第55話 魔剣祭29
グループCの第3試合。
対戦カードは魔法学院からレナ・シルエット、剣士学院からカルト・フィン。
俺の後ろに座っている学園長とその隣にいる剣士学院の学園長が他の試合と比べ物にならないほど魔力の圧を出している。
恐らく無自覚だろうが、周囲の人間にも影響が出ている。
俺は仕方なく2人を囲むように魔力障壁を展開する。
通常の魔力障壁と異なり無色透明であることから周囲にバレることはない。
周囲の人間の顔色が徐々に良くなっている。
とにもかくにも今はレナの試合が大事だ。
レナは優秀な生徒ではあるが対戦相手も優秀な生徒。
ただ、今回の相手は剣士だ。
つまり勝敗は決まっている。
審判の「開始」の合図とともにカルト・フィンが膝から崩れ落ちた。
レナは校内選と同様に相手の魔力を操って疑似的な魔力不足を起こした。
この魔法は相手よりも魔力の質が上回っていないと使えないが、今回の相手は剣士。
剣士は魔力を鍛えることはあまりしない。
つまり、レナが使った魔法は剣士キラーとなりえる。
ただ、剣士も対策出来ないわけではない。
例えば、剣士も魔術師同様に魔力を鍛えるのも個人的にはありだと思う。
この考えは何故か剣士は好きではないらしい。
そして、剣士がこのような魔法の対策として広く用いているのが心纏と呼ばれる技術だ。
この技術は簡単に言えば精神力を具現化し、身体にまとわせる。
体力をかなり使うがその分、レナが使ったような魔法を無力化し、さらに身体能力を一時的に向上させることが出来る。
世界最強の剣士は常に心纏状態を続けていた。
まあ、ほとんどの学生はこの心纏を使えない。
つまり、レナは剣士相手であれば魔剣祭で負けはない。
「何だ、剣士学院はまだ心纏が使えないのか?」
学園長が剣士学院の学園長に煽るように言った。
「・・・」
その発言に剣士学院の学園長は無視を決め込む。
せっかくレナが勝利したのに魔法学院側が負けた気分だ。
とまあ、その後も試合は続きグループCはレナが優勝した。
本人はどこかで適当に負けようと思っていただろうが、運悪く対戦相手が全員剣士だったため、負けることが出来なかったようだ。
最後はグループDの試合。
俺が注目している選手はマルク、それと2代目世界最強の剣士。
早速第一試合からマルクが出場する。
マルクが背負っている剣は魔物討伐の時の剣と異なり2周り程大きくなっている。
対戦相手はアルディア学園の生徒。
魔道具で不正しているため、アルディア学園の生徒よりも少しだけ強くなければ勝てない。
ただ、一目見ただけで分かる。
マルクの実力はアルディア学園の生徒の実力を大幅に上回っている。
「開始!」
審判の合図とともにアルディア学園の生徒が勢いよくマルクに詰め寄る。
お互い剣士であるため接近戦になることは予想できる。
そのため、マルクは相手が間合いに入るのを待つ。
アルディア学園の生徒がマルクの腹部に剣を突こうとする。
だが、マルクは動かない。
アルディア学園の生徒はマルクの腹部に剣が到着する瞬間にキレイな足運びでマルクの背後に移動した。
その動きに迷いがなかった。恐らく計画通りだったのだろう。
そして、今度こそ剣をマルクの背中に突き刺す。
が・・・次の瞬間、その場に倒れていたのはアルディア学園の生徒だった。
あまりにも一瞬の事で観客は唖然としている。
何が起こったのか分からないといった様子だ。
ここに居る一部の人間しかマルクが何をしたかが分かっていない。
「シエラ、見えたか?」
「ええ、やっぱりマルクは凄いわね」
魔力で見るを習得したシエラも見えていたようだ。
マルクはアルディア学園の生徒が最初の攻撃でフェイントを入れることを予想、いや、確信していた。
だから、初撃を無視し相手の足運びに注目した。
そして、足運びから相手が背後に回り込むことを予測し、その軌道と相手が交わるタイミングに剣を振るう。
あまりにもマルクの斬撃が早すぎたためか相手は切られたことに気づかず、そのまま攻撃態勢に入った。
その結果、少し無茶な態勢を取った相手の筋繊維は断裂し、その場に倒れた。
これがこの数秒で行われた事だ。
「今年の魔法学院と剣士学院の生徒は優秀ですな」
何処からとなくやってきたその男を認識するとVIP席にいたほとんどの人間が沈黙した。
「誰ですかあの人?」
俺は小声で学園長に聞いた。
「アルディア学園の学長だよ。この中で一番権力がある。逆らったら首が飛びかねないから注意することだ」
学園長はこの状況を楽しんでいるようだ。
それにしてもこいつがアルディア学園の学園長。
つまり、アルシナ帝国と賭けをしている張本人。
「それよりも、そこにいる3人の底辺は誰ですか?君たちはここにふさわしくない。今すぐ出て行ったまえ」
そこの3人とは俺、レイン、ロンドの事だ。
まあ、服装が庶民のものだから浮いていたのは気づいてたが、そこまで言わなくてもとは思う。
「すみません。彼らは私の生徒でして同席させていただけませんでしょうか?」
学園長がわざとらしく腰を低くしている。
「そうでしたか、魔法学院の生徒。それにしてはあふれる庶民感。学園長は私とあの底辺たちが同じ空間に居ろと言うのですか?」
「てめぇ」
ロンドが拳を握りアルディア学園の学長に飛び掛かりそうになったところをレインが制止する。
これ以上いても学園長に迷惑をかけると判断し俺は2人を連れて部屋を退出する。
同時にシエラも席を立ち俺たちの後を追う。
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