初心者向け動画と攻略WIKI
「むぃ~~~」
奇声を上げながらダンジョン初心者向け動画を閉じる。
ここは妹の部屋。
ピンク色が中心の飾りつけで僕から見たら
落ち着かない感じのデザインだが綺麗に片付いている。
なんで自分の部屋で見ないのかといえば、
ダンジョンに入る前に使っていたPCが既に骨董品の性能になってしまっているからだ。
見ていた動画の内容は
掲示板での情報をまとめサイトが整理した物をベースに
ドローンを使ってダンジョン内で配信が可能になった後に
録れた記録映像を添えていったもののようだ。
解説の内容は自分の知識と一致する部分もあるけど
間違っている部分もある。
ダンジョンが出来てから手探りで起きた現象を寄せ集めて推測したものと
先駆者から教えてもらったものでは精度が違うのは当然だ。
「なんとかせねば……」
椅子の上で胡坐をかきながらくるくる回る。
無意識に唇が尖る。
「ねぇ、お兄ちゃん。なんでそんなに仕草が子供なの?」
初音がベッドに寝っ転がったまま聞いてくる。
「それなー」
教えてもらったことを思い出しながら喋る。
「魂と体の間に精神ってのが出来るらしいんだけどなー。
それは潤滑油みたいなもので体と魂に合わせたものになるらしいんだよ。
魂のやりたいことや体のやりたいこと。
どちらかがやりたいことを優先して
片方がやりたくないのに無理に続けちゃうと
精神が澱んで悪影響があるんだってさ。
だから自然にふるまうとこんな感じになる」
「なんか概念的なお話に聞こえるけど、誰に教えてもらったの、
ダンジョン女神ちゃん? 」
初音半身を起こして聞いてきた。
「誰だ、それ」
「ダンジョンで願い事を叶えてくれることや配信ができるようになったことを
告知したの人の通称。銀髪。検索したら動画あるよ」
「そんなのあるんだなー。銀髪なら多分メイちゃんかもなー」
ダンジョン女神ちゃんで検索してみる。
先日まで顔を合わせていた人の顔が写る。
僕は手を合わせて頭を下げる。
「大変お世話になりました。また遊びに行きますね」
妹が頬を上気させて言う。
「お兄ちゃんは解説配信をやるべきだと思うの! 」
熱量がすごい。
「やるとは思うけどほどほどにのんびりとなー」
一方の僕は冷めたものだ。
一気に情報を出すようなことはするなと言われてる。
世界が混乱するし何より自分たちと同じ道のりを
歩んでは欲しいわけじゃないんだそうだ。
技術のとっかかりを得たときにこの世界の人たちが何を行い何を作るのか。
そういうのを大事にしたいと。
ただ破滅しそうな方向に行った時だけはきちんと情報を出せとも言われてる。
メイちゃん曰く
「私たちは世界の発展攻略WIKIじゃない」
だそうだ。
「むぃ~~~」
奇声を上げて椅子ごとくるくる回る。
勝手に唇が尖っていく。
これはなんか癖になりそうでよくないな。