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魔王娘の護衛に配属された!??  作者: うなぎ昇再
第3章 最愛を追って
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第22話 来世行き抽選

お盆食器返却口に食器を返し、昼食を食べていた席に戻るといつの間にかコウコは居なくなっていた。


「教室戻ったのかな?」


無言で行ってしまった事を不思議に思いつつ

食堂を後にする。


廊下に出て左折、約50mの直線の道脇にはショーケースの中に飾られた賞状、メダルの数々。


どの部活もあまりパッとせずここ数十年は良くて県大会入賞らしい。


モチベーションをスマホゲームに引っ張られてないか心配だ。   





3年教室がある3階へゆったりとした足取りで登っていくと目の前に突如、熱苦しい人壁が現れた。


人と人が重なり合わない隙間から前方の様子を窺うとそこには何やらハートのシールが貼られた機器が4台規則正しく並べられている。


「何あれ、誰か倒れたの?」


「あの子ずっとあの場から動かないし、まったく意図が読めない」


「救命措置をとると言ってたぞ、マジで倒れたヤツいるんじゃね?」


機器の後方に立つ1人の女子生徒の動向にそれを囲む生徒達の不安が交錯する。


ざわめきを破ったのは彼女らしからぬ鼓膜に響く第一声だった。


「静かにしてください!これは見せ物ではありません。


今から来世行き希望の人を募集します」


突然の意味不明な呼びかけに動揺する生徒一同、だがそれとは裏腹に彼女の想いは熱を帯びていく。


「みなさんは生きていて楽しいですか?


毎日が代わり映えしなくて絶望だとか。


クラスメイトから影でイジメられていて耐えられないなど悩みは尽きないかと思います。


そこで朗報です、こちらに用意した電気刺激機でロシアンルーレットを行い1人だけ来世へ行く事が出来ます」


狂った物言いに罵倒で一帯が溢れる。


冷たい視線が四方八方から降り注がれ、興醒めした大半の者達が教室へと吸い込まれていく。


残ったのは日比を含め丁度4人。


その子達に共通して言えるのは干乾びた魚の様な目をしている点だ。


希望者全員を一瞥すると近づいて握手を交わし、柔らかな言葉遣いで労われた。


私にだけ自然体で接しられているように感じたのは気の所為?


「来てくれると思ってた」


「気は確かなの?さっきの言動でクラスの皆から見離されるわよ?」


「生きたい人は勝手に生きて最期土に帰ればいい、けどへかちは現在進行系でとっても悩んでる、だから此処に残ったんでしょ?」


「ち、ちが…」


返答を待たず数歩後ずさると手をパンっと叩き、途切れた意識を再び1つに集中させた。


「じゃあ機器を選ぶのに時間をかけるのもあれだからシンプルにジャンケンで決めましょう」


他3人は力無く引っ張られる操り人形のように動き出し、集って小さい円を形成する。


茫然と常軌を逸した光景を目にして棒立ちしたまま動けなかった。


「どうしたの?皆待ってるよ。


時間を置けば置く程、覚悟が鈍るから早くしよ?」


「待ってよ…こんな事しなくても…今は辛いけどこれから生きていればいい事があるかもしれないじゃない…」


「へかち、それ拷問だよ?


そんな抽象的に先の見えないゴールを目指せって言われても無気力にしかならない。


また彼の左隣で寄り添いたくないの?」


何度か自分の家でお泊りデート、のつもりだった私はホラー映画を見るのもゲームをしている時もナベチに常に密着してた。


それは決まっていつも左ポジション、なんでかは特に理由はないけどあの匂い温もりをまた感じたい…………





数秒感無意識で気付けば輪に加わってグーを構えている。


「じゃんけんポンっ」


結果、あいこ。


「じゃんけんポンっ」


結果、二手に別れた。


「じゃんけんポンっ」


各優劣が順番に決した。


「そしたら1番左の機器から勝った順に使用してください。


言ってなかったですが本体から電気ショックが何時でも放出されるよう改造したので電極パッドの接着面へ触れれば一瞬でトビます」


さっきの惚気との因縁なのか、1度も負けず左端の機器で試す羽目になった。


「大丈夫、恐いなら一緒に手握っててあげるから」


コウコに震える手を握られながら機器のフタを開くと自動で電源が起動する。


中を見渡すと様々なボタンと液晶画面があり、表示されてる文字を確認すると『Error』と出ていた。


用があるのはフタの内側に付いた正方形に平たい電極。


生死の狭間の選択でグラついていると片方の手で接着面に触れないように掴んで、握り合う手の上に乗せられた。


ひんやりヌルっとした感触が肌を突き抜けた瞬間、生命を脅かすレベルの地震が発生。


早急に避難しないと。


タコのように骨格に縛られず縦横無尽なダンスを繰り広げている最中、複数の機器の前で立ち止まる生徒達を心配した。


だけどなんでだろ、こんなに揺れが激しいのに微動だにせずに直立出来るなんて……


みんな体幹が異常に強いんだね、偉いえらい…


関心していたら何だか急に睡魔に襲われて意識が朦朧としてきた。


「へかち…夢…かなぇ…てね…」


とろける仏の微笑みを浮かべたコウコが指を優しく絡めて語りかけてくる。


それに負けじと私も緩んだ表情筋でにっこり涎混じりに返答する。


「ありが…とう……行っ…てくる…ね……」


今日の海は穏やかな心電図を映したようだと民宿のおじいちゃんが言っていたらしい。

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