第40話 魔剣祭13
次はシエラの実践。
相手は同じく1年Bクラス。
クラスはシエラの方が上だが、経験は相手の方が上だ。
決着が分からない勝負に俺の胸が高鳴る。
「開始」
再びナーナ先輩の可愛らしい声が剣道場に響き渡る。
シエラは魔剣に水属性の魔法を込め、水の斬撃を放つ。
威力は経験者にも引けを取らない。
速度も十分。
だが、相手はそれをいともたやすく捌きそのままシエラに切りかかる。
シエラは瞬時に身体強化の魔法を発動し、相手の剣を紙一重で避け距離を取り一呼吸付く。
お互い間合いに入らない。
この緊迫した状況を打ち破るかのようにシエラはナーナ先輩に教えてもらった足運びと剣の振り方を実践しスムーズに相手の懐に入る。
普通なら、初心者相手に懐に入らせないほどの実力を持った相手だが、シエラは教えて貰った足運びに加え、身体強化も使っている。
スムーズな足運び、魔剣に魔力を注ぐ、身体強化魔法の3つを同時にすることは経験者でもそうそう出来ることではない。
自主練していた生徒もシエラたちの試合を見入っている。
お互い譲らない勝負。
相手は慣れた足運びと剣捌きを駆使し、攻めている。
対してシエラは技術を魔法でカバーしている。
カンカンと魔剣同士ぶつかり合う音が剣道場に響く。
お互い体力が底をつきそうになった瞬間、決着がついた。
シエラが魔剣に魔力を注ぐのを止め、身体強化に集中し、相手の魔剣に自分の魔剣を思いっきりぶつけた。
剣道場に爆音が響き渡り、相手の魔剣が地面に落ちた瞬間にシエラは相手の首元に魔剣を軽く押しあてた。
「勝負あり」
最後は何とも無慈悲な終わり方。
技術など関係ないような力技だ。
だがそれもルールの範囲内。
シエラの力技を技術で捌けばいい話だ。
それはそうとシエラの相手は1年で次期エースと呼ばれていた生徒だったらしい。
それに勝利したのだから当然、周囲の部員がシエラの元に集まっている。
「やっぱり彼女とんでもない才能の持ち主だね」
エルミナ先輩も途中から見ていたのか俺に声を掛けてきた。
「そうですね。魔法の才能なら、あの世界最強の魔術師と似たような感じがします」
そう告げて、俺はシエラと部をあとにする。
次に部活に参加するのは魔剣祭後だな。
魔剣祭も近くなってきた。
シエラも魔剣祭に向けての訓練をしたいだろう。
それから1週間が過ぎ、とうとう魔剣祭の会場へ出向くことになった。
俺はレインとロイドと共に魔剣祭の会場へ馬車で移動している。
シエラは選手として特別待遇の馬車に乗っている。
本来は俺も選手だからその馬車に乗る権利があるのだが、生憎正体を隠しての参加のため、こっちの貧相な馬車で移動する。
「まさか僕たちも魔剣祭に行けるなんて思わなかったよ」
「そうだな。これも、シエラのおかげだな」
そう、ロイドとレインはシエラの友人枠として魔剣祭の応援の許可をもらっている。
勿論、表面上は俺もシエラの応援という事になっている。
俺は魔剣祭に乗り気ではないが、一つ楽しみなことがある。
それは、マルクとジュナに会えることだ。
マルクとジュナは魔物討伐で共闘した剣士学院の友人。
剣士学院もどうやら校内選で魔剣祭の出場選手を決めるらしいが、マルクとジュナの実力ならもちろん校内選を突破しているはずだ。
今からでも待ち遠しい。
魔法学院から馬車で2週間。ようやく到着した。
ここはアルシナ帝国。
魔法と剣、両方を愛する人間が住んでいる。
よって、ここが魔剣祭の会場だ。
門をくぐると剣士っぽい格好をした人や魔術師っぽい格好をした人がたくさんいる。
剣士と魔術師は互いに距離を置いているというのが世間一般的な解釈だが、この国ではそうではないらしい。
剣士と魔術師が互いに尊重しあう国。
それが、アルシナ帝国。
国王はどうやら魔剣士らしい。
俺たちは案内役の人に宿を案内された。
学園長が用意してくれた宿らしく、Eクラスの寮に比べ、色々なものが充実している。
それに広さも3人部屋とは思えないほどに広い。
さすがにSクラスの寮よりかは狭いが、あそこは別格だ。
比べるものではない。
部屋に入るなり、ロイドがベッドに飛び乗る。
「このベッド勝手に沈むぞ」
ロイドは初めての高級ベッドに興奮を隠せていない。
この宿でこの広さと設備なら、シエラが泊まる宿はどんなものなのだろうか。
気になったので後で行ってみることにする。
「それで、魔剣祭は明後日だから今日と明日は何する?」
「そうだね、皆で色んな所を周ろう」
「そうだな。」
俺も、この国には始めて来たため色々な場所に行ってみたい。
荷物を宿において一休みし、俺たちはとりあえず市場に行ってみた。
市場には興味を引くものがたくさん売ってある。
魔法学院があるイストラには打っていない魔道具や、魔剣なんかがこの国にはたくさん売ってある。
どう見てもぼったくりだろと言う価格で売られている魔道具が目に入ったが、ここは目をつむることにしよう。
「あれ見て」
レインが指さした方向に目をやると俺は一瞬硬直した。
そこには【世界最強の魔術師の偉業】という題名の本が売られている。
それも価格が金貨1枚。かなり高価だ。
レインとロイドは世界最強の魔術師のファンらしく、この本に興味津々だ。
本物が隣にいると知らずに。
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