Incomingsモレウベリア!
「どう来る?」
ソウスケはルドラスと肩を並べ、じっと仮面の男を注意深く見た。
一方ルドラスは息を吞み、持っている弓と矢に少しずつ指を伸ばした。
そして仮面の男は、ルドラスから射られた矢を避けるでもなくその場で剣で切った。
矢は地面に粉々になり、風でその欠片はルドラスの頬を通った。
「嫌になるな~これでも研鑽を続けて30年、法王様の右手位だと自負してたんだがね」
ルドラスは分かりやすく嫌な顔をしながら、仮面の男の気を引こうといくつか質問をした。
「あんたさん名前は?そして目的は?そこからじゃないかい」
仮面の男は何も言わずそのまま片手で剣を構え、ものすごいスピードで迫ったが、瞬時にソウスケが同じく剣で受け止めた。
仮面の男はその事実に少し驚きながらも、剣に体重をかけソウスケの剣を少しずつと自分から逸らした。
ソウスケは自身の力で地面に衝突しそうになると右腕でバランスをとり、そこから起き上がらずに左手で仮面の男に剣を刺した。
かに思えた、
すでに仮面の男は剣の軌道上にはおらず、ルドラスの腹部に剣を一刺しと貫いていた。
「ぐぅっ!光の柱!!」
ルドラスがそう唱えると、仮面の男は上空を少し見上げた。
上空には白い光の円柱が何本も現れて、仮面の男めがけて落ちてきた。
「斬鉄!」
仮面の男がそう口ずさむと、たちまち男の体の周りに白いオーラのようなものが出て光の柱たちを剣で切り裂いた。
しかし、仮面の男が攻撃速度を追い抜くように光の柱たちのスピードも速くなり、ついには仮面が剣を握っていた右手を巻き込む形で柱が刺さった。
それでも仮面の男はルルをその場に置き、巻き込まれた右手を引き抜くと今度は剣を左腕に持ち替えた。
「スミイソウスケ、多分やれるぞ」
ルドラスがソウスケを起こしそう言うと、ソウスケは仮面の男の状況を見て勝てると踏んだ。
「あんたの名前は知らないが、ルルを返してもらう!そしてあんたを捕まえる!」
すると仮面の男は一瞬下を向いて、戦う構えをすると
「我々はモレウベリア、そして私はセツ。お前たちの敵だ。来い!」
セツは先ほどよりスピードは落ちたが、未だに目でぎりぎり追えるほどのスピードで一切二人は気を緩めなかった。
ルドラスは矢でセツを狙いながら、光の柱で攻撃を続けた。
ソウスケはセツの先回りをすると、一足一刀の間合いを取った。
「いい判断だ少年、ここよりもっと近づけば君の体は真っ二つだったろうさ」
セツは冷たくも、それでいてどこか柔らかくそう言った。
ソウスケは持っていた剣を投げたかと思えば、すぐさまその場から消えた。
セツは驚いた。なぜならソウスケのいたところには、ルドラスが射った矢が飛んできていた。急な出来事で動けず、左鎖骨のあたりに矢が刺さった
セツはその場で膝を突き矢を抜こうとしたが、そこにソウスケは追い打ちをかけた
「これでもくらえ!」
ソウスケは剣でセツの左腕を貫くと、その場で抑え込んだ
セツは痛みに歯を食いしばった。
「観念しろ、セツ」
「ああ、そうだな俺はもうだめそうだ」
セツは諦めたような声でそう言った。
ルドラスがほっと溜息をついたのも束の間、ルドラスは何かを検知しソウスケに忠告した。
「ソウスケ!そこから離れろぉ」
ルドラスの異様な取り乱し方に危機感を持ったソウスケは、取り押さえた手を退けてルドラスのもとへ走った。
するとそのすぐ後にソウスケの背後に、ドサッと大柄な男が空から現れた。
「よお、セツ。ボロボロだな~」
大柄の仮面をつけた男は、軽い口調でセツのもとに向かった。
「お前の方は片付いたのか?オーリ」
(オーリ…あの大柄の男の名か? あいつは…セツはさっき「我々」って言ってた、とするとあいつも・・・)
「まあな、んで、あいつらか?お前と戦ったのは」
大柄の男はゆっくりとソウスケの方を向くと、ニヤリと笑って
「セツ。お前は先に離脱だ、こいつらとは俺が遊ぶ」
セツはルルの方を一瞬見て、舌打ちをしながら消えた
