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第2話 結婚と領地

本日2回目の投稿です。お読みいただければ幸いです。

 10歳になった。すでに武術の腕は騎士団でも有数のものとなり、また、学問も進み準男爵家にある本はすべて読みつくした。

 魔法は水、火、土、空間、白魔法を習得した。魔法にはレベルというものがあり、どれも中間レベルまで到達していた。準男爵家にある本や自己鍛錬では、これが限界のようだった。

 さて、拙者の兄である長男が騎士養成学校を卒業し、見習い騎士となることが決まった。

 そのため、父より騎士団への鍛錬参加を禁止された。兄より強い弟がいては、兄のメンツがつぶれるからだ。

 また、12歳になった次兄は文官として、文官養成学校に通うこととなった。

 拙者はできれば、魔法学校に通いたいと思ったが、この国には魔法学校はなく、他国に行くしかないのだが、そこまで我が家には金がなかった。

 いろいろ考えて、拙者は12歳になったら冒険者として旅に出ることにした。

 冒険者というのは、傭兵兼盗賊や害獣を退治して金をもらうものらしい。いわゆる浪人のようなものだ。そこで金をためて、隣国にある魔法学校に行こうと考えた。


 ところが拙者が描いていた未来はあるとき根底から覆された。

 父より「トム、お前に見合いを命ずる。なお、こちららからは断ることができないこと、わざと嫌われることはしてはならない」と命ぜられた。

 トムというのは、拙者の今生での名だ。

 「了解いたしました、父上。して、お相手はどのような方なのでしょうか」結婚などは家のためにするものであり、それで家が栄えるのであれば、どのような相手であれ構わぬのだが、拙者は三男であるため、本来結婚相手などいないのが当たり前だ。この結婚かなり覚悟が必要であろう。拙者の夢である土地を得て、独立した領主になるのに幾分でも役立てばいいのだが。


 「相手は、ウエスキ侯爵家のご令嬢だ。名をアントワネットという。年は22歳で、今度で3回目の結婚だ」父は苦虫をつぶしたように言った。

 「もしかして、死に分かれのアン様でしょうか」拙者もうわさで聞いたことがある。

 かなりの美貌の持ち主で、12歳で前国王の愛人となった。16歳の時に前国王がなくなり、家に帰された後、すぐに某伯爵家の当主に嫁いだが、19歳で未亡人になった。

 20歳で、某子爵家当主に嫁ぐも、2年で当主がなくなり、再び未亡人となった。

 巷では、死神が付いていて、相手の寿命を奪うとか、悪魔に魅入られているとかあることないことうわさが流れていた。

「そうだ、我が家のためお前には、犠牲になってもらう」そう言って、見合い相手の話をした。

 そのような噂が流れているせいで、アン様は侯爵家でもじゃま者扱いされていて、身の置き場がないらしい。

 侯爵家では、一刻でも早く家から出て行って欲しいからか、あちこち嫁ぎ先を探すも悪評がひどく、男爵以上の正貴族には軒並み断られ、準男爵の我が家にお鉢が回ってきたらしい。

 この結婚が成立すれば、父は準男爵から男爵に陞爵され、長兄も騎士団での地位が確立されるらしい。

 また、次兄の文官採用も侯爵家で力を貸してくれるそうだ。

 拙者を犠牲にすることで、まさに我が家にとって良いことずくめだ。

 子が家のために身を尽くすのは仕方なきことなれど、拙者はまだ10歳、相手は今年22歳で拙者のような子供を夫にしなければならないとは、なんとも不憫である。

 拙者は自分のことよりも相手に同情した。

 拙者は不憫ではないのかだって?

 すでに拙者は一度戦場にて果てた身、それに前世では弟たちを養うのに精いっぱいで、妻を娶ることなど考えられなかった。それに前世で討死した時は、26歳であったため、合わせれば、36歳、まあ24歳の妻なら悪くない。

 死神?悪魔?拙者はいったい何人殺したと思っている。とうに地獄に落ちても仕方がないものを神仏の加護により、再び生が与えられたのだ。死神やら悪魔など神仏の力で調服されるだろうし、だめなら本来落ちるはずの地獄にいくまで。


 しばらくして見合いが開かれた。会場は侯爵家の庭である。見合いと言っても、結婚はすでに決定事項だ。

 初めて会ったが、アントワネット様は見目麗しい御仁であった。22歳と聞いていたが、まるで15・6歳ぐらいで、姿かたちも大変美しかった。

 拙者はにこりとしながらあいさつした。

 「初めまして、トム・クレーンと申します。アントワネット様、今後ともよろしくお願いいたします」

 アントワネット様は少しびっくりした様子で、拙者の顔をまじまじと見た。

 拙者の顔に何かついているだろうか。朝、ギヤマンの鏡で顔を確認してきたのだが、虫でもついたか。

 アントワネット様は、しばらくしてから「此方こそよろしくお願いいたします。トム様」

と言って、微笑んだ。うん、美しい。

 家同士の話し合いが行われ、その間我々は、庭を散策することとなった。

 ここの貴族の礼儀で、男が女を先導するという、エスコートというものがあり、拙者は必死になってエスコートした。

 侯爵家にある池のほとりで、アントワネット様は僕に話しかけた。「ごめんなさい。あなたのような子を巻き込んでしまって。でも私にはどうすることもできないの」と言って、謝ってきた。

 「此方こそこのような子供で申し訳ありません。一日も早く大人になって、アントワネット様の伴侶にふさわしい存在になりたいと思っております」

 アントワネット様は寂しそうに微笑んで、「トム様は私の話は知っているのかしら。死神につかれた女、悪魔に魅入られた女という噂を。私の伴侶となった方は皆数年で死んでしまったわ。それも3人連続よ。そんな女を妻にして、トム様は怖くないの」と聞いてきました。

 「まったく」拙者は即答しました。

 「どうして?」

 「私がサムライだからです」

 「サムライって何?」

いけない、拙者がサムライだと、つい口から出てしまった。

 「私は戦う者で、死を恐れないからです」

 「あなたは戦士なのですか」とアントワネット様は楽しそうに言いました。

 「はい、私は12歳になったら家を出て、冒険者になるつもりでした。戦いの中で、わが身を鍛え、いずれは領地を手に入れたいと考えておりました」

 「トム様はいずれ、領主になりたいとお考えだったのですね」アントワネット様は少し考えてから、拙者に言った。「それならば、私が少しお役に立てるかもしれません。父にトム様に土地と爵位与えるよう頼んでみます」

 「アントワネット様、よろしいのでしょうか。私は大変嬉しいのですが、アントワネット様のお立場が悪くなることはありませんでしょうか」

正直拙者は願ったりかなったりだが、アントワネット様の公爵家での立場が悪くなるようでは、大変申し訳ない。それに拙者が領主になれば、一緒についていくことになる。王都から離れれば、文化も生活水準も劣ったものとなる。そんなところに若い娘を連れて行くのは忍びない。

 「いいのです。私の悪評は貴族どころか平民の方々さえ知っていることです。どこへ行ってもこそこそと噂ばかり。都から離れて、平和に暮らしたいですわ」そう言って、さみしく微笑んだ。

 「あなたを大切にします」拙者は胸を張って言った。

 「よろしくお願いします。トム様」アントワネット様は微笑んだ。微笑んだアントワネット様の顔は、本当に花が咲いたようだった。


お読みいただきありがとうございました。もし少しでも気になりましたら星かブックマークをいただければ大変ありがたいです。

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