第47話 魔剣祭20
「なるほど、多少の実力差であれば勝敗を覆せると言う分けか」
「その通りです。」
「で、俺にこの魔道具を破壊しろと?」
「いえ、この魔道具は現在アルディア学園に保管されています。ここからアルディア学園までおおよそ馬車で5日かかります。どれだけ頑張っても魔剣祭終了までにその魔道具を破壊することは不可能です。」
セリアはそう言うが、転移魔法を使えばすぐにでも魔道具を破壊できる。
ただ、その場合俺が転移魔法を使えるのではないかと言う疑惑が出てしまう。
「じゃあ、どうするんだ?このままアルディア学園に不正をさせておくのか?」
そう聞くとセリアは指を顎に当て長考する。
「正直、私たち運営側にこの問題を解決するだけの能力はありません。」
そう言ったセリアは唇を噛みしめ悔しさをあらわにする。
「この不正を公表して、アルディア学園の出場を停止させるというのは出来ないのか?」
「残念ながら、相手は貴族が多数を占める学園です。不正を公表しても確実にあらゆる手段を用いてもみ消してきます」
「なるほど、じゃあ今年はこの不正を明るみにさせないという事か?」
この残酷な質問に無言で頷くセリア。
「分かった。別に俺個人としては、運営側がアルディア学園の不正をどのように対処しようがどうだっていい。それで、俺はこの話をするために呼ばれたのか?」
セリアは首を振りひし形のネックレスをテーブルに置く。
「これは、アルディア学園が使用しているであろう魔道具と同程度のバフを掛けてくれる魔道具です。単刀直入に言います。決勝戦に勝ち上がることが出来、そこでアルディア学園の生徒と対決することになったらこの魔道具を着用してください。」
この魔道具を付けて決勝戦に出場するという事は不正をするという事だ。
それを現在、セリアつまり魔剣祭運営のトップに位置する人物に依頼されている。
「分かっていると思うが、これは立派な不正行為だ。」
「勿論分かっています。ですが、以前にも話したようにアルディア学園の生徒が優勝すればこの国はアルディア学園の領土になります。それだけは何としてでも避けなければなりません。」
その言葉には強い信念を感じた。
その信念に珍しく心を打たれた俺はため息を吐きながら言う。
「事情は分かった。けど、この魔道具は使わない。」
「ですが!!」
俺がこの提案を拒否すると思わなかったのかセリアの焦りがひしひしと伝わる。
まあ、セリアから見た俺は簡単に人を騙す、不正なんて気にしない人間と映っているだろう。だからこの提案を拒否されるとは思うまい。
「まあ、落ち着け。俺はこの魔道具を使わないと言っただけだ。セリアとの約束は守る」
「それは、魔道具なしで魔剣祭に優勝するという事でよろしいですか?」
「そうだ。そんなものに頼らなくとも俺は優勝できる。」
「彼方は!!2代目世界最強の剣士を侮っています。」
セリアからは聞いたことのない怒号が俺の耳に響いた。
「私自身、2代目世界最強の剣士の実力を実際に見たわけではありませんが、ゴーレム数体を瞬殺したという報告は受けています。他にもいろいろと信じがたい報告が何度も上がってきています。そんな相手にあなたは勝てるというのですか?」
「ああ、勝てる。それに、セリアはさっき俺が2代目世界最強の剣士を侮っていると言ったが、
セリアは俺を侮っている。」
「・・・・・手分かりました。絶対優勝してくださいね。報酬は期待していてください」
まだ、セリアは俺の言葉を信じ切れていないようだが、一応納得してくれた。
少し長くセリアと話していたら俺の出番が来た。
セリアに「行ってくる」と言って貴賓室を後にする。
会場に到着すると1試合目よりも大きな大歓声が聞こえてくる。
理由は単純で俺が期待されているからだ。
1試合目にグランデール家の長男をボコボコにしたことにより俺への評価が爆上がりしている。
この魔剣祭には誰が優勝するかを予想する賭け事が行われており、全てのグループが2回戦を行うまでかけ方を変更できる。
1試合目始まる前の俺への掛け金順位は下から10番目。全体から見るとかなり下の方だ。
まあ、こんな正体の分からない人間にお金を掛ける人間なんてほとんどいないだろう。
学園長は俺にかなりの大金を掛けたらしく、学園長一人の資金で俺を最下位から10番順位を上げている。
しかし、1試合目で俺の実力の片鱗を見せたことにより俺の評価が爆増し、現在は全体で14位という高成績を残している。
参考までにシエラは9位、レナは30位、もちろん2代目世界最強の剣士は1位となっている。
「ただいま入場してまいりましたカリス・エリック選手。今大会のダークホース。1回戦でグランデール家の長男をボコボコにした本人だ!!!」
何か不名誉な紹介のされかただが、間違ってはいないため黙っておこう。
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