第39話 魔剣祭12
「シエラ、一緒に剣術部に入部しないか?」
俺はシエラを見つけ出し、剣術部に誘ってみた。
「えー。」
シエラは乗り気ではない模様。
だが、幸いにも俺はこういう人間を説得する術を俺は知っている。
「入部してくれたら、魔法を教えてやる」
そう、入部に対するメリットを示せばいいのだ。
シエラの場合は少し魔法オタクな気質があるため、俺が提示できるメリットはたくさんある。
「分かったわ。その代わり最低2つ教えなさい」
俺は「了解」と言って早速2人で入部届を提出しに行く。
剣道場に到着し、早速エルミナ先輩に声を掛ける。
「お久しぶりです、エルミナ先輩」
先輩はこちらに気づいていなかったのか、少し驚いた表情をした。
俺が手に持っている入部届に気づき歓喜あふれている。
「ノア、入部してくれるの?」
「はい。今日は正式に入部しに来ました。」
先輩は俺の後ろにいるシエラに気づく。
「後ろにいるのはノアの彼女?」
先輩がそんな突拍子もないことを言ったせいでシエラの顔が赤く染まってしまった。
「違いますよ、友人です。ちなみに彼女も入部希望です」
「シエラ・ルミナです。よろしくお願いします」
シエラが自己紹介すると、先輩はシエラの顔をじっと見つめた。
知り合いだったのだろうか?
いや、シエラは先輩の事を知らないといった表情だ。
「シエラ、校内選で私を倒したの覚えてる?」
思い出した。先輩は校内選でシエラに瞬殺されていた。
「勿論覚えています」
絶対覚えてないな。
シエラとの付き合いもそこそこ長くなり嘘をついていたら何となく分かる。
この表情は嘘をついているときの顔だ。
まあ、それも仕方ない。
シエラの校内選は全て魔法1回放つだけで勝利していた。
相手の顔なんて覚えていないのも当然と言える。
だが、シエラは優しい。
この場面で覚えていないなんて言ったら先輩が傷つく可能性がある。
その可能性を考慮しての嘘だろう。
「私は部長のエルミナ・スカイね。よろしく」
2人は握手を交わし、部員として早速部活に参加させてもらう。
俺たちは初心者という事もあり始めは魔剣に魔力を注ぐ練習をする。
殆どの生徒は1か月くらいしなければまともに魔剣に魔力を注ぐことが出来ないらしい。
ちなみに俺は体験入部の時に1発で成功させた。
シエラはどうだろうか。
「出来た」
どうやらシエラも1発で成功したらしい。
やはりシエラの才能はずば抜けている。
剣術部の部員が俺たちを見て驚いていた。
魔剣に魔力を注ぐ訓練をすぐに習得したため、現在俺たちは次の訓練である剣技を習っている。
教えてくれているのはエルミナ先輩ではなくナーナ・スカイハート先輩。
3年Aクラスで剣術部の副部長をしている。
エルミナ先輩は何かと忙しいらしい。
ナーナ先輩は親切で、剣の持ち方から足の運びを手取足取り教えてくれている。
俺はある程度慣れてきたが、シエラはなかなか苦戦しているようだ。
魔法の才はあるが、剣術はあまり得意ではないようだ。
まあ、俺も別に剣術の才があるかと言えば、普通程度だと思うが、昔鍛えていたから体幹がしっかりしているのだろう。
「シエラさん、もっと魔剣を握る力を緩めるといいですよ」
「分かりました。」
ナーナ先輩がシエラにアドバイスし、シエラがアドバイス通りに挑戦するとすんなりと習得し始めている。
きっとナーナ先輩の教え方とシエラの理解力の両方が良いのだろう。
魔剣の基礎を何となく理解できた俺たちはとうとう実践をする。
対戦相手は1年Bクラスの生徒。
俺は相手との適切な距離を保ち魔剣を構える。
相手も、魔剣に魔力を注ぎ、後は開始の合図を待つだけだ。
俺はこの試合を十分に楽しむために常時発動の魔法を全て切った。
魔法ありだと勝負にならないからな。
それに、魔剣に注ぐ魔力量も相手と同程度だ。
これで、勝負を決めるのは技量と運だ。
「開始」
ナーナ先輩の可愛らしい合図とともに相手は速攻で詰めてきた。
相手が魔剣を正面から振り下ろすが俺はそれを魔剣で受け止める。
だが、相手が魔剣に付与している属性は風系統の魔法。
魔剣から風が勢いよく飛び出し、俺が受け止めていた剣を押し返そうとしている。
なるほど、これが魔剣の楽しみ方か。
俺は、受け止めきれないと判断し相手の魔剣を綺麗にいなす。
相手はバランスを崩した・・・と見せかけて、俺の視覚から2撃目を放った。
俺はそれをいともたやすく避けた。
いや、避けてしまった。
本来であれば俺にダメージを与えていた攻撃。
それをなぜ俺が回避できたか。
理由は簡単だ。
危機感知魔法、常時発動の魔法を一つ切り忘れていた。
そのせいで、反射で避けてしまった。
避けれるはずのない攻撃を避けたため、試合を見ていた生徒がざわめき始めている。
「今のどうやって避けたんだ?」
対戦相手も戸惑っている。
「まぐれだ。」
苦しい言い訳と分かっていながらもそう言うしかなかった。
相手は納得し、そのまま試合が再開される。
試合結果は対戦相手の勝ち。
感覚的には何度か勝てる場面があったが初心者の俺が勝ってしまっては嫌でも目立ってしまう。
よって、適当なところでわざと相手の攻撃を食らって敗北した。
少しやっただけでも分かる。
予想以上に剣術は楽しい。
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