「さてと、お前らちゃんと体力は余ってるか?俺とやりあう体力は残ってんのかよ?」
オーリは掌にある小さな黒い棒を空で振ると、たちまち大型の歪な形をした剣にした。
それを逆手持ちに持ち替え、オーリは戦う準備が整ったかを聞くようにソウスケ達を睨んだ。
「ソウスケよぉ。多分やつ、さっきのセツとかと同レベル…いやそれ以上かもしれねえ」
ソウスケとルドラスは、心臓の鼓動を高めながら互いにオーリを見た。
空が陰り始め、少しづつ彼らを世界が包む。それはまるで、彼らの戦いを神が見ているように。
「ゴングはねえ、始まりだ!!」
オーリはいびつな剣から緑色の風のようなエネルギーを、ソウスケ達に向かって放出するとたちまちルドラスに矢を射らせる隙もなく弓をへし折った。
「おいおい、これ高いんだぞ」
ルドラスが蹴りを入れようと足を回している頃には、オーリは六歩離れた位置にいた。
「法王国でもやっぱり金は大事か?まあ弓がなきゃ矢はかわいそうだもんな」
「同情のつもりかい?」
「さてな?矢も折っちまおうって話かもしれないぜ」
オーリとルドラスは、互いに一歩も譲らない姿勢で向かい合う。
ソウスケはそのうちに剣から槍に持ち替えると、自身の持てる力いっぱいで槍を投てきした。
しかし、矢はあの剣で防がれてしまった。
オーリはソウスケの方を見ると、少し驚いた顔をした。
「なんでお前がこの力を…と言いたいところだが、お前…例の一番だな」
(一番?何のことだ?いや、今はそれより死なないことが最優先事項だ)
ソウスケはこの戦いで、死ぬ可能性があることを実感していた。
今ソウスケの心を占めているのはルルを助けたい気持ちや、オーリを捕まえたいという気持ちではなく、ただオーリへの恐怖心だった。
ソウスケは、いかに自分がここで生き残るかそれを考えていた。
「ストライクバッシュ!」
ソウスケが大型の剣の側面で腹から突き上げられると、芥の如く吹き飛ばされた。
ソウスケは痛みに藻掻き、苦しんだ。
さらには地面接地の際口内を切ったのか、口から血が滴っていた。
「あ?今ので終わりかよ?」
ソウスケは、立ち上がる気力がすっかり失せていた。
(くるしい…痛い…あいつは俺なんかよりも強い…俺は・・・弱い?
なんで、自信満々で戦ったんだ。なんで、俺は人助けなんか。なんで、俺は戦いなんか)
「浮かばれねえな、こんな奴のために…」
オーリは大きな剣に力を込めて振り落とそうとした、がしかしルドラスが体でその剣を受けた。
ルドラスは自身の血で地面が彩られていく様をかみしめながら、自身の利き手ではない左手でオーリの頬に一発拳骨を入れた。
オーリはよろけてルドラスから剣を退けて、ゆらゆらと後退りその場で立ち眩みを起こした。
「嫌なとこにあたったな、ガッツあるじゃねえか。てめえ名は?」
「俺はルドラスだ、オーリ?だったか、俺は人は守る主義だからな。力のだし時ってのがあるんだよ」
ルドラスはハハっと少し笑って血を流し、その場に倒れた。
「ルドラス…よし覚えたぜ、これからもその服装を見かけたら思い出してやる。一足先にあいつに会ってきな」
オーリは大剣を大きく振りかぶると、ルドラスにたたきつけようとしたその時。
ガンッと鈍い音がした。
カタカタと武器同士が音を立てていた。
オーリの目の前には青い大きな盾があった。
オーリは少しため息をつくと、どこか呆れた声で
「お前は、どこまで行っても中途半端だな。要らない正義感、要らない危機感、そんなもんが何になる?」
「お前は中途半端だよ一番、お前みたいなやつはあの時こうしてれば、こうであったなら?そんなつまらん考えしかできねえ、一体何がそこまでお前をそうする?」
(要らない正義感、要らない危機感か、俺は…)
「俺は、その弱さも俺だ。だからその弱さも…俺は背負う。俺はそのために戦う、戦い続けて見せる!」
盾を刀に変えたときに映ったソウスケの目は、あの日の出の時と同じ眼差しをしていた。
「いい目をするじゃねえか、さあ来い一番!二回戦だぁ!」
オーリが声を荒げると、何処からか火の球が飛んできてオーリにぶつかった。
