第50話 魔剣祭23
「やっぱりね」
どうやらシエラはカリス・エリックの正体が俺ということに確信を得ていたようだ。
「どうせ、正体を明かしたら私が魔剣祭で優勝することを諦めるとでも思ったんでしょ」
そこまで見抜かれてると思わず一瞬心拍数が上がった。
「まあ、安心して。これくらいの事で優勝を諦めるつもりないから。ノアを倒して優勝して見せるわ」
そう言ったシエラの瞳から強い意志が感じ取れた。
それからシエラの試合が近づいたため、俺たちは一度解散した。
俺の今日の試合は全て終わっため、1人でシエラの試合を観戦することにする。
出来ればロイド、レインと共に観戦したかったが、2人には体調不良と伝えてあるから今更合流することは許されない。
かくして俺は一人で観客席へ向かう。
観客席までの道のりに会いたくなかった人物が立っていた。
俺はその人物を無視し、観客席へ向かう。
「無視はひどいんじゃないかな?」
その人物は文句を言っているのにも関わらずその表情は笑っている。
「話すこともないので」
「魔法学院の生徒であれば私を見かけたら、背筋をピンと伸ばして挨拶してくるんだけどね。ノアの友達のレイン君、ロイド君は私を見たらかなりテンパっていたよ」
「学園長の顔が化け物に見えたんじゃないですか?」
「やっぱり面白いね。私の顔が化け物だなんて。これでも顔面偏差値は高い方だと自負しているよ」
確かに学園長は無駄に顔が良い。
だが、性格が悪い。
「で、俺に用があったんですよね?」
「ノアとの雑談も楽しいが、確かにもう少しでシエラの試合が始まってしまう。私としても自分の生徒の試合を見ておきたいところだ。」
そして、一呼吸おいて学園長は本題を語る。
「私がノアをこの魔剣祭に出場させたい理由は覚えているだろ」
「そうですね。確か、近年の魔剣祭での成績が剣士学院よりも下だったから、流れを変えるための起爆剤的な要因だったはずです。」
「そうだ。そして、ノアの試合を見て確信した。剣士学院の生徒相手なら余裕で優勝できる実力を持っていると。だが、さっき屋台で買い食いをしているときにアルディア学園の生徒とすれ違った。その時、君と同じような底知れぬ実力を肌で感じた。」
恐らく学園長が言っているアルディア学園の生徒とは2代目世界最強の剣士の事だろう。
「なるほど。つまり、俺が優勝できるか不安になったから俺の元に来たという事ですね。」
少し棘のある言い方をしたが概ねあっているだろう。
学園長は自分の顔が化け物と呼ばれた時よりも怪訝な表情をしている。
「まあ、気に入らない言い方だがその通りだ。で、ノアはそいつに勝てると思うか?」
正直負ける気はしないが、学園長は俺を脅して魔剣祭に参加させた張本人であるため少し意地悪をしてみる。
「分かりません。でも、学園長がそんなに評価するという事は負けるかもしれませんね。」
この俺の返答に学園長は少し口角を上げ上品に笑った。
「ノアのおかげで安心することが出来たよ。ノアは負けない。いや、自分が負けるイメージが出来ないと言ったところか」
まるで俺の心を見透かしたかのように学園長は言った。
シエラといい学園長といい、俺の心を見透かすのをやめてもらいたい。
「俺は負けるかもと言ったんですが・・・」
「私に嘘は通じないからね。覚えておくといい」
俺はそのことを一生忘れないと誓った。
「じゃあ、私は用が済んだことだし、これで失礼するよ」
学園長は別れを告げその場を後にする。
だが、俺は学園長を呼び止めた。
「学園長、頼みがあります」
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「ノアからの頼みと思って警戒したが、こんな簡単なことで良かったのかい?」
「まあ、俺にとっては重要な事ですから」
そう、俺が学園長に依頼したこととはVIP席でシエラの試合を観戦する権限だった。
一般席で試合を見るのもいいが、かなり見ずらい。
それに比べVIP席は見晴らしがよく、フィールドの端から端まですべて見える。
ただ、この場所はVIP席という事もあり選ばれた人間しか座ることが出来ない。
そこを学園長のコネで入れさせてもらったわけだ。
セリアに頼むこともできたが、たまたま近くにいた学園長に頼んだ。
「やはり、弟子の試合は楽しみかい?」
学園長は俺とシエラの関係をほぼ見透かしているようで、そんな質問をしてきた。
だが、俺はそれを肯定しない。
「弟子じゃありません。友人です。それに実力もシエラの方が上です。俺はDクラスですから。」
「さっきも言ったが、私に嘘は通用しないよ。」
「分かってます。だから本当の事を言いました。」
「やっぱりノアと話すのは面白いな。それよりも弟子の試合が始まるよ」
「弟子じゃないです」
最後に無意味な否定をしてシエラの試合に集中する。
対戦相手は霞月学園の生徒。
このアルシナ帝国からかなり離れた場所にある国の学校だ。
その国ではこの周辺の文化とはまた違った文化が繁栄しているらしく俺も一度は行ってみたい国だ。
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