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エピローグ

 同窓会の日、人生の終着点について考えてみても、と言ったのは日下部だ。残念ながらいまの僕はまだ人生の終わりについて考えることを先延ばしにしている。もしかしたら死ぬその瞬間まで、何も考えないままかもしれない。


 ただすくなくとも、三十年の時を隔てた光をめぐる旅に、終着点をつくるとしたら、ここまでだろう。


 過去を辿った僕の不思議な体験は、実際の時間にすれば、微々たるものだ。その道中が楽しかったなんて、嘘でもそんなことは言えない。つらい記憶をふたたび体験してきたわけなのだから。


 でも僕はあの場所へ行って良かった、と思っている。


 どれだけ過去を後悔しようと、過去が変わることはない。そして記憶の光が僕たちの頭上を照らしてくれることもないだろう。それでも僕たちは死なない限り、一歩ずつの速度がたとえ遅くとも、一歩ずつ未来へと向かって歩んでいかなければならない。いや、そうしなければいけない、というよりは、僕はそういう人生を歩んでいきたい。


 ファミレスを出た時、僕は村瀬に一冊の本の話をした。


「実は、ずっと借りていた本があって……」


「光に?」


「うん。きょう、さ。引っ張り出してきたんだ。もう遅くなり過ぎたけど、光の両親は受け取ってくれるかな」


「私は、光のお父さんもお母さんも知ってるけど、たぶん、受け取らない、と思うな」


「やっぱり、嫌かな」


「ううん。たぶん、ありがとう、って喜ぶと思う。それで、こう言う、かな。あなたが光の分も大切にしてあげて、って。もちろん実際に行って、会って、話してみないと分からないことだけど、すくなくとも嫌がったりはしない、と思うな」


「そっか」


「今度、ふたりで行こうよ」


 未来に射す、光を求めて。


 僕たちは歩き出した。


 真っ暗だった世界にわずかな光が見えたような気がした。

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