密談。クルメの目から映る四人
ソウスケは昨日夜から力について考えていた。
守る力、俺はこの力で仲間を守ったらいいのか?でも守られる連中じゃないよな。
そんなことをひたすら考えていた。
「彼は何をしているんだい?」
クルメは気味の悪そうな目で、ソウスケを見る。
「しらんな、夜更かしでもしたんじゃないのか」
スルマは呆れてそう言った。
「みんなしっかりしてよ、今日はアラカンの冒険者ギルドで情報集めするんだよ?愛想よく、そしてスタイリッシュに、それがモットーよ!」
「テンション高いな救代は」
総助は眠たそうに言った。
ソウスケ一行は、今日も元気にやっているようだ。
「ここがギルド?」
スクヨたちが見上げると、そこに合ったのは巨大なギルドだった。
「でっかいな、やっぱりアラカンって凄いんだな」
ソウスケ達は一度唾を飲み、中へと入っていった。
「ようこそ、冒険者ギルドへ」
中に入ると一人の女性がソウスケ達にそう言った後、一行は受付に連れていかれた。
「今日はどのような御用でお越しになられたのでしょうか?」
受付の男が透き通る声で言うと、ソウスケ達は獣人の情報を聞き出すことにした。
「そう言う理由で、獣人を探してる。何か些細なことで言い教えてほしいんだ」
しかし、
「我々に言われましても、獣人のことはわかりません。お力になれず申し訳ありません」
受付の男は軽く頭を下げた。
「諦めるしかないだろう、獣人の情報少しは手に入ると思ったんだけどね~」
クルメはじっと掲示板を見ながらそう言った。
「ですが、一つだけ獣人とは関係無いかもしれませんが、盗伐願いが出されているものがありまして...」
「それがこれか、アラカンの町はずれで黒い化け物を見た...か。確かに獣人と断定はできないが可能性はあるかもしれない、私たちが確認し場合によっては撃退する。それでどうだろうか?」
クルメは少し怪しげな雰囲気を出していた。
「本当ですか!?ありがとうございます。正直参っていたんですよ、こんな大事な時期に化け物騒動なんて。」
受付の男は、ほっとした表情をしていた。
「何か忙しい時期なのか?」
スルマは男にそう問いかけた
「来節は建国記念日ですからね、祝い事の準備も忙しくって」
男は少し笑ってそう答えた。
「任せておけ、俺たちが化け物騒動を終わらせてやろう。お前たちは報酬を用意しておけばいい」
スルマが飛び出すと、ソウスケ達も後を追うようにギルドから出ていくのであった。
「おい須流真、場所がどこか分かってるのか?」
ソウスケがそう言うと、スルマは掲示物の紙をむしったものを掲げた。
ソウスケ達は走って向かった。
「ここがその外れか、なんだか気味が悪いな」
スルマがそう呟くと、後を追ってきたソウスケが緊張した顔しながらこう言った
「いるぞ!」
お互いに背中を合わせ、それぞれ剣と、刀を出す。
「シャー」
現れたのは、町で会ったあの獣人であった。
「やっぱり...」
ソウスケは少し苦しそうな顔をしながら、間合いを取る。
「角居、奴だけではないぞ!」
スルマが大声で言うとソウスケは振り返り、切りかかろうとしたもう一体の獣人に気づいた。
ソウスケは刀で受け、足で蹴った。
周りに少しずつ獣人たちが群がってくる。
「何体いるんだ?」
「さてな、どうする話し合いでもしてみるか?」
「これは...無理かもな」
スルマとソウスケは背中合わせにそう語り合う。
「ならここをまずは突破するぞ、覚悟はいいか角居!」
「ああ」
ソウスケは深い声で答え、決心をしてスルマと同じ方を向き突撃した。
