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第51話 魔剣祭24

「今回の対戦カードは魔法学院からシエラ・ルミナ選手。魔法学院の学園長曰く我が校の期待のルーキーだそうです。対するは霞月学園から、栗花落雪つゆりゆき選手。霞月学園は毎年魔剣祭で上位に入り込む強豪校。その中でも栗花落選手は何と1年生での出場となります。期待の高まる1戦です。」


霞月学園の栗花落雪。

この世界では珍しい黒色の髪に黒色の瞳。

そして、個人的に最も興味をそそられるのは彼女が羽織っている着物。

アルシナ帝国含めこの辺りの国ではほとんど見ることがない。

俺も実際に見たのは初めてだ。

栗花落雪の顔の良さに着物が調和していて、この会場にいる男全員が彼女に見とれている。

勿論俺もそのうちの一人だ。



お互いに握手を交わし距離を取る。


シエラの対戦相手である、栗花落雪は何やら、あまり見ない形状の剣を鞘から抜き取った。

その剣は、長くしなやかな刃が美しい曲線を描き、薄明かりに照らされると、まるで月光を宿したかのように輝いてる。

後で聞いた話だが、彼女が持っている剣の事を刀と言うらしい。


そして、試合開始の合図があるまで目を閉じる。

これは決して相手を舐めているとかそういうのではない。

むしろ相手に敬意を表しているように感じる。



「開始!」


審判の合図とともに先行したのはシエラだった。

シエラが即座に放ったウォターボールは他の魔剣祭参加者よりもかなり高威力だ。

速さ、大きさ、回転そのどれもが、他の参加者を凌駕していると言っても過言ではない。


ただ、そのウォターボールを栗花落雪は殆ど動かずに回避した。

それも目を閉じたまま。


ここで、[殆ど]と表現したのには理由がある。

彼女はウォターボールを避けるために動いた。

ただ、たったの1歩でシエラのウォターボールを避けたのだ。



「学園長・・・」


俺は栗花落雪の戦闘に興味がわき、おそらく詳細を知っているであろう学園長に話しかける。


「ああ、彼女は桜花流おうかりゅうという、刀術の一つを使っている。刀術と言うのは私たちが普段使っている剣術のようなもので、様々な型があるらしい。まあ、ノアが知らないのも当然の話でここからかなり遠くにある島国でしか使われていないかなりレアな戦闘スタイルだよ」


学園長の説明を聞いて、その島国に行ってみたくなった。

転移魔法で行くこともできるが、生憎と座標が分からない。

まあ、後で詳しく聞くとしよう。


それよりも今はシエラの試合に集中だ。

正直な話シエラの実力であれば、Bチームで優勝もしくは準優勝くらい余裕で出来ると思っていたが、少し雲行きが怪しくなった。

栗花落雪、まだ始まったばかりだがシエラに匹敵する実力を持っているのは確か。

俺としてはシエラに勝って欲しいという気持ち半分、栗花落雪と戦ってみたいという気持ち半分だ。

どちらが勝っても嬉しい。


「この浮気者め!」


学園長が俺の心を見透かしたかのようにそんなことを言った。

俺はそれを無視し、試合に集中する。


今度は栗花落雪の攻撃。

始めてみる足運びにシエラは動揺する。

数歩しか歩いていないように見えるが、いつの間にかシエラは栗花落雪の間合いに入っていた。


栗花落雪は刀を振り上げる。

その動きには一切の無駄がなく、綺麗な半円の残像が空中に残った。


シエラは間一髪で回避したが、ほぼ勘で回避したのだろう。


栗花落雪はすかさず刀の柄をシエラの腹部に勢いよく突き刺す。

刀身部ではなかったため致命傷にはならないが、それでも痛いはずだ。


栗花落雪を倒すには前に俺が教えたことを実践しなければ無理だろう。

それにシエラが気づけるかが勝敗を分ける。



シエラは栗花落雪と距離を置き、風と火の混合魔術を発動する。

この校内選から魔剣祭までの短い期間でシエラはこのような混合魔術を練習していた。

具体的には詠唱の省略だ。

まだ、俺の様に無詠唱とまではいかないが、かなり詠唱を短縮できている。



シエラの魔術で発生した竜巻には火が纏わりついている。

熱風が観客席にまで届くほどの温度と風力。


至近距離にいる栗花落雪はかなり苦しいだろう。


そう、誰もがそう思った。

ただ、栗花落雪は表情を崩さず炎の竜巻に歩みを進める。


「刀術使いは忍耐が武器と言われているらしい。」


頼んでもない解説を学園長がしてくれた。

それにしてもすごい。

忍耐でこの熱風に耐えるとは。

恐らく、栗花落雪は魔術を使っていない。

魔術を使わなかったら俺でも炎の竜巻に突っ込むなんてことはしない。



栗花落雪は竜巻の中に入り、その中央に到達すると刀を強く握り勢いよく振るう。

原理は分からないが、竜巻が跡形もなく消えた。


その竜巻があったはずの場所には表情一つ変えない栗花落雪の姿がある。



ここからでも分かるシエラの困惑と絶望の表情。


ただ、シエラの心がこの程度の状況で折れないことを俺は知っている。

入学当初のシエラだったら諦めてたかもしれないが、魔法学院で様々なことを学んだシエラなら今も打開策を考えているはずだ。

そして、魔物討伐で教えたあの方法を思い出し、実践することが出来たらその時はシエラの勝利だ。

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