第45話 魔剣祭18
魔剣祭のルールは基本的に校内選と同じで、勝利条件は相手の意識を失わせる、敗北を宣言させるの2通り。
また、対戦方式も校内選と同様トーナメント形式が採用されている。
一方、校内選と違うところは対戦相手が主催である魔剣祭実行委員会というグループによって決められるところだ。
これにより初戦から同じ学校の生徒が当たることはない。
他にも参加人数が校内選よりも多いことからグループ分けがされている。
グループはA~Dに分かれておりそれぞれのグループで優勝した生徒が準決勝に進出できる。
準決勝ではA対B、C対Dの優勝生徒が対戦することになりそれぞれの勝者が決勝に進出する。
ちなみに魔法学院から俺はAグループ、シエラはBグループ、レナはCグループとなっている。
とりあえずは各グループで1位にならなければ対戦することもない。
初戦が始まりまずはAグループの試合からだ。
「カリス・エリック選手準備をしてください」
魔剣祭実行委員会の人に俺の魔剣祭での偽名を呼ばれ控室から出る。
今回は正体を隠しているため、手加減をする必要はない。
まあ、相手が死なない程度には加減するけど。
フィールドに出ると対面には見覚えのある顔が俺を見ている。
そう、俺の対戦相手は金ピカの鎧に身を纏い、純金の剣を腰に携えているグランデール家の長男。
先日レインにわざとぶつかり横柄な態度を取ったあの男だ。
あの時と同じように俺が魔術師だからかと見下したような視線をこちらに向けてきている。
「さあ、間もなく始まりますAグループ第5回戦。対戦カードは魔法学院からカリス・エリック選手。情報によると数日前に魔法学院に転入したダークホース。」
学園長は俺にそんな設定を付けたらしい。迷惑な話だ。
「対するはアルディア学園からグランデール・スミス選手。グランデール家の長男にして上級剣術を10歳の時に習得。Aグループ注目カードの1つであります。」
実況解説の人はそんなことを言っているが、結局のところよく分からん転校生VS名門貴族のおぼっちゃまと言う構図だ。
それを大げさに言っただけで観客が大盛り上がりしている。
さすがはプロと言ったところか。
そんな上から目線の評価を下し、俺は少し考えた。
先日のレインとの一件でこの男はまだレインに謝罪をしていない。
少しお仕置きをしてやろう。
無意識に口角が上がったと同時に試合開始の合図が鳴る。
試合が始まり男は一向に動こうとはしない。
剣士にとって対魔術師は距離を詰めるのがセオリーだ。
このことから考えるに男は現在俺(世界最強の魔術師)相手に舐めプをしているという事になる。
ベテランの剣士ならば相手の実力を肌で感じ取りあえて攻めずにカウンターを狙う事もあるだろうがこの男に限ってそんなことはしないだろう。
こういう時、普通の魔術師は遠距離の魔法を使うだろうが俺は違う。
いや、本来ならば俺でもファイヤーボールなどの魔法を適当に放っていうだろうが今回はこの男にお仕置きをすることが目的だ。
だから俺もあえて何もせずその場から動かない。いや、正確には無詠唱でとある魔法を発動した。
お互いが動かないことで観客がざわめき始めた。
間合いを測っていると考察する者、お互いがカウンター狙いと考察する者、様々な意見が観客席から聞こえるが実際にはお互い舐めプをしているだけだ。
「両選手動きません。一体どのような意図があるのでしょうか。私含めた凡人には理解しがたい状況です」
実況解説の人は自分を下げてそんなことを言ったが少し申し訳ないな。
対戦相手であるグランデール・スミスも俺が何もアクションを起こさないことに不快感を覚えたのか余裕綽々とした表情から一変、怒りがこみあげてきているのが分かる。
「舐めてんじゃねーぞ魔術師風情が!!」
男はとうとう純金の剣を鞘から抜き取り俺めがけて突進してきた。
が、狙い通り。男はその場に崩れ落ちた。
俺が無詠唱で発動していた魔法、摩擦をなくす魔法の効果だ。
人間が歩いたり走ったり出来るのは摩擦があるからだ。
その摩擦を魔法でなくすことにより相手の行動を封じる。
「何だ?これ」
男は戸惑いつつもゆっくりと立ち上がる。
摩擦がなくとも上手くバランスを取れば立ち上がることは可能だ。
普通の人間には厳しいかもしれないが剣士は体幹とバランス感覚に優れている。
まあ、立ち上がることが出来たとしても、こちらに近づくことは出来ないだろうがな。
男は倒れないようにバランスを取っているが、足がプルプルと震えている。
その様は正に小鹿のようだ。
そして、俺のお仕置きはまだ終わらない。
俺はその場に座り名門貴族グランデール家の長男を見守ることにする。
この魔剣祭の勝利条件は相手を気絶させるか敗北を宣言させるかの2通り。
俺は気絶させるなんてつまらないことはしない。
プライドの高い貴族自ら敗北を宣言させる。
「て、てめえ」
男は自分の置かれている現状と俺との実力差を客観的に理解できたのか顔が真っ赤になっている。
だが、そのプライドの高さ故敗北を宣言しようとはしない。
面白ければ評価、ブックマークをお願いします。