スルマは容赦なく獣人たちを切り裂き、道を開ける。しかしソウスケは峰打ちにとどめ、周りが獣人に囲まれてしまった。
「多い、でも俺にはやっぱり傷つけるなんて」
そこに高速で近づく何かがいた。
「一ッ閃」
その声が聞こえた頃には獣人は体と同を切り離された。
「すまない、せめて安らかに」
ラスレは慈悲の目で獣人たちの死体を見た。
「ラスレ、ありがとう」
「ソウスケ覚悟を決めるんだ、彼らは正気ではない。せめて一瞬でやるべきだ」
ラスレがそう話をしていると
「キルサンダー」
白いエネルギーが獣人たちを焼く
「君らだけ先に行くなんてつれないじゃないか、私も戦闘で試したいことがあるんでね」
クルメは、スクヨとともに歩いてやってきた。
「勝手にやってろ、俺はお前の相手をしてやろう」
スルマが剣をあの獣人に向ける
「グワアアア」
獣人は既に正気を保っていなかった。
「角居のやつが逃がしたといっていたが、俺から逃げられると思うなよ」
スルマは剣を槍に変え、構えた。
獣人は、構うものかと走ってくる。
「来い、此処を貴様の墓場にしてやろう」
スルマは槍で突いた、槍は獣人の胸に突き刺さった。そこでスルマは、槍を左手に持ち替え右手で獣人の顔を膝に近づけぶつけた。
「ウラアアアアア、ヲトレグトヤザニェイルセ!」
「何を言ってるのかわからんな、終わりだ」
スルマは突き刺した槍を剣に変えると、そこから剣を刺し込み切り裂いた。
「雫の剣」
「キルサンダー2nd 、いいね決まった!」
ラスレとクルメは周りの獣人だったものを倒し、ソウスケの方を見た。
「苦しかったかもしれない、俺にはわからないのは変わらない。でも、自分が自分でなくなっちまったなら、せめて俺が送ってやる。そしてその罪は俺が背負う!」
そうだ、何のための力かすっかり忘れていた。これは誰かを助けるためだけの力じゃない、俺が背負う罪の力だ。
「じゃあな、セイヤー!」
ソウスケは、薙刀で獣人を大きく切った。ソウスケの顔はどこか曇っていて、それでいてどこか晴れやかでそんな複雑な表情をしていた。
その日の夜
「なんだお前はここにいたのか?」
スルマがそう言った先にいたのは、ソウスケだった。
「何時まで死体を見ているつもりだ?ほかの連中はもう宿に帰ったぞ」
「お前は納得してるか?」
ソウスケが唐突にそう聞いた。
「この獣人のことか?」
ソウスケは小さく頷いた
「さあな、正気を保てない種族なら仕方がない。町の連中も、だからこいつらと関わろうとしないんじゃないか?」
スルマは冷たくそう言った。
「それでも命を奪わなくちゃならない選択しか残されてないのは、どうにも納得できないんだよ。俺は誰かを守るために力を使おうと思った。でも実際は他人の命を奪ってしかいないんだ、俺もあの司教と何ら変わりない存在なんだなって思うとどうにも...」
「いいんじゃないか、納得などしなくても。俺はそれもまた強さだと思うし、命を奪ったのもそうお前が決断したのならそれでいいんだ。納得できないのならそれを突き詰めろ、そうすればお前はもっと強くなる。角居、もっと強くなれ」
スルマはソウスケの胸ぐらをつかみそう言った。
「ほんと、お前の言ってることはわかんねえよ。でも俺のためにここに戻って来てくれたことは事実だ、だからありがとう。俺、もっと強くなって見せる。強くなってみんなを守る」
「それでいいんだ、お前はそれで」
スルマは町へ戻ろうと歩く、ソウスケはそのあとに続いてゆっくりと歩いた。
「二人とも、気持ちはすっきりした?」
スクヨは二人と手をつなぎ、そう聞いた。
「ああ、俺もっと強くなって見せるさ」
