悪役令嬢を降りたいので不細工になります!
何の前触れもなく唐突に前世を思い出した。
13歳の昼下がりの出来事である。
前々から若干の違和感はあったのだ。
貴族って事にも何とも言えない微妙な違和感を感じていたし、侍女にお世話されるのも何となく申し訳なかったし。
それは当たり前だ。
だってそんなのが存在しない世界で生きていたんだから。
前世の私は両親共働きの兄妹の多い家庭に生まれた。
5人兄妹の丁度真ん中3番目が私。
兄2人、妹2人の丁度真ん中、立場的には長女。
普通真ん中の子ってマイペースで独特の世界観を持った頑固者みたいに言われてるし、実際他の家の真ん中っ子はそんな感じだったけど、私の場合真ん中っ子でも長女だったし、上の2人がもうどうしようもなく馬鹿だったから必然的にしっかりするしかなく、中学後半からは母親代理みたいな存在になり、ご飯を作ったり喧嘩の仲裁をしたり、下の子達の勉強を見てあげたりと結構頑張っていた。
家族の事も兄妹の事も好きだったので頑張れていたが、今思うと1人で頑張り過ぎだったんだと思う。
母親には「助かってるけど無理だけはしないでよ」と言われていたのに、自分が無理をしている自覚なんてなかったからとにかくあれこれと1人でやっていた。
掃除・洗濯・炊事。
上2人は遊んで帰って来ないし、下2人は私と6歳歳が離れていた(双子)から家事なんて頼めないと思っていて、誰にも頼ろうとしなかった。
そして疲れ過ぎた結果フラフラと赤信号で道路に飛び出してチーン。
享年16歳。
早過ぎる死だった。
家族は泣いたのかな?家の中はどうなってるだろう?双子はちゃんとご飯を食べてるかな?馬鹿兄貴達は遊び呆けるのやめたかな?
死んでしまったんだからもうどうしようもないし、今の自分としての記憶はハッキリあるから今後は今の家族を大切にして生きて行こうと思う。
が!がだ!
ここからは思い出したくなかった、出来れば間違いであって欲しいと切望すらする記憶になる。
私の名前は『キャメリア・ベリードール』といい侯爵令嬢である。
黒髪赤目のクリッと大きくも若干のつり目は家族から「猫のようだ」と例えられている。
透き通る程に白い肌に年中無休でプルプルとしてしっとりと潤んだ愛らしい唇は「不届き者に奪われてしまわないか心配だよ」と言われており、どう謙虚に言ってみても美少女である。
美少女である点については全く問題はなく、寧ろ前世が平凡だった為に嬉しい限りなのだが、私が美少女だと非常にまずいのだ、前世の記憶から考えると。
前世の私はキャメリア・ベリードールを知っていた。
世界も時代背景的にも共通点なんてあるはずもないのに知っていたのだ、ゲームで。
前世の私が友達に借りてやり込んだゲーム『あの星を君に』。
その中の登場人物の1人としてキャメリアは登場していた。
──『悪役令嬢』として。
人生終わったと思ったよね。
キャメリアは攻略対象者の1人であるこの国の王子『カミラ・タルト』の婚約者で、ヒロインの敵、所謂ラスボス的なご令嬢だった。
攻略対象者が全員王子の関係者(王子と取り巻き達)な為に誰のルートに進んでも必ずヒロインと攻略対象者の恋路を尽く邪魔しまくる。
普通に口で注意するだけなら可愛いが、心理的に、物理的に様々な方法でヒロインを追い詰め、それでも負けずにめげないヒロインに業を煮やした結果ヒロインを奴隷商人に売り付けようとする犯罪にまで手を染めてしまう。
ゲームの世界でも(勿論この世界でも)奴隷の売買は全面的に禁止されており、それがバレてしまったキャメリアは攻略対象者達によって断罪されて処刑されてしまうのだ。
私としては攻略対象者とヒロインの邪魔なんてしないし、犯罪に手を出すなんて馬鹿な事もするつもりはないが、こういうものには必ず『ゲームの強制力』なる謎の力が働いたりして何もしてなくても勝手に悪役令嬢にされてしまうなんて事が有り得なくもない。
詰んだ...と思うだろうがまだ諦めるのは早いのだ!
