捜索、矢の雨
緧の節ももう終わりへと差し掛かった30日目の昼、俺たちはパレードの準備が終わり部屋でゆっくりしていた。
「須流真達は大変そうだな」
スルマとクルメはソウスケ達とは違い、今なお働いていた。
「それでも明日で終わりなんだから、明日はみんなでまわろう」
ラスレは寝ぼけながらそう言っていた。
ソウスケはラスレをベッドに戻した後、スクヨの部屋に立ち寄った
するとルルとスクヨはソウスケを待っていたかのように、空いた扉を見てにこにこしていた。
「角居君が来たね!ルルちゃん」
するとルルは猫のような耳をピコピコさせながら、ベッドの上でソウスケをじっと見ていた。
「ソウスケ、スクヨ、あたしここから出て行ってお母さんを探しに行きたい」
ルルは元気よく宣言した。しかし、二人の反応はあまり良くなかった。
「俺は反対だ。ルルの安全のためにそれだけは譲れない」
ソウスケの言葉にスクヨも賛同した。
「昨日手紙が来たの、そしたらお屋敷に戻ってくればお母さんとまた暮らせるって書いてたのだから...」
ソウスケ達はさらに渋い顔をして反対した。
「ルルもしそれが嘘だったらどうする?今度その屋敷まで俺と一緒に行こう、そうして俺と一緒にお母さんを見に行こう」
ソウスケの言葉に納得したのか毛布にもぐって、うんと答えた。
ソウスケは少しほっとして、スクヨと共に少し果物を買いに行くことにした。
「リンゴ安いな~この量で113ラトかよ」
そう言ってソウスケは、袋いっぱいにしたリンゴを苦しそうに運んでいた。
ソウスケ達は少し町の中心に近い屋敷の前を通ると、そこで不思議な像を見つけた。
そこには英雄アリベールと下に書かれているとても大きな像だった。
何を隠そうここはこの公国を収める、ダリオン・テンハイト・アイテラガ公爵の屋敷だったのだ。
「この国の主の屋敷ってことか、つまりこの人が英雄の子孫ってことなのかな?」
スクヨは像を見て、それから屋敷を見てからそう言った。
「まあそうなんだろ、1000年近くも続く家ってのもすごいもんだな」
ソウスケは感心しながらその場を去ろうとすると、
「ちょっと待ってくれー」
と屋敷の外の庭から声をかけた綺麗な恰好をした青年がいた。
青年はとてつもないスピードでスクヨに迫ると、目を輝かせて前に立ちふさがった。
「どちら様でしょうか?」
スクヨはたどたどしくそう聞くと、青年はしまったと顔にして服を整えた
「僕はアイム、英雄の子孫にしていつかこの国を担う者である!」
自信に満ちたその表情はソウスケ達を混乱させた
ソウスケとスクヨは苦笑いしながらその場を去ろうとすると、アイムはスクヨの手を掴み引き留めた。
「待ってくれ、君に伝えたいことがあるんだ!」
アイムはスクヨの手をそのまま自分の懐にもっていく
「一目惚れだ。僕をこれから支えてほしい」
キメ顔でそう言うと、スクヨはぞっとした顔をしてソウスケの傍に戻った。
「そんな…まさかライバルがいるなんて!君、僕と決闘しないか?彼女を取り合う正々堂々とした決闘を」
アイムはソウスケを自分と同じだと勘違いしたようだった
「あの人なんなの?さっきから妄想ばっかりで怖いんだけど…」
スクヨはこの一瞬でかなり参ったようで、アイムの顔をすでに見てはいなかった。
「アイムさんだっけ?彼女は俺の仲間なんだ、取り合うとかそんなのは違うだろ」
ソウスケが少し反発すると、アイムは顔を少しだけ強張らせた
「仲間の一人くらいだったら僕に関わらないでくれ、これは僕と彼女の問題だ」
「私の問題でもありません、私は角居君や須流真君たちの仲間なんです。そっちこそ構わないでください」
スクヨは必死にそう言ったが、アイムにはもはや聞こえてはいなかった。
「炎の矢」
何本もの火に包まれた矢が、ソウスケ一人を狙った。
