第11話 知られざるコミュニティ
目を閉じながら周囲を時計回りで歩くキハリ、恋に関する最初の質問はこうだ。
「私からボディタッチされたらどう思う?」
(いきなりそれは際どくないか?いやあんまり深く考えるな、いつもの悪い癖だ。きっとフレンドリー的に軽く触れる前提で話してるんだよな…)
「男だったらちょっと嬉しいんじゃないの?」
「一般男性の立場で答えないで、ちゃんと自分の意志を曝け出さないと意味がないの」
喝を込めた声で指摘されてしまったので忌憚のない意見を述べる事にした。
「そりゃあまあ嬉しいかな」
「よろし!じゃあ次、私がとある悩み事を抱えていたとする。そこであなたは真剣に相談に乗る?」
これはさっきとは比べるべくもなく即答出来る内容。
「当たり前だ、それが恋人の悩みなら尚更だ」
まだ付き合ってもいない間柄だったけど頑和を想う気持ちには嘘偽りが無いと胸を張って言える。
「よろし!ではこれで最後よ、私が屋上から飛び降りて自殺のしたのはなんでだったと思う?」
(話題がヘビー過ぎやしないか、メイドさん?
頑和に瓜二つの変身にも驚いたが彼女の過去も認知されているなんて。
これが異能って類の成せる技なのか。)
改めて実感した、未知の種族が生命活動しているこの別世界の存在を。
まだ2人にしか会っていないから知ったかぶるのは早計だけど。
「生徒会関連じゃないのか?ウチの学校不良そこそこいて治安悪かったし、必然的に矛先は罰する立場へ向くだろ」
「そーね、原因の方向性で言えば当たらずといえども遠からずかな、じゃあ犯人の見当はついてる?」
蟀谷に手を添えて自殺前にした時よりも脳をフル回転させる。
だが思えばオレは彼女の事をまったく知らない。
不器用だけど真面目な所、笑顔が小動物のように可愛いとかそんな一面だけしか。
交友関係はどうだったのだろう?
たまに休み時間チラッと女子グループを見ていたが誰ともつるんでる様子もなかった。
いや、ホントにチラッとだよ?
別に女子達の動向が気になるとかそんなの一切ないからね!
だとすると少なくとも友人関係ではないとして…
「もしかして生徒会内の人間なのか?」
周回していた足を止め、挑戦的な目線をこちらへ向けてくる。
「さあどうでしょう、生憎他人のプライバシーを晒す趣味はないのよ」
「聞いたのはそっちだろ」
「聞いたからって答えるとは一言も言った覚えはないわ」
「悪性だな」
「よく言われるわ」
教えてもらいたい所だったけどこの調子では聞き続けてもきっと無駄に終わるだろうから諦めた。
それに今更頑和の自殺原因を突き止めた所で何の意味もない。
これはただ現実逃避する自分を納得させたいだけだ。
「そんなに気になるんだったら本人に聞けばいいじゃない」
「!??」
突拍子もなく眼中に無かった可能性を提示されて思わず目を見開いた。