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魔王娘の護衛に配属された!??  作者: うなぎ昇再
第4章 軋轢恋慕
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第23話 生存確認

──此処は…?……………!!?





瞼をゆっくり開くと見に覚えのない空間が視界に広がる。


所々がボロい天井、寝心地のいいベッド、マグカップが置かれたサイドテーブル、フローラル系の華やかな香り、どれもが非常にリアルでまったくあの世だと実感が持てない…


…の認識でいいんだよな、たぶん…


流石にまた転生ゲーな訳ないか、そうコロコロチャンスは……


胴体を稲穂のようにダランと前傾に起こすと、目を擦り現在位置の詳細を確認する。


部屋の内装は円柱型、白地の穴空き壁、そして山吹色のありふれたドア、たったそれだけの寂しい部屋だ。


寝起き早々に見飽きた部屋を眺めながらここに至ったまでの経緯を頭の中で深く反芻する。





神殿…そう、噴水があった広場で自分の属性が判明して、魔王から訓練に誘われたんだ。


そっからヤツが根城にしていた……神殿に招待されて…


魔王神殿とでも仮に呼んでおこう…


そんでそこの専属メイドが頑和と瓜二つに变化して前世で自殺した真相に繋がる問答を受けたんだっけ?


その後、彼女とあの世界で会える可能性がある事を知って、先を見据えてイメトレに励んでたってのに…


荒野でモンスターから不意打ち食らって死にそうになって、それでもイメージの一端に触れて反撃開始だと意気込んだ途端、脈絡なく魔王に殺された。




訳がわからない。




死際にアイツは世にも稀有な属性の発現を期待していた娘を意に沿わなかったからと殺したと言ってた。


そんなゴミみたいに肉親を切り捨てられるのかよ…


個人的な都合でその娘の未来を……





「また頑和が死んだのか…」





アザラシ好きの情報から魔王の娘は頑和の生まれ変わりという事実が判明している。


つまりはそういう事。





「こんなの…あまりに報われなさ過ぎる…ゔっ…」





現実世界では不器用でも生徒会長として学校の在り方を良くするために妥協しない姿勢を貫いていた。


決して社交的ではない人見知りな彼女がだ。


ある時は威圧的な不良生徒の身形を注意した事もあった。


他にもまだまだ。


そんな姿を目に焼き付けてきた、だから転生後だってきっと一生懸命期待に答えるために努力してたはずだ。





それなのに。





前世と現世で頑張る姿を重ねて途端に不憫になり、嗚咽を漏らし手でくしゃくしゃにした毛布に顔を埋めた。



悲痛な声は室内に留まらず隣部屋まで木霊して慌ただしい足音を引き寄せる。


ドアが勢いよく開くとそこに居たのはエプロンを着た金髪に竜巻の如く渦巻く角を生やした少女。


「ナベ…っじゃなかった、目覚めた?え、……ど、どうしたの?何で泣いてるの?」



「キハリ…か…これは夢なのか…」


ウルッと湿った目を袖で拭いて斜め上へ視線を合わせた。


その動作にそっぽを向けてベッドへ静かに腰を下ろすキハリ。


「夢ではないわ、思い出させたくないけどあなたは魔王に殺されかけて今生きてるの」


「どういう事だ、明らかに即死レベルの重症だったぞ、ここまで治療してくれたのか?」


すると首を横に振られた。


「傷を治したのは私じゃないわ、ジャジダ兄弟に力を借りたの」


「ジャジダ兄弟?」


「うん、彼らは『我田引水極まる者に微塵の情無し、純粋ならプラチナ』を謳う生命の救済者なの」


「そのキャッチフレーズはよくわかんないけど兄弟って事は2人以上いるんだよな」


「2人だけよ、その内の1人の弟、ブリリンオリッジに傷の回復を施してもらえた」


その救済活動に取り組む兄弟について更に掘り下げた。


彼らは何も無差別に傷を負ったり死にそうな人を救っている訳ではない。


そこには明確な基準が存在する。  


先程の謳い文句に基づいてエターソが穢れた者には死を、清らかな者には生力を与える。


究極の二択だ。


役割は弟がエターソの質を確認し傷等の回復を行い、兄が悍属性の力で死者を蘇らせるらしい。


穢れの基準は知らんけど下手したら殺された可能性もあるとするなら冷や汗ものだ。





不安に押し潰されそうな心が少し落ち着いてくるとまだ返答してない質問が返ってきた。


「で、何で泣いてたの?魔王様に裏切られたから?」


「あんなクソサイコはどうでもいい。


同族殺しも頭にきたけど何よりも……自分の娘を手にかけるとかどうかしてる…」


「あー彼女なら生きてるよー」


重苦しい口調で呟くのに反して間の抜けた棒読みが繰り出された。


でも気づかない様子で更に言葉を紡ぐ。


「言い換えれば頑和が死んだんだ……流石にひど…」


「破茶滅茶ピンピンしてるよー」


「…………………………………………え?…まじで?」


「うん!」


弾んだ声を上げると溌溂とした太陽の光で沈んだ月をギンギンに照らした。


どうやらその一件もジャジダ兄弟の仕業のようだ。


いずれこの恩は返しに行かないとな。

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