私、まだ王子の婚約者ではない。
王子の婚約者を決める為の茶会は来週行われる。
ゲーム内で『キャメリアに一目惚れした王子が婚約を決めた』って説明されていたのだが、今この身になった私から言わせれば「一目惚れしたくせにヒロインに落ちてんじゃねーよ!」である。
来週行われる茶会には王子の婚約者として相応しい同年代の高位貴族のご令嬢達が集められ、今の所の最有力候補は公爵令嬢のマルシア・パイン様である。
以前お見掛けした事があるが、マルシア様も私とは毛色が違うが美少女である。
じゃあその人で良くない?!と茶会をボイコットすべく頑張ってみたが、王家からの強制参加イベントだけあって参加は絶対。
婚約者にさえならなければきっと私が悪役令嬢になる未来は来ないだろう(希望的観測)。
是が非でも婚約者になる事は回避したい。
ではどうしたらいい?
答えは簡単!
王子は私に一目惚れをするらしいので、一目惚れされない不細工令嬢になれば万事OK(安直過ぎる)!
ご都合主義よろしく、この世界にはメイク道具が非常に充実している。
前世にあった化粧品はほぼ網羅されていると言っても過言ではない。
ならばそのメイク道具をフル活用して不細工メイクをすれば良くない?!一目惚れなんてされないでしょ!と考えた。
13歳になった誕生日プレゼントとしてかなり立派なメイク道具一式を貰っている為道具はバッチリである。
残す所は腕だけなのだが、前世の私は友達がメイクをしているのを見ていただけで使った事もない人間だった為に一番初めにやってみた時は悲惨な結果になった。
不細工にはなった、間違いなく。
ただ、最早「お前、ウケ狙いか?!」と思われるような酷過ぎる出来だった。
まるで小〇太夫。
「ちっくしょぉぉぉぉ!!!」って叫んだらピッタリ来るような、自分でも吹き出してしまう酷さ。
流石に不細工を目指しても小梅は目指していない。
目指すべく不細工の方向性が違い過ぎた。
「時間はまだある!頑張れ自分!」
試行錯誤の結果、やっと目指すべく不細工令嬢の顔が出来上がった時は喜びのあまり飛び跳ねてしまい、あまりのドタバタぶりに両親が部屋にやって来て、私の顔を見て母は気絶、父は胸を押さえて倒れかけた。
「そ、その顔は、何なんだ、キャメリア?!」
「茶会用のメイクですわ」
「茶会用のメイク?!まさかその顔で茶会に行くつもりなのか?!」
「ええ、この顔で参りますわ!」
「な、何故?!折角の愛らしい顔が台無しではないか?!」
「台無しだから良いのです!お父様?お父様は私を殿下の婚約者になさりたいのですか?」
「い、いや、出来れば選ばれないで欲しいと思っている。選ばれてしまうとお前は城に上がらなくてはならなくなる。会えるのは年に数回になるだろう。そんなの寂し過ぎる」
この言葉でお分かりかと思うが、うちの父(母も)は私をとっても可愛がっており、「お嫁になんか行かないでくれ」とまで言われる程に愛されている。
当然茶会の案内状という名の強制召喚礼状が届いた時どうにかして欠席する方法はないかと必死だったのは父である。
「私、自分で言うのも何ですが、とっても可愛いですわよね?きっと殿下の婚約者に選ばれてしまうと思うのです。だから選ばれない為のメイクなのですわ!」
「な、なるほど?」
「私、殿下の婚約者になんてなりたくありません。お父様やお母様、お兄様と離れて暮らすなんて悲し過ぎます!だから茶会にはこのメイクで挑みたいと思いますの。駄目ですか?」
