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猛獣紳士とお友達

本日2話目です。

「ふむ、暴発しそうか」


「お友達」からのメールを見てひとりごちる。


あのダンジョンは軍で攻めるには向いていない。

非常に嫌らしい仕組みだった。


現地で調べたから覚えている。

社員を連れて行って実験したのでね。

違う班だと意識するだけで分断される。

1階から2階に移動する時だと世間では思われているようだが

2階で班を振り分けても下の階に行くときに別になる。

そして物資を持ち込もうにも車両を下の階に入れてくれない。

階段を下ろうとすると中の人だけ下にいく。

相手がファンタジーなら馬車をとやってみたら

移動したのは馬と御者と私だけだった。


色々あって下層と評されているエリアまで潜り

ダンジョン変異者となった今だから言えるがあれは本来時間をかけて

生命として強くならなければ最下層への到達は無理な設計だろう。


それを知らない国は考えた。

自国を有利にするにはどうすればいいか。

私が地下(ダンジョン)で過ごしていたころ地上(おもて)では

ダンジョンを巡る戦争が静かに始まっていたようだ。


ダンジョンに潜るための武器の獲得と開発。

それを妨害するための武器を使わない戦争、冷戦。貿易による戦争。

ダンジョンでドロップする物はある程度操作できることが判明している。

食料や原油など生きるために必要な物を枯渇させて

上層より深く潜らせない。

そうすることで有利に立てる。


食料を大量に作っている大国や産油国が有利……なようでそうでもないのだ。

科学の加工品がダンジョンでは出現しない。

加工品で出るのはファンタジー由来の物だけだ。

唯一、本は出た例もあるようだが生きることに直結する内容の

パブリック公開されたものしか確認されていない。


そんな女神への願いを巡る戦争の中、

産油国ではなく食料自給率も低い日本はなかなか苦労していたようだ。

半導体などの加工品が強いことと、

アメリカの協力がなければ早々に詰んでいただろう。

しかしそんな状況は瀬上君の一人勝ちで唐突に終了を迎える。

女神の、そしてダンジョンの情報がほしい各国は日本を無碍にできなくなったのだ。


こうして冷戦時にちょっと日本と仲が悪くなった国は

瀬上君の妹と交流のある私と「仲良く」なることで情報を得ようと取引してくる。



瀬上君が帰ってきたことは各国が気付いている。

何せスパイの入国を防ぐことが極めて困難な時代だ。

行きたい国のダンジョンがある場所の名を挙げて入りたいと言えばいい。

それを止めてしまえば女神の怒りを買う。

彼の出した住民票は一体何カ国のエージェントが触ったんだろうか。


彼は注目されている。

安易に手を出すことはできない。

更にいうならダンジョン変異者の生態は予想がつかない。エルフや獣人。

そして私のようなライカンスロープ。伝承があればまだ想像がつくかもしれない。

私は満月になっても強制的に変身して吠えるわけじゃないので伝承も正確ではないのだろうが。


それにひきかえ瀬上君は女児だ。

意味が分からない。能力が想像ができない。

魔女であった場合など想像するだけで恐ろしいこととなる。


少なくとも最下層まで到達する能力があることは証明されている。

どこまでを戦争ではないと女神が判断してくれるかは分からないが

力づくで勝てそうにない相手に少数で何かをしようとは思わない。

生贄になりたくない各国は静かにけん制をしていたようだ。


Dナンバーカードを取得したことも分かっているのだからダンジョンに潜って

配信をするなどの行動を期待しているのだろうが中々その行動をしない。

ゲームをして遊んでいるようなので外からはダンジョンへの

興味を失ったように見えるだろう。

この状況を放置してしまえばマスコミの方に情報を流し

彼らを生贄にして情報を得ようとする。

折角穴倉から出てきた彼を面倒くさい状況にしたくはない。


私たちは初音君から色々と話を聞いているから配信をするつもりがあるのは分かるのだが

彼は未経験だ。配信の方向を決めるのは時間がかかるだろう。


要は情報を出す意思があるということを示してガス抜きをすればいいわけだ。

丁度いい話もあることだし少し動いてもらおう。

結城君にメールをしようかね。

アルファターナ(聞きました。明日ですね)

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