ソウスケは矢を何とか避け、片手に一本くらいながらも攻撃はしないでいた。この状況でこの国の重要人物と戦うことは危険と判断したからである。
するとそこに大きな鉄板が、アイムの頭部に直撃した。
アイムは声を殺すほどの痛みに藻掻いていた。
「大丈夫かお前ら」
そんなことを言いながらソウスケに手を差し伸べたのはスルマだった。
「よかったのかな~国の重要人物だぞ?俺知らないからな」
「知らんな、すべてこいつが悪いんだろう。こんな目立つところで魔法を使うなんてな」
「とにかく一旦逃げよう」
三人はひとまずこの場から去ることにした。
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スルマと途中で別れ、宿に二人は帰った。
宿の部屋に戻ると、スクヨとソウスケはあることに気づいた。それはルルが居なく、窓から出た形跡があったことだ。
二人は焦りながらもどこかでその可能性があったなと思い、町に再び出てルルを探しに宿を出るのであった。
ソウスケとスクヨは町にルルのことを聞いて回ってみたものの、獣人差別のようなものが渦巻くこの社会では誰もルルのことなど見てもいなく、気にも留めていなかった。
あれからたぶん一時間は走ったと思う。
町中までは見切れていないが大通りやルルと会ったろ時まで見けど、ルルの影も形もなかった。
俺はふと周りを見渡すと、そこは先ほど逃げ出した公爵の豪邸だった。よく見ると涙目のアイムがいた。
「君はさっきの!?どうしてくれるんだ!先ほどの決闘で君がズルをしたから恥をかいたじゃないか」
「そのせいで父上から‐‐‐」
「あんた子供を...獣人を見なかったか?」
っと、アイムの自分話を遮る形でソウスケはアイムに聞いた。
「見たよ、獣人のホームレスにしては小綺麗な服を着ていたからね、よく覚えてるよ。西の方に走っていったよ、それより‐‐‐」
「ありがとう!この礼はまた今度」
ソウスケはアイムの話を聞くな否や西へと走り去った。
「ちょっと待てよ!なんだったんだ?」
アイムはその場に取り残されて呆けていた。
それから今度は三十分ほど経った頃、街はずれまで出かかったその場所で俺は信じられない光景を目の当たりにした。
そこにはリーエルの町でギルドの受付をしていたあのラクが、ルルに虫のようなものを食べさせようとしている光景が目に焼き付いた。
「何やってんだ、やめろラク!」
ソウスケは自分でも驚くほどの低い声でラクの名を呼んだ。
「!?」
ラクは一瞬にして状況を把握し、物陰に何かの合図を送ると、ルルを捕まえたままソウスケの方を向いて無表情な顔を見せた。
「助けて、ソウスケ」
ルルが大声でソウスケの名を呼ぶと、ソウスケは悔しいような怒ったような複雑な顔で、
「どういうことだ!信じたくなかったのに...なのにあんたは!」
俺はあの時須流真に一つの警告をされたんだ「見られている」と、この繁忙期にギルドの人材交換なんてあるわけないのにそれでもあの町の人だから信じていたんだ。いや、信じたかったんだ。
「既に気づいていましたか。あなたじゃないかと思っていましたよ、獣人を匿おうとする愚か者は」
すると物陰から武装したローブの白装束の男たちが現れた。
「その恰好ルドラスの仲間か、絶対に許さねえ!」
ソウスケが動こうとしたその時、ソウスケの足に激痛が走る。足には矢が一本突き刺さっていて、その矢にはやけに凝った装飾が入っていた。
「また会ったなガキ、大人のお仕事の邪魔かな?」
ソウスケの来た道の奥から、声を張ってそう言ったルドラスの姿があった。
ソウスケは痛みに耐えながら矢を抜き、ルドラスの方を見据えた。
「後ろからなんて卑怯じゃないか、あんたたちは本当にろくでもない連中だな、ルルは俺が守る。」