「そうか!そうか!そういう訳ならば大賛成だ!そういう事ならばより完璧を目指そうではないか!」
私も馬鹿ならばお父様も馬鹿でした。
私のメイクに全面的な協力体制を整え、メイク技術の腕前の高い使用人に私の顔をより自然に、より不細工にすべくメイクを施し、完璧なる不細工令嬢を作り上げたのだ。
母も兄もそこにノリノリで参加してきて「その顔なら服はこれがいいのではないか?」「髪型はより野暮ったく、時代遅れな感じの方がいいわね!」とアドバイスを始める始末。
こうして家族や使用人達の手でより自然な不細工メイクを施された私は、二昔前に流行ったドレスを身にまとい、頭は盛り盛りに盛りまくった良く言えばアゲ嬢、悪く言えば立派なブロッコリーのような髪型をして茶会へと向かった。
顔はというと眉は睫毛をボリュームアップさせるマスカラでボッサボサでありながら自然(手付かずという意味で)な極太眉に変わり、肌の見えている箇所全てに浅黒く見えるファンデーションを塗りたくり透明感のある白肌を隠し、アイプチを上手い具合に逆利用して腫れぼったい一重を作り上げ、顔中にソバカスを散らし、唇は敢えて真っ赤な口紅をこれでもか!と言う程に塗り、仕上げに鼻の所に鼻糞と見紛えるような黒子を描いた。
元の原型は一切留めていないまるで別人が出来上がっていた。
*
1人1人と会話をする為に席を回っている王子を横目に見ながら気楽にお茶を飲んでいると、私の素顔を知る伯爵令嬢ミミル・クレープ様が声を掛けてきた。
「初めてお会い致しますわよね?わたくし、ミミル・クレープと申します。クレープ伯爵家の娘でございます。貴方様のお名前を伺ってもよろしいかしら?」
「ふふふ、ミミル、私よ、私、キャメリアよ」
「キャ、キャメリア?!え?!嘘よ!キャメリアはとっても可愛らしいのよ?!そんな顔ではないわ!」
「ふふふ、これね、メイクよ、メイク!どう?不細工でしょ?声で分かるでしょ?」
「本当にキャメリアなのね?!どうしてそんなメイクなんか...確かにとっても不細工だわ...それに時代遅れ過ぎて声を掛けるのも躊躇ったわよ」
「どうしても殿下の婚約者になりたくなくて、不細工に変身してみたのよ」
「...あなた、馬鹿なの?!どうしてそんな事を...殿下の婚約者になりたがる人は沢山いるのに、なりたくなくて不細工なメイクをする人なんて世界中探してもあなた以外いないと思うわ」
「そんな人がゴロゴロいたらたまったもんじゃないわよ!これなら選ばれる心配はないと思わない?」
「そ、そうね、その顔なら選ばれない可能性の方が高いと思うわ...でも勿体ないわ、折角とっても可愛い顔をしているのに」
「この顔も結構好きよ、私。愛嬌があると思わない?それに、このメイクはこの茶会用のメイクだから、普段はしないし」
そんな事を話していたら王子が背後に来ていた事に気付かなかった。
「へぇ...僕に選ばれたくないなんて言うご令嬢が存在したんだ...君、面白いね」
「で、殿下?!」
ゲームで見ていたよりもまだ幼さが残る王子が腹黒そうな笑顔で私を見ていた。
「それ、メイクでしょ?釣書と全く違うね。選ばれない為にそんなメイクをするなんて、面白いね、君」
釣書?!そんなもんが渡っていたの?!
だったらメイクの意味ないじゃない!何だったの、私の努力は?!
お父様も釣書渡したの忘れてたわけ?!迂闊過ぎるわよぉぉ!
