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魔王娘の護衛に配属された!??  作者: うなぎ昇再
第6章 模合の休日
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第48話 劣悪施設

──どしゃ降りに塗れた泥を連想させるジメッとしたクッション、生活リズムの最低限も守れてなく、時間をかけて熟成された酸っぱさに鼻を摘みたくなる異臭。

 それに壁際に寄りかかったぬいぐるみ──ではなく人が数十名。どいつもこいつも目の焦点がイってる……元々こんな調子なのか?真相は定かではないがとりあえず今、自分が何処に飛ばされたのか把握したい。

 あの姉さん、じゃ、なくて…確か送り際に名乗ってたか?くろいずみだったか…?彼女に最も麗亡と親しい人物に乗り移すと言われて来たがまさかこんな劣悪な環境で暮らす住人じゃないよな!?

 鬱屈した室内の雰囲気と恐らく換気されていない空気の悪さに耐えかねて外へ出ようと出口を探してみるが全く見当たらない。

 とりあえず誰かまともに話ができる奴に事情を聞いてここから出なければ、こうしてる間にも麗亡に何かあってはたまらない。歩いている内に尿意を催してきたので建物の中央上にあるトイレに向かい、ことを済まして手洗い場で蛇口を捻る。

 身嗜みを確かめるべく姿見を見ると目の前には珍しい人外生物が立っていた、、、と思ったら俺だった。髪は海藻みたいにユラユラうねって、無数の白い粉末が付着、地肌にも吹出物のオンパレード、極めつけは体に染み着いたカビ臭くて酸っぱい臭い。くさい、くさすぎるぞ、普段世話になってる下水道の愚痴も聞こえてきそうなくらいに。



──大方、建物内を見て回ったがやはり出口は見当たらず、仕方なくワープポイントまで戻ってきた。

 日本でもわりと一般的になったアルミクラッド木製窓をくるりとさせず、本体を突き出したまま外を眺めると、ボーボーに生え散らかした雑草で辺りは埋め尽くされていた。窓から出られそうだが生憎地面までそこそこ高さがあるので、今後の機動力に支障が出るリスクも考慮してその案は取り下げた。

 建物の中を探索してみて全然収穫がないでもない、例えば他の部屋は汚れているのに調理室らしき所だけやけに生活感があって小綺麗、あとは、、、やたら子供が多くいることくらいかな。どいつもこいつも痩せ細って衰弱してるけどちゃんと息はある、どうやらギリギリラインの食事は摂っているようだ。

 でもこの連中の中に飯を準備しようとする活気を微塵も感じない、となると………


 「外部にまともな奴がいて、食事だけ作りに来てくれるのかもな…」


 「ま…ともっ…?アイツ…らが?…おま…も…とうと…う…脳が腐敗し…きたか…」


 独り言のつもりで呟くと室内の何処かから鈍い返答が返ってきた。窓側から視点を外すと、隣の閉め切った窓辺に寄りかかる同じくらいタッパのある男の子がよろけながら立っていた。


 「おまえ、普通に喋れたのか?」


 「これ…が…ふつぅ…なっ……もんか…それよ…り……おまえこ…そそっ……いきなり…どした?」


 「え?何が?」


 「ボクやっ…他の子…と同じでっ…死んだ目…してた…のにっ……」


 質問された瞬間、何を言ってるのか理解できなかったが聞き返してようやく要領を得た。憑依したこの体の主人もここの住民なわけでまともな生活を送れていなかったはずだ。生気も思考も満足に出来ない状態だった人間が目の前で突然ハキハキと話し出すのだから意表を突かれたのだろう。

 どうせ話しても信じてもらえないから憑依の件は黙っておいて、今日は調子がいい日ってことにしておこう。

 それにしても普通に喋れるとは言ったが呂律が上手く回ってないな。


 「話を戻すけどこの施設を管理する関係者はまともじゃないのか?」


 「おま…え…元気にっ…なたけ…ど、やっぱり……ボケたん…だな……仕方ね…イチから…教えてっ…あげる…」

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