ソウスケは心の靄が少し晴れた様な、そんな顔をしていた。
そしてスルマはふっと笑った。
俺はこの時のスルマの表情が忘れられなかった。なぜなら今まで一緒にいた中で、一番穏やかな顔をしていたからだ。
一方その頃、宿ではクルメとラスレが話し合っていた。
「ラクレス・フォン・アルダー君、私がこの名で呼ぶってことはわかるよね?」
「あなたは一体何を考えているんですか?僕を帝国から逃がしたり、ソウスケを敢えて戦闘に狩りだしたり、一体何を企んでいるんだ!」
ラスレは大きな声で言う。
「まあまあ、落ち着きたまえ。君を帝国から逃がしたのは、その方が利があったからね」
「ソウスケ達を騙し続けて、彼らに一体何をさせるつもりだ?もし危害を加えようものなら、僕がこの手で切る」
ラスレは剣の柄をそっと持った。
「私は、彼らに危害を加えるつもりは全くないね。私は彼らの成長と選択を見守っているんだよ」
「成長?どういう意味だ?」
ラスレは警戒を緩めず、クルメを一挙手一投足を見張った。
クルメはそんなことをするラスレを馬鹿にしているのか、ベッドに座り込み仰向けになって寝た後すっと体を起こして、まるで子供のように遊んでいた。
「彼らの力のことだよ。まずは角居総助君だね、彼はあの力を使いこなし、遂には鎧や服などに変化するに至った。正直驚いたよ、そもそもあれはイメージ力の世界だからね、何もないところから武器が出てくるなんて誰も考えないことを彼はやってのけた。本当にすごいよ」
「源須流真君は気持ちが強いね、イメージ力の世界で負けないという執念があればあれほどまでに強くなれるのかと、とても高鳴ったよ。だが彼はまだ角居総助君の真似事をしてるだけに過ぎない、これから彼が自分で見つける新たな力に注目ってとこだね」
「最後に赤城救代君、彼女は最初にあの力を使えたというのが実に素晴らしい。だが固定概念にとらわれすぎて、自身の力を過小評価しすぎている。兄妹ってのは似るもんだね~本当に」
「やっぱり何かに利用しようとしているのか?ならば僕がッ」
一瞬にしてラスレが消え、次に姿を現すとクルメの首めがけて剣を振っていた。
カキン!っと鉄と鉄がぶつかり合った音がした。そこには宙に浮いた剣がラスレの一撃を防いでいた。
「平和にいこうラクレス君、私はただ彼らが超人になるのを待っているんだよ」
クルメはそっとベッドから立ち、少し乱れた服を直した。
「超人?」
「此処も末人共しか居ない悲しみの地であるが、彼らは唯一の希望だ。彼らは神に匹敵するほどの力を持ってる、そして私の良き理解者になってくれるはずさ」
クルメは高笑いをした。
「本当に彼らに危害を与えないのか?」
「約束しよう、今のところ彼らと保とう分かつことはあり得ない」
ラスレはため息をついた。
「今は聞きたいことはそれだけだ、彼らに手を出したら僕が許さない。」
ラスレはそう言って部屋から出て行った。
「彼も難儀だね~」
クルメは口から笑みをこぼしながら、外を眺めていた。
ラスレが部屋から出ると、そこにはソウスケ達がいた。
「ラスレどうしたんだ、びっくりしたぞ?」
「ソウスケ達が帰ってくるの遅いからちょっと心配だったよ」
ラスレはケロッとそう言った。
「やあ!みんな帰りが少し遅かったね、もう寝るのがおすすめだよ」
クルメはそっとラスレの方を見ていた。
しかしラスレはクルメの方を一切見ることはなく。
「僕ももうだいぶ眠いなあ、今日はよく眠れそう。戦いの後って寝つきがいいんだよなあ~」
満点の笑顔で言うラスレの姿は、少し不気味にクルメの目に映ったのだった。