「あ?今いいとこなんだよ、誰だ?俺を邪魔するクソ野郎は」
遠くから、すたすたと余裕そうに歩いて現れたのはスルマだった。
「よう、角居。相変わらずだな」
スルマはソウスケに軽く挨拶すると、ポケットに手を突っ込んだままオーリに話しかけた。
「お前か、さっきから大声で叫んでいる不審者は、ここで捕らえさせてもおう」
スルマはポケットから片手だけ出し、〈光〉を剣に変え構えた。
「改めて、第二回戦始まり始まり~ってな」
オーリの口から、二回戦目が始まったとゴングが鳴らされた。
オーリは再び緑のエネルギーをためると、四方にエネルギーを飛ばした。
スルマとソウスケは分断をして錯乱を狙ったが、あまり意味はなかった。
「捕まえたぜ、待ってろあのイケ好かないやつのとこに飛ばしてやる」
ソウスケの首根っこを掴んでスルマ側へと投げ飛ばすと、スルマとソウスケは衝突した。
「バカが移る、早く退け」
「ハイハイ、馬鹿っていうなよ」
急いで戦闘態勢に入ると、既にすぐ目の前にオーリが迫っていた。
オーリが剣に力を溜めると、歪な剣が綺麗な青色に光った。
「インパクトドライブ」
エネルギーが放出され、その青く輝く剣で薙られた二人は先ほどとは比べ物にならないほどに吹き飛んだ。
「無事か!?角居!」
「まあな、吹き飛ばされ慣れてきた」
そい言って土ぼこりを払うソウスケ
「それならもっと投げ飛ばしてやるよ」
余裕綽々そうなオーリが二人に迫る
「ストライクバッシュ!」
オーリは大剣で薙ぐ、それを一度見ていたソウスケは刀で精いっぱい抑え込むと
「須流真!同時だ、こいつを何としても崩す!」
スルマは言われたことを一瞬にして理解し、剣を鎖に変えるとオーリの剣を包んだ。
ソウスケは刀を抜き、オーリに仕掛ける。
オーリは舌打ちをすると剣を捨て、ソウスケの攻撃に反撃できずにいた。
スルマは鎖を槍に変えると、ソウスケの邪魔にならないようオーリの背後から仕掛ける。
「ガキども、やるじゃねえか」
オーリは少しニヤリと笑ったが、さほど余裕は見られなかった。
剣と槍でオーリを追い詰める二人、二人には確かな勝機が見えていた。
(オーリには勝てるかもしれない、絶対に逃走なんてさせない)
二人は攻撃を畳みかける、オーリは少しづつ苛立った顔をしていった。
「このままじゃ本来の目的に支障が出ちまう、とりあえずこいつだけはもらってくぜ」
そう言うとオーリはルルと剣を回収し、その場を去ろうと近くの住宅の屋根をつたった。
「ぜってぇ逃がさねえ、須流真行くぞ!」
ソウスケとスルマは自覚無しに、地面から屋根に跳んだ。二人は既に、この状況にさほど疑問を持ってはいなかった。
二人が追ってくるのに気づいたオーリは、声を荒げて
「うっとうしいぞガキ共、邪魔すんならぶっ飛ばす」
「スパイラルバースト!!」
あたりの家を巻き込む形で、ソウスケ達に向かってエネルギーを放出した。
ソウスケはバランスを崩すと屋根から落ちてしまったが、スルマだけは何とかバランスを崩さず屋根に残っていた。
「結構良いの入ったろ?まだ立ってるのか…お前、名前は?」
「須流真だ、お前こそだろう?」
「だな、俺はオーリ。なるほどスルマか」
「?」
スルマが少し戸惑っていると、空から小さな飛行船が飛んできた。
「おっせえぞ、ウゲツ」
空に大声で怒ると、飛行船から発狂した声が響いた。
「今さっき呼びつけて遅い?むしろ早い方だろうが!おいて行かれてもいいならそう言ってろぉ!」
「わりい、乗せてくれ」
素直にオーリが謝ると、飛行船はオーリを回収した。
「じゃあな、スルマと一番!思いのほかヒヤッとさせられたぜ」
オーリの声は少しづつ遠くなっていった。
ソウスケは地上からその光景を目の当たりにして、悔しそうに歯を嚙み締めた。
「オーリ…か、あいつ何を隠しているんだ?」
スルマの目からはオーリが実力を隠しているように見えて仕方がなかったようで、スルマも悔しそうにオーリも飛行船も溶けて見えなくなった空を眺めた。