「ねぇ?どうして僕の婚約者になりたくないの?僕、自分で言うのもなんだけど、相当な優良物件だと思うよ?」
「いや、あの、それは、ねぇ?」
「その辺の所を別室でたっぷりと聞かせてもらいたいな」
「ひぃぃぃ!ご勘弁を!」
「ダーメ、逃がさないよ」
こうして私は王子に強制的に別室へと連行され、王宮仕えのプロと言って過言ではない方々にメイクを綺麗に落とされ、新たに完璧に美しくなるメイクを施され、最新の超高級ドレスに着替えさせられ、髪もブロッコリーからプリンセスへと変貌を遂げ、王子の元へと届けられた。
「ほぅ...凄く綺麗だ...化けるもんだね、凄いな、メイクって」
「...申し訳ございません」
「普通は美しくなる為にメイクをするのに、君のメイクは...アハハハ!」
あの不細工メイクを思い出したのか腹を抱えて笑っている王子。
「で?どうしてそこまでして僕の婚約者になりたくないのかな?他に好きな相手でもいるの?
それはどんな相手なのかな?」
「いえ、そんな人はいなくて、その」
ここで「そうなんです!」と言えばよかったのに、焦り過ぎていた私は馬鹿正直に「そんな人はいない」と言ってしまっていた。
突っ込まれても「片思いだ」と通せば済む話だったのに、いないと答えてしまったので後の祭りだった。
それはそれはとんでもなく粘着質な程に根掘り葉掘り聞かれ、解放された頃にはすっかりと夜になっていて、その日は王子宮の客間(だと思いたい...決して隣が王子の部屋だなんて認めない...内扉も幻覚だ)に泊まった。
翌日、素晴らしい笑顔の王子に迎えに来られて食堂へと向かい2人で朝食を食べていると、王子がそれはそれは素晴らしすぎる笑顔で「今日はヒロインに会いに行ってみようか?」と言ってきた。
素晴らしすぎる笑顔が実に恐ろしい。
この頃のヒロインは孤児院にいる。
ヒロインであるリリスティリアは14歳の時にプディング子爵家に引き取られた元孤児である。
まだ引き取られるより前の時期である為リリスティリアは王都の端の方にある孤児院『太陽の家』で暮らしているはずだ。
「運命のように惹かれ合うというのならば今会っても当然惹かれ合うはずだよね?そうしたら子爵家なんて言わずに思い切って公爵家辺りに養子に迎えてもらって僕の婚約者に据え置けば無駄がなくていいと思わない?」
「ソウデスネ...」
有無を言わさず連れてこられた孤児院太陽の家。
「ここにリリスティリアって娘はいるかな?」
そう言うとシスターがリリスティリアらしき少女を連れて来た。
ヒロインの特性とでも言うべくピンクブロンドの髪をした少女は俯いたまま顔を上げない。
そもそもリリスティリアなんて珍しい名前のピンクブロンドの髪の女の子なんて国中探してもこの子しかいないだろうからヒロインで間違いないのだけど、何か違和感。
「顔を上げてくれるかな?」
怯えたように俯いていたリリスティリアが顔を上げたのだが、私は思わず悲鳴を上げそうになってしまった。
何故かって?
顔が全然違うからよ!
ゲームに登場していたリリスティリアはパッチリとした丸い愛らしい瞳にぷっくりとしつつも小さくて可愛らしい唇の正統派美少女だったのに、目の前にいるリリスティリアは正直美少女には程遠い。
糸のように細い一重の瞳に薄くてどう見てもぷっくりしてると言えない唇。
鼻筋は通っているけどそれだけ。
髪が長い為に女の子だと分かるけど、これで短髪だったならばその辺にいる男の子と見分けが付かないかもしれない。
「運命、ねぇ...」
何とも言えない笑みを浮かべて私にだけ聞こえるような小声で王子が呟いた。
「ごめんね、人違いだったようだ」
王子はそう言うとシスターに「これは寄付だ」と袋を渡し孤児院を後にした。
「ねぇ?ヒロインは美少女だって言ったよね?出会ってすぐに恋に落ちるとも。少なくともあの子に恋に落ちなかったし、お世辞にも美少女だとは思えなかったんだけど、どういう事かな?」
