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魔王娘の護衛に配属された!??  作者: うなぎ昇再
第3章 最愛を追って
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第17話 幸運クローバー?

──甘い香りが漂ってきそうな部屋の色彩に不釣り合いなダークブラウンの突っ張り式薄型書棚。


それだけならまだ、部屋の調和としてはギリギリでバランスが取れていたかもしれないが問題は所狭しと棚に収納されている物。


それは幼き頃から愛してやまないホラーの鬼才黒泉現黄原作のDVDや小説がビッシリと詰まっているからだ。


いちごオレを浴びせたような毛布の上でホラー小説を読みながら脚をパタパタと寛ぐ1人の女子高生の姿がそこにはあった。


ジャケット右胸にÌのロゴ入りエンブレムが付いた制服に着替え終わり只今読書に花を咲かせている。


登校まではまだまだ時間があるのでこの調子なら1冊分読了できそうだ。


「くぅ〜やっぱりクローゼットは恐怖の宝箱よね!私もその魔境へ行けないかしら!」


気分が上昇し、思わずバタつかせていた脚の威力が更に強まり下の階へ軋み音と共に響く。


すると間もなくして階段を駆け上る音、そして扉が3回ノックされ我が家お約束のクレーマーが登場。


「ちょっと2階で飛び跳ねないでって言ってるわよね!?いつになったら直してくれるの?」


そこには怪訝な表情で腕組みをする母が立ち尽くしている。


みなさん、これから何十?回目の説得に命を賭けます。


何度賭けても成果は上がってないけど。


諦めたら試合終了ってどこかの偉大な顧問が言ってたじゃない、それに倣うわ。


「ごめんてー、でもね?


これがホラーにかける私の想いなんだよ?


たぶん映画のクライマックスシーンだったらもっと凄い事になると思う!


床抜けるかも!」


「それは大変だわ、家を壊される前に諸々没収しないとね」


そう言うとスリッパでずかずかと部屋に入り、薄型書棚からそれぞれ5つずつ小説、DVDを掴み始めた。


 「嘘だってばーねえーー?いい子にするからー」


聞く耳を持たずに茶の間へ踵を返そうとしたので逃すまいと腰に腕を巻きつかせる。


「ちょっとーーっ離しなさいっ!」


「いーやーだー!かーえーしーてー!!」

 

それはまるで玩具屋でお目当ての遊具を買ってもらえず駄々をこねる子供みたいだ。


流石に重くて前進出来ないから大人しく返却する他ないとしてやったり顔で待ち焦がれていると母が振り向いた。


「やっと観念したのね!さあ早く!」


「悪かったわ、あなたへの制裁はこれだけじゃ足りなかったわね」


「うん!……うん?」


抱えていた物を床へ静かに置くと指先は一瞬で肋へ侵入。


「あひっ、ひゃひゃっひゃあっ、やめっ、やめてよっ…」


不意打ちはズルい、そんな場所卑怯だってば。


脇腹が急所の私には対処する事が難しい。


暫くこちょこちょを食らって母の思惑通り体力を奪われた。


「はあ〜学校行く前になんてことするのよ、もうーこんな時間じゃん」


「自業自得でしょ、これに懲りたら繰り返さないで頂戴」


「はぁ〜いー」


そんな生返事をし、スクバを持って玄関まで一気にひとっ飛び。


ローファーのつま先をコンコンと軽く叩いて足のハマり具合を調整する。


目の前の扉を見ていたら自然と頬が緩んできた。


「いよいよ明日かー帰ったら掃除しないとね!」


大切な私物が没収されてももうどこ吹く風、だって明日は彼が遊びに来るから。


尋奈辺コウ君、本人にはナベチって呼んでるけど。


胸の高鳴りを抱きながら我が家を後にした。


通学路はシンプルなルートで家を右手へ出て大体500m辺りでT字の分岐点がある。


そこを左折した後は道なりに約2.5キロ進めば学校へ到着。


さっき時計を見たら7時10分くらいだったから学校に着くまでは充分余裕がある。


歩けば20分前には着くはず。


まあ私のはただの歩きとは言わないんだろうけど。


以前友達と一緒に歩いてるつもりで会話していたら遥か後方に置いてけぼりにしていた事もよくあったし。


それで怒らせちゃったから反省したつもりではいたんだけどやっぱり自分のリズムで歩かないとなんだか気持ち悪くなるんだよね。


あっという間に全体が錆びたカーブミラーがあるT字路までくるとある植物が目に飛び込んできた。


クローバーだ、しかも四葉。


ただ人為的に抜かれそうになった形跡がある。


根っこがほぼほぼ丸見えだったので引っこ抜いて胸ポケットへ閉まっておく事にした。


「幸先よし」


細やかではあるが運気が上がった気がする。


TVでお馴染みの星座占いとかあんまり信じないけどこうして目の前で物理的に触れられるのであれば話は別。


途端に冷めた現実思考を失う。


蹲踞の姿勢さながらの形から腰を上げ後ろを向いて再び目的地を目指し歩み始めた。

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