第12話 ダイバーシティスキル
家政婦は鳥の動作を真似たトリッキーな動きをしながらさっきより晴れやかに喜びに浸っているようだ、何故?
表情に曇りが見えたのか彼女は今は亡きはずのクラスメイトへの再会を提案した理由を説明してくれた。
「あんた死んでココにきたんでしょ、だったら普通同じように彼女もこっちの世界へ転生したって思わない?」
それは冷静に考えるまでもなく当たり前の事だった。
こうして自分がこの異世界で生存しているのが何よりの根拠になる。
だがさっき神殿広場の中央に来るまでの間に鏡を見て容姿が別人になっている事に気づいた。
頑和の場合も同様で、前世とは異なった姿に生まれ変わってるかもしれない。
そうなると探すのは困難を極めると常識的に考えてしまう所だがそこも流石異世界。
「外見がどう変わろうと関係ないわ、生ける物には皆、エターソが必ずあるんだから」
「何それ?なんか早口で言うと塩素に聞えそうだけど」
「エンソ?エティモ都市の名物かしら?」
謎の名物の存在はともかく、家政婦少女はエターソについて軽く説明してくれた。
それは魂のような物で、例え死んでも再び新たな肉体に宿り何度でも生命を紡いでいくらしい。
個体ごとに特徴があり、生まれ変わろうと前世の人物を判別する事は可能。
転生を繰り返した者のエターソは徐々に濁り、やがて生への執着が強くなり、同族を平然と食べて生き永らえようとする醜い化物に変貌すると。
「この神殿から旅立つ時は私が同行してあげる、あなたのフィアンセを必ず探し出してみせるわ!」
「結婚するとはまだ決まってないんだが」
何故かやる気に満ち溢れている相棒候補、でも共に冒険してくれる仲間ができて正直ありがたい。
1人は寂しいし、太陽みたいに溌溂とした彼女がいればそんな閑静な旅とは無縁でいられそうだ。
何よりダイバーシティスキルという(略してダイスキ)様々な場面で役立つ魔法を持っているらしい。
エターソ探し目的のスキルもその内に含まれる。
「恋バナは終わったかの?」
探索に関わる対談をしていると魔王が広場から離れた端っこの柱に凭れ掛かりながら聞いてきた。
「してねえよ!」
(恋バナって、、、あんたが口にすると威厳が著しく損なわれるな、)
「がっはっはっ!すまんの、どれどれ話も一段落ついたようじゃし寝室を案内してやろう」
豪快な笑い声が神殿全体に木霊した。
今日は精神的に疲れた、1度死んで何もかもがリセットされるわけではないから自殺した生々しい瞬間を鮮明に覚えている。
(そういえば死んでからどれくらい経って転生されたんだろう?
まあ今は眠いしどうでもいいか。)
誘導されるがままに規則正しく階段を登る音が静寂な夜に響いた。