「それは私もビックリと言うか...だってリリスティリアは正統派美少女だったし...でも今は顔が全然違うって言うか...」
「ねぇ?こうは考えられない?あの子は子爵家に引き取られてから僕を籠絡するようにメイクで劇的に顔を変えて僕の前に現れる。そして愚かな僕は恋に落ちる」
「え?それって」
「あの子を引き取る予定のプディング子爵家はね、元々は侯爵家だったんだよ。だけど大きな不正が発覚して子爵に降爵した。でも返り咲く野心は未だに消えていない。そんなやつの考える事なんて少し考えれば分かるよね?」
「殿下のお相手になる事で子爵家を陞爵させたい?」
「そんな所だろうね」
あのゲームの裏側にそんな事情が隠されていたのかと思うとゾッとする。
確かに子爵家の令嬢を王子妃にする為には子爵家を陞爵させて王子妃に見合う爵位を持たせるか、リリスティリアを相応の爵位を持つ家の養子にする必要がある。
養父母とはいえ親と呼べる存在がいるのならば両親が平民でない限りは大抵が陞爵によって家の爵位を上げた上での結婚となるのが通例だ。
実力で陞爵するよりも簡単な方法だと言える。
「少なくともあの子の素顔を知っている今の僕は、あの子がどんなにメイクで劇的に可愛くなって現れても、それが素顔ではないと分かっている以上好きになる事はない。僕は結構面食いだけど作られた顔に興味なんてない。素顔の美しさって偉大だよね。それで言うと君の素顔は実に僕の好みだ。性格もまた好ましい。僕に選ばれない為に不細工になろうとする女の子なんてこの世界の何処を探しても君以外いないよ。そんな面白い子を手放すだなんて損失だ」
「いえいえ、そんな、滅相もない」
「という訳で、僕は君を逃すつもりはないから、諦めて僕の婚約者になってね?」
「...それは、決定事項、ですか?」
「そ、決定事項。まさか、逃げようなんて考えてないよね?逃げられると思う?」
「...思いません」
「うん、逃げられないし、逃がすつもりもないよ。君は諦めて僕に囚われようね?」
「............はい」
という訳で私はゲームの通り?王子の婚約者となった。
家族には号泣されたけど、ゲームのように婚約者の段階から城に住む事はなく、家から城へと通う日々。
ゲーム開始の15歳になり、ゲームの舞台となる学園へと入学したが、王子以外の攻略対象者達はリリスティリアにゲーム通りに惹かれて行ったが王子は無だった。
ヒロインに対してあそこまで無なのは正直驚いたけど「だってさ、素顔知ってるから」とあくまでも王子は王子だった。
その後すったもんだがありつつ、私が危うく悪役令嬢に仕立てあげられそうな事も起きたがそこは王子がしっかりと阻止してくれて、リリスティリアは王子を狙っていたようだったけど最後には王子の無の表情や態度に根負けしたのか王子を除いた他の攻略対象者達との逆ハールートに突入し、卒業後は逆ハーでキャッキャウフフを楽しむのかと思いきや子爵家の執事候補の青年と駆け落ちして姿を消した。
どうやら本命は執事候補の青年で、他の攻略対象者達とは子爵の指示で思わせぶりな態度を取っていただけだったようだ。
私はというと...
「リア。今日も美しいね」
「ありがとうございます、カミラ様」
「愛してるよ、僕のリア...ねぇ?今日は口付けはなし?君からの口付けが何よりの褒美なんだけど」
「いつもしているような口振りはやめてください!恥ずかしいです!」
「僕の奥さんはいつまで経っても初々しくて実に可愛い。そんな所も大好きだよ。だからね、ここにキスしてくれないかな?」
頬を指さして綺麗な顔で微笑むカミラ。
使用人達の目があるから人がいる所ではキスはしたくないのに、するまで動こうとしない。
仕方なしに頬に口付けをしようとすると顔の向きが変わり唇が重なった。
そのまま頭を抱えるように抱き締められて深いキスが始まった。
解放された時には私は腰砕けになっていて、そんな私を見てカミラは満足そうに微笑むと「そんな顔を見ちゃうとまた一日中閉じ込めて鳴かせたくなる」と囁いた。
何だかんだで私は幸せである。