焚火ゴブリンと3階
「あ、なんか暗い、嫌な予感」
3階へと下りながら初音がいう。
「うわ、きちゃいましたか」
綾乃さんが言いながら抜けた先は星空輝く夜のオープンフィールドだった。
地面に草が生えており風で揺れている。
後ろにはアーチだけが残っておりそこから登り階段が見えるという不思議な光景だった。
「これ集落あるかもしれないじゃん、ほどほどにして戻ろうか」
初音がいうと綾乃さんが続ける。
「無理は禁物、ですね」
「うん、ゆっくり進もうね」
草の中にある獣道のような細い道に合わせてゆっくりと歩いていった。
順番は変わらず。綾乃さん、初音、ドローン、僕。
ドラクエだ。
【やっばいくらい星が綺麗だな】
【この光景を見てダンジョンを作ったやつと戦争できるって思ったやつはおかしい】
【ダンジョンは潜るより見る派だけどこういうのは行ってみたくなるわ】
【あー、明日仕事行きたくねぇ。このままずっとこれ見てたい】
【またキャンプ配信して~】
コメント欄はのんびりしてる。
「草の中にスライムいる場合があるからそれだけ注意ね」
それだけ助言する。
「広場型だと大声出すと見つかる場合があるからチェストが出来ないんですよね。」
先頭を綾乃さんが慎重に歩きながら言う。
あれから何度か戦闘を経た後でちょっとだけ息が荒い。
「懐中電灯が欲しい」
「灯りを見られてゴブリン寄ってきますよ」
「分かってるけど」
そんなやり取りをしているのを後ろから見ながら歩いていると
草の道が開けた先で焚火の前にゴブリンが座っている光景が見えた。
まだ遠く気付かれてはいない。
見覚えのある光景だった。
「撃ちます」
初音がボーガンを構えようとしたときに
「初音ちゃん、ストップ」
僕が小声で制止をかけた。
【は? 】
【なんで止める? 】
【??? 】
コメント欄が疑問で満ちる
「草の中から静かに見てて。お客さんにもよく見れるようにして」
皆で草むらに隠れた状態で初音がドローンのカメラの向きを焚火に向いて座るゴブリンに変えた。
しばらくして草むらからスライムがゆっくりと2匹。
ゴブリンに近づいていく。
ゴブリンが慌てて下がり片方に石を拾って投げつける。2度、3度。
そうして潰れたスライムから出た体液をナイフに塗り付けたゴブリンは
そのナイフを残ったスライムに突き刺した。
スライムの体が2体ともエフェクトを伴って消え、ゴブリンは焚火の脇に座り直す。
そんな出来事が見えた。
「何これ? 」
初音が不思議そうに問う。
「昔に女神さまがみた光景じゃないかな、多分。その再現」
【!?】
【ダンジョン女神ちゃん! 】
【ぺろぺろぺろぺろ】
【ぺろぺろぺろぺろ】
【ぺろぺろぺろぺろ】
【モンスターも同士討ちするんだな】
「何の意味があるんでしょう」
今度は綾乃さんが問うてくる。
「あれを見てどう思った?」
逆に問い返す。
「燃えてる焚き木で殴ればいいのに……でしょうか」
【草】
【草燃えて焼け野原】
【www】
【るな】【性格の根っこが戦闘向きなのよね】
「そっか、僕はこう思ったんだ。
スライムは自分の体液を溶かさないからそれを塗って使えば武器は傷まないんだって」
「「ああっ!! 」」
二人の声が重なる。
コメント欄もいい加速だ。
僕が発言しているのと同時のタイミングくらいで気付いた人もいた。
「そう、これはダンジョン女神ちゃんからのメッセージ。チュートリアルかな」
「チェストォォォォ!!」
驚きの声で寄ってきた焚火ゴブリンが切り捨てられる。
戦闘が終わった二人に告げる。
「さっきのゴブリンに気付かれないで見ているとまたスライム2匹に襲われるよ。
こういうのあちこちにあるからなんかあったら隠れて眺めてみるのもおすすめ。
なんか視聴者さんに廃人扱いされてたからさ、初心者さん向けのサービス」
【¥50000】【ジェントルビースト】【5周年おめでとう。Ms.Jane doeもおつかれさま】
こうして妹の5周年兼僕の初配信(仮)は終わった。
楽しんでいただけると嬉しいです。




