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【書籍5巻3/10発売】愛さないといわれましても~元魔王の伯爵令嬢は生真面目軍人に餌付けをされて幸せになる【つぎラノランクイン】  作者: 豆田 麦
第一章

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26 まほうじゃないのにまほうみたいで

 エッグベネディクトは知ってます。お屋敷でも食べました。

 カリカリのベーコンとポーチドエッグ、薄く切ったトーストにオランデーズソース。

 とっても美味しいのです。全部どーんって順番に重なってるのもすばらしいです。


「旦那様」

「うん」

「これはお屋敷のエッグベネディクトと違います。これもエッグベネディクトですか」


 お城にきてから朝ごはんはお部屋で旦那様といただいていました。今日は侯爵夫妻もスチュアート様とステラ様も食堂で一緒にいただくことになったのです。


「ああ、うちのとは少し違うけどエッグベネディクトだぞ。俺もこっちにいるときはずっとこれだった。懐かしいな。ここの料理は見栄えもいいし君も」

玉子(エッグ)はわかります。ベネディクトはどれでしたか……」

「べねでぃくとかー……どれかな……」


 ぷるるんってしてるポーチドエッグは同じ。たっぷりとろりかかってるオランデーズソースも同じ。

 でもその下にあるのはベーコンじゃなくって、オレンジ色?赤?その中間くらいの色のお肉ですかお魚ですか。さらにその下にある、え、これどのくらいありますか、お屋敷で使ってる私のスープマグくらいの高さがあるんじゃないでしょうか。パンケーキ?パンケーキですかこれ!すごい!

 瑞々しい葉っぱも添えられてます。ちょっとだけ横にずらそうとしたら壁際にいるタバサの片眉が動きました。違います。ご立派に積んであるパンケーキを横から全部見たかっただけです。


「……すごいです旦那様こんなに大きくてごり「大丈夫だアビゲイル。高さがあるからたくさんに見えるが、ちゃんと君が食べられる量をタバサが伝えてくれてるから」はい!」


 カチャってどこかから食器が跳ねる音がしました。みなさんお行儀よいですのにって思って顔をあげてみましたが、全員おすまししてます。お上手です。タバサから習ったのでしょう。


「……アビゲイル、もう体調は大丈夫なのかね」

「はい!元気です!」


 侯爵様にきかれましたので答えましたが、なんできかれたのかはちょっとわかりません。まだごはん食べてないのに。でも旦那様が大丈夫だとおっしゃったので、これ全部食べてもきっと大丈夫です。


 オランデーズソースのかかっているてっぺんから、メイプルシロップをたっぷりかけてナイフをいれるとするするはいっていきました。手ごたえがない!するってはいった!オレンジ色のお肉のとこもパンケーキのとこも!――美味しい!

 わぁ、パンケーキふわふわです。お屋敷のはトーストなのでしっかりしてるのです。それもとっても美味しいのだけど、これも美味しい!パンケーキもお屋敷で食べましたけど、それともちょっと違います。どっちも美味しい。やっぱりお城の人だから……っ。


 ふわふわでとろとろで甘いのとしょっぱいのと……あら?オレンジ色のお肉はお肉じゃないです。これ多分お魚です。匂いも知ってます。


「……サーモン・ジャーキーと同じ匂いします!このオレンジ色のはサーモン・ジャーキーのやわらかいのですか」

「……っ……失礼」


 ステラ様がちょっとぐらっと揺れて、またおすましに戻りました。


「スモークサーモンですよ。使ってる魚は同じサーモンね」


 侯爵夫人がこほんと小さく咳払いして教えてくださいました。同じ……同じお魚のサーモン……。すごいおさかなです……。


「ジェラルド、あなたたち明日には王都へ帰ると聞いていたけれど、もう少しこちらにいるのでしょう?」

「そうですね。数日のばします。()()のことがありますから」

「まあ、そのことは食事の後にしよう。アビゲイル、魚が気に入ったのなら市場を見に行くのはどうだ?まだ行っていないだろう」

「市場にはお魚いっぱいいますか」

「海の魚が色々いるぞ。私が案内「俺が連れて行きますので、父上は()()のほうをお願いします」……おまえ……」


 海のお魚。川のお魚とは違うって習いました。海も見たことないですけど、とても大きいらしいです。ということはお魚も大きいのではないかと思います。このオレンジ色のがいっぱい。今度はオレンジ色のお肉だけ一切れ食べたらやっぱり美味しかったです。樹の匂いがうっすらするのです。

 夜会の時に食べたお花のお肉は豚だったそうです。豚は森の近くにもいましたからわかりますが、海には樹はないって聞いたのに。

 添えてある葉っぱも食べたらしゃきっとした歯ごたえで、口の中がすっきりです。タバサを見たら頷いてくれました。大丈夫です。葉っぱも好きです。お肉のほうが美味しいですけど、葉っぱも美味しいです。あ、トマトも美味しい。


「ねえ、アビゲイル様。今日は仕立て屋を呼んでいるのよ。ご一緒しない?」


 ステラ様がにっこりしてくださいました。あれ。ステラ様のエッグベネディクト、減ってない。美味しいのに。私はもう半分も食べました。まだ食べられます。


「今日は厨房を見に行くのです」


 侯爵夫人が見に行ってもいいですよって言ってくれたのです。私が厨房に行くの好きなことをご存知なようでした。厨房?とステラ様が首をかしげます。


「……女主人として屋敷の差配のうちですから。ステラもよく私についてきてましたでしょう」

「ええ、それはもちろん。そうですわね。規模も大きくて勉強になりますわ」

「厨房は毎日いきます。王都の屋敷では私の椅子も用意してくれてたのです」

「――椅子?」

「はい!厨房のはしっこに用意してくれました。料理人たちはすごいのです!魔法も使わないのに火を大きくしたり小さくしたり、お肉だって真っ黒こげにならないし、たまねぎだってあっという間にたくさん切っちゃうのです」

「……っ、そうね、すごいわ、よね」


 魔法じゃないのに魔法みたいですからずっと見てられるのです。すごい。



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― 新着の感想 ―
こんにちは! とても面白い作品ですね。 気がついたら恋愛ものの皮をかぶった 飯テロ小説ばかりブックマークしています。 このお話もとっても美味しいです♪
アビゲイルかわええ…
[一言] 旦那様はすごい、こんなに大きくて、ご立派ァ!…と
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