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結城綾乃と蘇生秘話

(瀬上秋人があなたの蘇生を希望しています。同意しますか? )


よく分からない状態の私の意識に声が聞こえる

瀬上秋人、知らない人だ。

蘇生? 死んだ? 落ちた、私、落ちたよ! 

そうだ、落ちて重くなって…好きにただよってた?


久しぶりのまともな思考。

続けての恐怖、混乱。

どれくらい私寝てた? 


なんで知らない人が私を生き返そうとするんですか? 


(さあ? 彼の提示した条件にあなたは合致していますので問いかけています。

 この問いかけ自体が疑問でしたら彼の感情の問題のようです。

 死んだときの痛みや恐怖を持ったまま蘇生することを強制することへの

 忌避感からの選択ですね。

 何故あなたが選ばれたか確認しましょうか? )


待って、待ってください!! 

慌てて制止する。

確認されて勘違いでしたと言われてはたまらない。


あの……拒否したらどうなるんでしょうか? 

神? 悪魔? 相手が何かも分からないけど縋るように質問する。


(元の状態に戻るんじゃないでしょうか? )


すみません、元の状態が分かりません。


(肉体を消費し魂に感情がくっついている状態ですね。

 該当する言葉を聞いてみますので少しお待ちを)


(感情に残った情報で行動を変えるのでいくつかの言葉が作られているようです。

 祖霊。精霊。悪霊。木魂。ゴースト。

 他にもありすぎるので好みのを選んでください)


幽霊ですか。そうですね、私、幽霊でしたね。


(これも伝えた方がよいと言われたので補足しておきます。

 ここで無理に蘇生を選ばなくとも感情を消費し終えた後に再び生命に宿ります。

 お好きな選択を)




私は生き返る方を選んだ。

当たり前だ。家族に愛されてる。恵まれている。

死んだときの記憶は怖いが結城綾乃でなくなるのはもっと恐ろしかった。

そんなことになるのはこの人生を擦り切れるほど堪能してからでいい。

こうして「私」としての人生は再開した。


生き返ってからしばらくはとても忙しかった。

私にとっては朝に会ったはずの両親はずいぶんと老けていた。

ダンジョンができて熱狂的な報道をしていたはずのテレビは

もうすでに落ち着いていてダンジョン研究家とかダンジョン専門家とかいう

よく分からない人達が現れていた。


瀬上秋人さんはジョギングの時に会った人だった。

私にとってはそう時間が経っていないのできちんと覚えている。

ネットで上がっていた情報を見たらすぐ分かった。


暗い雰囲気の人だったので自殺でもするんじゃないかと声をかけたのだ。

気を紛らわさせようと当時一番大きなニュースだったダンジョンの話題を振った上で

高千穂の事件の話をしたのは本当に最悪の選択だったと思う。

まさか遺族の人だなんて思わない。


おじいちゃんが電話でうちのそばにも小さいの出来たぞーって言ってたのを伝えたら

お礼を言われたけど探して潜ったのかな?

多分そうだよね。

生き返った場所、おじいちゃんの家のそばだったし。

田んぼを手伝いにきてたっぽいお父さんに声をかけたときに化け物って叫んで逃げたけど

私を見て言ったんじゃないよね? 

頭に犬耳ついてる人とかエルフとかいたからだよね? 

楽しんでいただけると嬉しいです。

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