきてとんでもないことになってるそうだ」

 オーリの表情からも、深刻な状況なのは読み取れた。


 「じゃあ、カゲトはどうなった?」


 「だから、早く動かせって言ってんだ!セツも俺も動揺してんだ。最悪の事態かもしれねえ、ウゲツ早く動かせ!」


 ウゲツは操縦室に急いで向かい、飛行船を動かした。


 「みんな酔うんじゃないぞー!」

 ウゲツが全員に聞こえるようにそう言った。


 (何が起こっているんだ、アラカンで一体何が?)

 ウゲツのその疑問は時を同じくして、アラカンの町の中心にいるソウスケと同じだった。



~~~


 (何が起こってるんだ一体?)


 見渡す限りの火の海、数時間前では綺麗だった空も薄暗い雲が浮かんでいた。


 (あいつらは一体どこに?)


 みんなとはぐれてしまった俺は、とにかく人を暴走した獣人から守っていた。


 「うがぁあああ」

 大きな爪が、一人の男性を切り裂こうとしていた


 しかしその爪はソウスケの刀によってあっさりと切られてしまうと、次の瞬間には獣人の首が静かに落ちた。


 (ごめんな、俺はお前たちを救ってやれない…)


 俺がとにかく人の救助をしていると、気を失った白衣の男を見かけた。


 「クルメ!無事か?」


 「これを無事と思えるなら眼科にでも行きたまえ、冗談はこれくらいにしてっと、手を貸そう角居君」

 大けがに見える傷を負いながらも、むくッとクルメは起き上がると火の海を見て顔をしかめた。


 「おそらく、第三勢力がいるね。それも獣人などではない他国の人間がね」


 (一体誰が?一体何時からこうなってしまったんだ。)


 火の海で互いに背中を合わせると、少しずつ迫ってくる獣人の影を見据えた。


 「いくぞぉおおおお!」

 ソウスケとクルメは火の海へ飛び込むのであった。

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