「ひでえ言い方だな、一発で仕留めなかっただけ感謝しろよ。さてと、なんの様かな?スミイソウスケ」
ルドラスは顔を少し見せたかと思えば再び帽子で隠した
「獣人はな、生きてるだけで迷惑なんだよ。獣人が暴れるせいであちこちの国で被害が出てるんだぜ」
前会った時からそうだけど掴みどころがない、クルメと同じで少し恐ろしいというか…
そんなことを考えながらルドラスに怒りをぶつけた。
「殺す殺さないをどうしてあんたが決めるんだ!あいつらは生きてるんだッ、それは少し勝手が過ぎるぞ」
ソウスケはゆっくりと〈光〉を弓と矢に変え、ルドラスめがけて構えた。
「それは、そういうことでいいってことか?まったく聞き分けのない子供だな、しょうがない躾の時間だ」
お互いに弓を構え、どちらが先に放すかの戦いになった。
周りの白装束の男たちは、冷や汗をかきながらその場に立ち止まって戦いを見ていた。するとラクが白装束の一人にこそこそと耳打ちをする。
「場合によってはこの場で…いいな?」
白装束の男の一人は頷きその場を離れた。
ソウスケとルドラス互いに緊張が走る
白装束の男が立ち去った物音と同時に弓を放し矢をソウスケは避けようと動くだがしかし、ソウスケの矢はルドラスに叩き落され、ルドラスの矢はソウスケの手の甲に突き刺さる。
「命中だな、矢を射るのに躊躇ってどうするよ?ガキ、戦いってのはな、ためらった方が負けるんだぜ」
ソウスケは先ほどの痛みと重なり、その場で動けなくなった。そこにルドラスは一発軽い蹴りを入れ、ソウスケはその場に倒れた。
「大人になれよガキ、そうじゃないと死ぬぞ。これは忠告だ」
ルドラスはそのまま、ラクが捕まえているルルのもとに近づいた。
「獣人、救済と浄化をそして安寧を。此処で死んじまいな」
ルドラスが胸元からナイフを取り出すと、ルルの首めがけて振り落とした。
「やめてくれー!」
ソウスケの声を聴くはずもなく、ルドラスはナイフを振り落とした。だが、
「参ったな、間違えて胸に刺しちまった。ガキぃ、お前がでけえ声で言うからずれたじゃねえか」
ソウスケの目に映ったのは、ルルの胸に突き立ったナイフだった。
「ルドラァスゥ、ぜってえ許さねえ」
ソウスケは体を無理やり動かし、弓を剣に変えた。
「子どもは大人の仕事ぶりを見ていろよ」
ルドラスは呆れながらソウスケを一蹴し、ルルからナイフを抜いた。そして今度は切り裂くつもりなのかルルにナイフを首にあてた。そのまま切り裂く、その時ルドラスの腕からルルが消えた。
「ッ!なんだ?」
ルドラスとソウスケの間に一人の人影があった。
「お前たち人はつくづく愚かだ、彼女は我々が引き預かろう。そしてお前たちは俺が片付けよう」
白銀の髪をたなびかせた男は、自身の持つ太刀の長い刀のような剣を腰から出すと、そのままルドラスや白装束の男達を仮面の下からじっとのぞいた。
「その武器、そしてその仮面もしかしてモレウベの…なるほどな」
ルドラスが気味何か腑に落ちたような顔をすると、自身の武器を構えた。
ルドラスがナイフを投げた瞬間に男は消え、あっという間に白装束の男たちを殺した。そしてルドラスに「次はお前の番だ」と、言わんばかりに剣を向けた。
「おいおい、子供持ってあの早さかよ。まさしくバケモンだな」
ルドラスの顔には余裕は一切なくなっていた。
なんなんだあいつ、ルドラスがこんなに余裕がなくなってるなんて初めて見るぞ。体はぎりぎり動く。逃げるか?いいやルルを救う、だから!
「ルドラス、ルルを助けるのを手伝え。あいつは今、人を殺した。何の躊躇いもなくな、あんたはなんやかんやあったけど、俺のことは殺そうとしなかった。其処だけをを信用する」
ソウスケは痛みに耐えながら立ち上がりそう言った。
「ガキ、お前騙されやすいだろ。いいぜ乗った」
この場に新たな戦いが始まる。




